頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「パーフェクト・フレンド」(野崎まど)

「人生の意味は、どんなにすごい魔法を使っても知ることはできない。だからこそ、人生は素晴らしいんだ。」

この本を選んだ理由はもちろん表紙(笑)

類似作品は「惑星のさみだれ」。

これは一度も世界をループさせずに「ループもの」と同じ境地にたった主人公を描いた物語として興味深い。

ループものは、繰り返しあるいは情報過多によって、人生の一回性・固有性・絶対性が薄れていき、目の前の現実や存在が、取替え可能なものに感じてしまう感覚を表現するためのツールとして長い間活用されてきた。「人生のネタバレ」という言葉もこのあたりからの流れだと思われる。


実際の私達は、ル―プすることはできない。それでも、情報を受け取りすぎたり、いろんな人の情報を持ってしまうと、自分の選択による結末をシミュレーションしてしまうことができてしまう。いろんなことに、やる前から答えを示されてしまうため、脳内では擬似的なループを体験してしまう。そういう状態では、自分の意思で選択して、いきあたりばったりに生きるということが愚かに感じられるようになってしまう。 
情報を集め、シミュレーションをすることによって「ベストの選択肢」を選ばせようとする圧力が内外ともに高まる。それでいてベストの選択肢が自分の求めているものではない場合、それが心に反する場合、人は身動きがとれなくなってしまう。


その結果、下手をするとアノミー状態に陥ってしまう。「みんな死ぬしか無いじゃない!」というやつだ。



こんな流れをわかりやすくするために、ラノベやノベルゲームでは「ループもの」の作品が沢山書かれ、消費されてきた。

もちろん、実際は上のような話は嘘だ。


本当のループならともかく、実際は生半可なシミュレーションや、他者の情報を集めた程度では人生どころか、目の前のことさえ予測しきれるものではない。人間の感情は合理とは程遠いからだ。だから普段は、「その程度で人生なんてわかったりしないから安心しろ。変に人生わかったつもりにならないで、自分の心の望むように精一杯生きるほうが、結局幸せに行きられるよ」「実際に人と真剣に付き合ってみれば、毎日わからないことだらけで退屈なんてしないはずだ」という話に落ち着く。


しかし、圧倒的な思考力分析力・生半可ではないシミュレーションを実践できる人にとっては? 
脳内で本当に、ループに近い形でシミュレーションを行うことが出来る人にとっては?
そういう人にとって、人生や人間はわかりきったものに成ってしまうのではないか?
「ループもの」的な思考に染まってしまって、人生が色あせて感じられてしまい、全てが茶番に見えてしまい、人との付き合いに魅力を感じられなくなってしまう人も居るのではないか?



この作品はそういう状態に陥り<宇宙人>になってしまった人がいる。
そういう人に、「友達」や「人付き合い」の大切さを伝えることはできるのか?


と、こんな感じで、この話は「人の心がわからなくなってしまった<宇宙人>に、人の心を、友達の大切さを教える」話だ。

①友達とはなにか?
②なぜ友達が必要か?

この物語では、読者はこの問いに対する主人公の答えの変遷を見届けることになる。



主人公が最初に出した答えは血の通わないものだった。
その答えが、最終的にどういう形に変わっていくか、その変化を見ながら読者もこの問の答えを考えるのだ。


短いながらも

紫色のクオリア」(ループを繰り返していくうちに人を人と思えなくなっていくが、最後に大事なものを思い出す)
「Hello,World!」(論理の塊であるはずのロボットが人の感情を知り、人以上に人らしく生きる。ニトロの定番)
Ever17」(小さなことのために全力を尽くす大人たちの姿を知る)

などのエッセンスが詰まっていて読んでいてとても楽しかった。

こんなに凄い魔法使いの僕でも、あらゆる魔術に精通した大魔法使いの僕でも、魔法で友達を作ることはできない。
友達がほしければ、手を合わせて祈るしか無い。友達と逢会う「運命」を信じるしかない。友達との出逢いは、奇跡だ。
だから友達は素晴らしいんだ。

ループものの物語が好きな人に読んでもらいたいお話。
登場人物も魅力的だ、少女たちの掛け合いを見ているだけでニヤニヤしてしまう。


ちなみにこの作品は、単体でも十分楽しかったが、登場人物が共通するシリーズ物の1つらしい。
面白かったので、他のシリーズ作品も読んでみたいと思う。


(※この記事は旧ブログからの転載です。)