この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです。 ※記事を読まずにはてなスターを押して回る行為はお断りしております。

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Under the Rose 8巻

ひきつづきUnder the Roseの話。

8巻まで読み終わった後、いろいろと気になって最初から2周してしまいました。

すごく面白かったです。

すでにご存知かもしれませんが(私が知ってることは何でもご存知なのではないか、というイメージが有る)うみねこが大好きな方としてvalericoさんに読んでみてもらって感想聞いてみたいなと思いました。まる。


8巻においては、この作品の舞台であるロウランド家の当主であり、
笑顔に隠された内心がわかりにくかったアーサー・ロウランドについて、
ついに彼の過去および、本心が明かされれます。


今までの展開では、アーサーは誰に対しても優しく誠実で、
自分を傷つける(銃で腹を撃った人間ですら許す)人間ですら笑顔で受け入れるーー。
そんな聖人のような振る舞いに振るまい、親族の誰からも愛され、
実業家としても医師としても、館の主人としても慕われている。
ウランド家の繁栄はアーサー・ロウランドという超人によって成り立ってきた。

しかし、時折見せる暗く虚ろな表情が読者であるこちらを不安にさせていました。
2巻以降の「レイチェル・ブレナン」視点ではあまり隙を見せないので忘れがちでしたが
1巻の「ライナス・キング」視点で見た時のアーサーは、陰鬱な雰囲気を持っていた。



一体、アーサー・ロウランドは内心では何を考えているのか。
この歪んだロウランド家をどういう意図を持って支えているのか。
それが今までよくわからなかったのだけれど、
ついにアーサーは「マーガレット・スタンリー」に対して素顔をさらけ出します。


そこで見えたアーサーは(詳細はネタバレなので省略しますが)
思った以上に情が深く、思った以上に嫉妬深く、思った以上に心もろく、
それでも、家族を愛している一人の人間でした。



Fake it till you make it!

今の彼は「観客」を手に入れ、「観客が望む自分」を演じることで作られてきた。

「願わくば子どもたちの目には、スタンリーくんが見るような光りあふれる家が映って欲しい。
 たとえそれが虚像でも。虚像でも構わない。
 スタンリーくんが信じ憧れたロウランド伯爵家を虚像の上に創りあげてみせよう。
 舞台の上ならアンナに何を言われても傷つかない」

ウランドは、観客を手に入れた

「役者なら揃っている 劇場ならここにある 人生は舞台だ」
「意味はあった。役割を演じる内に、ウソから得た経験は私自身を変えていった
「もしアンナにも変化する余裕が有るのなら、アンナにもひだまりのような穏やかな幸せを見つけて欲しい。
それまではこの劇場がアンナを守るだろう」

ウランドは、俳優として理想的な人物を演じ、
また、演出家として理想的なロウランド伯爵家をつくりあげようとした。
そして、その結果として、実際にいくつかの変化が彼にもたらされた。
自分の作りあげたフィクションが、自分も、そしてその周りも変えていった。


そういう過程を知った上で
1巻からのロウランド家、特にアーサー・ロウランドを見返すと、
それでもどこまでがウソで、どこからが真実なのかよくわからなくなってくる。
たとえ最初はウソでも、それゆえにいびつさを抱えていても、
それなりに上手く回っていたような気はする。

もしかしたら、このままゆっくり変化し続けていたら、
それなりにうまくいくこともあったのかもしれない。
観客を巻き込みつつ、良い劇だったね、という形で幕引きが出来たかもしれない。


うみねこ? リトルバスターズ

しかし「観客」ではなく「部外者」が入り込んでくると話は別だ。
部外者は劇の内情などお構いなしだ。
「こんな劇はおかしい、気に入らない」といってせっかく整えた舞台を壊して回る。
幻想がぶち殺されていく。 魔法がとけていく。

一人目のライナス・キングの時は、演者のひとりとして取り込むことが出来た。

しかし「おせっかいのレイチェル・ブレナン」は劇に協力はしてくれなかった。
強い信念をもった彼女は、「ロウランド家の一員」になることなく己の意思で動きまわり、
その動きがロウランド家を揺さぶり、
そして今のロウランド家を維持するために明かされてはいけない真実を暴いてしまう。

いびつながらも穏やかで暖かかった幻想のロウランド家は破壊され、
9巻以降は各自が館の中で過酷な現実と向き合っていくことになる。


それでも、ロウランド家のみんなは、
今まで幻想の中とはいえいろいろな経験をして成長し、変わってきた。
その経験を持って、ここからやってくる過酷を、力を合わせて乗り越えていけるだろうか。
具体的に言うと、「Honey Rose」で一度確定してしまっている悲劇的結末をどう変えていけるのか。
それとも、運命は変えられないのか。
このあたりを考えながら今後の展開を待つのがとても楽しみ。




余談。
この作品はイギリスの貴族社会が舞台。時代がわかる記述が少ないが、「エマ」の時代より少し前かな。
1巻でシェイクスピア冬物語を、外伝でもヘンリー4世を引用したりしてて、極めて演劇的。
聖書に描かれる神の求める愛の姿が強く意識されつつも、
それに反してでも人間としての家族や愛を求める人達を描こうとしてる感じなのかな。