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実際に通勤手当を廃止するとどうなるの? 都市問題として考えた時の通勤手当について

通勤手当なんて廃止すべき(Chikirin) - 注目の記事
やたら煽りまくりな上、扱うべき問題に対してやたらとカバーしてる範囲が狭いので、記事としてはアカンやつに思えるのですが、問題提起自体はとても面白いと思います。twitterでの反応を見てみましたが、ほんとバラバラです。意見だけでなくて、どういった部分に反応するかからすでに皆違う。

通勤手当なんて廃止しよう!についての反応 - Togetterまとめ


そんな中、「実際に通勤手当を廃止してみたらその後どうなるか」というシミュレーションをされている人がいて、その話が興味深かったので紹介。私は都市問題とか考えたこともなくて全く知識がないのですが、本来は最低限この辺りを踏まえて議論すべきことなんでしょうね。

せめて「ストロー効果」「スプロール現象」「ジェボンズパラドックス」くらいは踏まえてないとまともに話すら出来ないと思います。
後は、他の国の制度がどうなっているのかとか、有望な事例なんかがわかるとなお良いですよね。


それだとハードルがめちゃくちゃ高くなってしまうわけですが、そういう中で「こうしたいよね」「こうなったらもっといいと思わない?」って意見を発する事自体は価値があるような気がします。


まず通勤定期券の割引率が大きいことが鉄道の過密のいち要因じゃね?という問題の指摘

未発育都市 (@mihatsuikutoshi) | Twitter

まぁ、通勤ラッシュの原因の一つとして定期券の割引率が大きいことが挙げられる。普通に考えれば、混雑時は料金を上げて乗客の分散を図ればいいのに、実際はそれが逆になっている。梅原淳著『鉄道の未来学』によると、「運賃・料金とは利用客の多いピーク時に高くなり、閑散時には安くなるものなのに、鉄道はラッシュ時の運賃が最も安くなる」とのことです。これは鉄道以外ではたぶんあり得ない
2011-09-19 - 未発育都市

実際に通勤手当を廃止したら、ちきりんさんが言ってた「都心部のマンハッタン化」ではなく、その逆方向「衛星都市の超絶成長」が起きる?

①Chikirinさんは通勤手当がなくなれば、都心部に居住する人が増えるので、東京の都心部はマンハッタンになるんじゃねと書かれているけど、もしそうなった場合、実際はその逆になるだろう。つまり、通勤手当がなくなるようなことがあるならば、都心部から出て行く企業が増える(大企業であればオフィスを分散配置する)、即ち、立川や大宮などの都心部周辺のいわゆる衛星都市が超絶成長することになるだろう。というのも、大都市の都心集中が起きているのは鉄道の「輸送コストが安い」からであって、それが高くなったら逆のことが起きると考えるのが自然である。

エドワード・グレイザーの本でも、輸送コストが安くなると近接性が増す(都心集中が起きる)と書かれている。これを「ジェボンズの相補性原理」と呼ぶ。  
Amazon.co.jp: 都市は人類最高の発明である: エドワード・グレイザー, 山形 浩生: 本
ジェボンズのパラドックス - Wikipedia

通勤手当は日本の「都市化」の流れの帰結であり、それを廃止すると、歴史を逆回しすることになってしまうのだろうか?

②ちなみに、現在の日本全国の鉄道や高速の料金が一斉に値上げしたらどうなるかと言えば、良し悪しは別にして、東京一極集中は緩和され、日本の中心が関東から関西へ移動するだろう。理由は、まぁ、要するに、それは交通インフラ整備の歴史を逆回しにすることと同じだからである。昔の日本に戻るのだ。もちろん、そんなことしたら日本の経済力はガタ落ちするだろう。

