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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「健康で文化的な最低限度の生活」柏木ハルコ

自分は何も知らない。何もわかってない。
人生のリアリティといったものが多分まだ何もない。
自分の中に「確かなもの」を持ちたい。

福祉保健部生活課(福祉現業)に新入社員で配属され
生活保護ケースワーカーの仕事をしている女性が主人公の話。

日本国憲法第25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び
  公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

生活保護は、憲法25条の理念に基づき
国が生活に困窮する全ての国民に対しその困窮の程度に応じ必要な保護を行い
その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする

彼女の仕事内容は

・対象者に生活保護費を渡し
・定期的に訪問して様子を見
・必要に応じて適切な援助をし、自立の手助けをする

などであるが、実際の所は非常に精神的に消耗する仕事である。

しかも主人公は、全体的にコミュニケーションが苦手である。

福祉を志したのではなく、何の経験もないところからいきなり配属されたので、モチベーションも低い。

・知識もない。経験もない。

福祉の勉強なんて全くやっていない。ろくな研修も受けていない。

・「自分は空気がよめない…人の話を全然聞いてない。どこかネジが一本抜けた人間ななのだ」

・自分に自信が無いため物怖じしがちで説明も下手。その不安さや落ち着かなさが表に出ているためいつも人を苛つかせてしまう。

・いつまでも仕事に慣れることができない。「客」を好きになることが出来ない。むしろ常に客と向き合うことに怯えている。

・「もともと第一印象で人から好かれるタイプの人間じゃない。素直さが丁寧さが必要って言われても、実際は雑ってよく言われてる…。せめて、勉強…しないとな…」

・空気が読めないかわりに、人と関わって気になったことは延々と悩み続けて消耗してしまう




こんな感じでもともと人と渡り合うのが上手でない主人公は、
自分で相手をリードしていけるわけではないから、
とにかく「ひとくせもふたくせももある生活保護受給申請者」に翻弄されまくる。
それを通じて、読者である私は、生活保護課での仕事の実情や保護申請者の実情を見ていくことになる。



「困っている人を助ける」という話だと弁護士もののマンガなどは多く「家栽の人」や「弁護士のくず」などがすごい面白い。他にも介護分野における「ヘルプマン」や労働基準監査官が主人公の「ダンダリン」など他にもいろんな作品あるけれど、こういった人たちは、主人公の主体的な行動でなんとか厳しい現実や理不尽な状況を変えていっている。

一方この作品は、なによりも主人公が生活保護者たちに翻弄されていて、為す術もない、という感じで描かれている。でも実際、ほんとに「どうしようもない」現実にみんなが消耗していき、最低限の生活や思いやりすらないような実情があるのだろうなと思う。

・本当の現場は、(CW自身が)「なんて非建設的な仕事なんだ」とか、「早く異動したい」と思っていたり、「(受給者の人は)さっさと死ねばいいのに」という雰囲気が優勢なのです。

生活保護を巡る視点というのは、受給者を視点に受給者をバッシングするか、行政をバッシングするといったものが多く、どちらのスタンスでも現場のケースワーカーは心をすり減らされるため、いつも「キツいなぁ」と思っていた

あまり主人公のマンパワーやご都合主義に頼らないでどこまで現場に踏み込んで描かれていくのか楽しみです。