かといって、現状の「通勤手当」による長時間移動、過密状態が最適であるとは思えないし、
さらに都心部に人口集中してもいろいろと問題が起きそうだ…。



鉄道だけでなく、高速道路を無料化したらどうなるだろうか? →こちらはちきりんさんが狙ったとおりになりそうですが、これはこれで渋滞がひどそうだな…

③ついでに、昨日、民主党が掲げた「高速道路無料化」への批判をちょろっと呟いたけど、もしこれが実施されていたらどうなるかと言えば、東京一極集中は加速する、地方であれば中核都市への集中が加速する、更に近頃は高速IC付近にイオンモールなどの大型SCが乱立しているけど、そこが超絶成長する。あと、「パサール」や「ネオパーサ」等の高速道路のサービスエリアに建つ商業施設も超絶発展する。反対にダメージを受けるのは、国道や県道沿いに建つ商業施設である。というか、それは民主党政権時代に行った「高速道路の無料化社会実験」でちゃんとそういう結果が出ている。
道路:高速道路の無料化社会実験 - 国土交通省

ただ、「高速道路の無料化社会実験」で意外だったのは、高速道路を無料化しても、鉄道や駅前はダメージを受けなかったこと。おそらく鉄道利用者と自動車利用者は既にきれいに分断されているからではないかと思われる。いずれにせよ、民主党が掲げた「高速道路無料化」を実施していれば、「コンパクトシティ」化は一気に加速していたとは言える。(ただし、地方都市の中心市街地は、駅前ではなく高速IC付近になるけどな)

というわけで、「高速道路無料化」にせよ、「通勤手当や通勤定期乗車券」にせよ、輸送コストが都市に与える影響は甚大なのである。分かりやすく言えば、輸送コストを下げることは、移動の摩擦が減少するという意味で、ストロー現象と同じである。
ストロー効果 - Wikipedia

なぜ日本の都心部はマンハッタンのようにはなれないのだろう?

ちきりんさんは、とにかくまだまだ東京は都市化できると考えてます。もっと人口が都心に集中して、高層ビルが立ち並び、24時間明かりが消えないマンハッタンを目指すべきだというのが彼女の主張。

地方都市についても、コンパクトシティ化すればもっと生活の質が上がるという記事を繰り返し書かれています。彼女が「効率厨」「効率オンリーしか考えてない」と言われるのはこのあたりの立場がわかりやすいからでしょう。
夜へ! そして 空へ! - Chikirinの日記
この前提を踏まえていると、今回の彼女の「通勤手当は廃止すべき!」もその文脈から発せられていることがわかりますね。ある意味、素朴に「日本の良さを生かしつつ、アメリカみたいになってほしい」くらいの考えなのかもしれません。


ということで、ちきりんさんが採用されているのは、エドワード・グレーザーという人の都市論に近いのだと思います。

エドワード・グレーザーの都市論
①「政府のなすべきことは、都市への人口流入を防ぐことではなく、社会的インフラを整備し、衛生環境を向上させること」
②「人口流入を各種制度で幾ら制限しても人は都市に集まってきますし、そうした人々にチャンスを与えず、社会的インフラの不足を解決しない方が間違っている」
③「人口流入や新たな住宅建設・インフラ整備を妨げるような規制はなくして、都市の空間を三次元的に使い切るべき」


ところが、この都市論、必ずしも万能かというとそういうわけではなく、


①能率を求めるのは良いが、その結果画一化・単純化すると都市は停滞する
未来の巨大都市に住む人々の暮らしはどうなっているのか - 未発育都市

能率的専門化というマンチェスターの特色は、停滞と都市の根深い荒廃を告げるものだった(→動画*10)。というのは、「無限の広がり」の中身は、他の土地の人々が、能率の良い、綿の紡ぎ方と織り方を習得するにつれて、失う市場もまた大きい、ということが明らかになったからである。その失われた市場を償うのに必要なものを、マンチェスターは何も開発しなかった。今日のマンチェスターは、長期的な回復不能の沈滞に悩んでいる都市の象徴とさえなっている。
(中略)
バーミンガムでは、分裂して非能率な、規模の小さい産業が、新しい仕事を追加し続け、さらに分裂して新しい組織を設立し続けた。そのいくつかは、非常に大規模に成長しているが、全体の雇用と生産の中で、数多い小規模産業の占める比重が、いまだに高い。
(中略)
今日の都市計画の立案者や設計者たちが描き、科学小説やユートピア的な提案を読む人たちが考えているような、官僚化され、単純化された都市は、都市の成長とその経済的な発展の過程に逆行するものだ。それは、はかない虚構として描かれたとしても、画一性とか単調さは、発展を続け経済的にも活力にあふれた都市の帰結ではない。それらは、沈滞し切った経済がもたらす帰結だ。

さらに、能率中心で考えると、どうも都市は停滞するようです。あくまで都市が発展を続けるのは、常にその中で分裂、革新が行われる必要があります。


②過密化が許容範囲をこえて進み過ぎるると、革新が行われるに相応しくない環境になってしまう
リチャード・フロリダ「都市の高密度化の限界」を翻訳してみた - 未発育都市 

一般に、より密度の高い都市は、より生産的で、より革新的で、よりエネルギー効率も良いです。でも、ある限度内においてです。都市の重要な機能は、人々とアイデアの交換と相互作用(インタラクション)と結合と再結合(組み換え)を可能にする事です。建築物が「街路の生活」(ストリートライフ)が見えなくなるほど大きくなると、この種の相互作用(インタラクション)は鈍らせられて制限されて、一般的に「スプロール現象」と結びつけて考えられているのと同じ孤立を生み出します

その後もいろいろ書いてありますが難しくてよくわかりません。「都市化」のメリットは、きちんと計画的に都市化を進めていかないと、デメリットのほうが大きくなるのかな、くらいに理解しました。

そして、日本の都心=東京や大阪を見ていると、例えば鉄道などをみればわかるようにグチャグチャであることは議論の余地がないと思います。結果として、すでにメリットが増大する限界を越えて、デメリットのほうが大きくなってくる危険があるのかもしれません。あと、当然ですけど過密化による土地や家賃の高騰についてこれるだけの金持ちがマンハッタンみたいに多いのかも気になりますね。



ちきりんさんの楽観的都市化を達成するためには、このあたりの問題を乗り越えなくてはいけないようです。



実際の所、マンハッタンはともかくとして日本においてはすでに「逆都市化」が起きており、
それと「再都市化」がせめぎ合ってるような感じなんだとか。うーん、難しい。

東京や大阪の都市の人口推移については、イメージと違ってて面白かったですね。
超絶発展する立川市――「逆都市化」する東京 - 未発育都市
「逆都市化」する東京 - 未来の門を血にさびた鍵で開けようとするな、マスターキーで開けよう
コンパクトシティの正しい答え――中心市街地の再生は諦めて、住宅地にする - 未発育都市 

東京でも大阪でも「逆都市化」が起きているのであって、下図を見れば分かるように、大阪府の周辺の兵庫県滋賀県奈良県和歌山県が、企業の転入超過数のベスト10に入っています。ついでに、都市が県境を越えて「大都市圏」を形成している東京や大阪で、都道府県毎のデータを比較する意味はほとんどないとも思います。時代は都道府県単位から大都市圏単位の「広域連合」(または道州レベルの自治体)へシフトしている

(中略)

一方、東京区部(23区)の人口は増えています。これを「再都市化」と言います。つまり、現在、東京圏では「逆都市化」と「再都市化」の現象が重なって起きているのです。ま、大ざっぱに言えば、かつての都心が郊外へ移って、かつての郊外が都心へ移っている*5、という現象です。都市構造が裏返る(反転する)というダイナミックな現象が今起きている


というわけで、ちきりんさんがおっしゃるほど単純な話ではないのはわかったところで、
このあたりを踏まえて、「通勤手当」、どうしたら良いと思いますか?



スマートシティーや、交通手段の刷新(自動運転車)など、いろんな可能性はある!

さっきの通勤ラッシュに関して、シンガポールのUrban Enginesがあったな。「オフピーク時間帯に通勤すると報償を与え、交通渋滞を緩和する」

時代は「スマートシティ」かもな。個人的には「自動運転車」推しですけどね。交通手段(乗り物)が変われば、都市は大きく変わる。ビッグウェーブは近い!
「自動運転車」が実用化されたら、都市は一気に変わる - Togetterまとめ

https://twitter.com/mihatsuikutoshi/status/554095434340106241

今はまだ不可能かもしれませんが、ちきりんさんが言うように、それでも
「こうなったらいいのに」という考えは常に持っていたほうが良いですね。