頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのだろうか」2巻

アダルトチルドレンというかメンヘラというか、
そんなつらい目にあってる女の子を、主人公が頑張って助けるぞってお話。


元ergプレイヤーとして、すごく懐かしい香りがしますね。
なんかもう、とにかく、面白い面白くないとか置いといて、「私はこういうの好きだった」といいたい。

もうほんとにこういうの何回、何十回と繰り返して読んできた話で、自分としてはもうほんとにベッタベタに手垢ついちゃってて目新しさとか微塵も感じないんだけれど、これ多分自分が高校生の頃読んでたら多分泣いてたかも。今は、別の意味で懐かしくて涙が出そうです。



こういう作品ばかり求めてた時期があったな、と。安易といわれようがご都合主義といわれようが自分に通じるような境遇や心情のキャラが、その心情を吐露してくれたり、その上で救われたりする物語を求めずにはいられなかった時期があったなぁ、と。
(それと同じくらい、救われない鬱な展開の話もほしがってた気がするけど)


今でも、最近読んだ西加奈子の作品とかやっぱりぐっとくるものが有りましたし。本質的には私全然成長してないかもですね。







このリリって子、自分が健康な時だったらなんとも思わないんだろうけど、
今この子を見て結構グッときてしまってる自分は結構心が弱ってると思う。

アダルトチルドレン

リリは生を授かった時点で狂った「ソーマファミリア」の末端に加わることを義務付けられていた。だから、リリはリリでいた時点で既に歯車が狂っていたのかもしれない。世界はリリにちっともやさしくなかった。神酒にとりつかれた両親は、年端もいかないリリに金を稼いでくるように再三申し付けていた。親らしいことは何もせず、気づいたらなくなっていた。神酒を求めるあまり、力量と吊り合わないダンジョンの階層へ潜ってあっさりとモンスターに殺されたそうだ。

腐った環境では、適応できない人間は一方的に理不尽な目に遭う

神酒を奪い合うファミリアの中で、リリは当然のように孤立死、独りぼっちになった。ファミリアの仲間は小さなリリを気にもとめなかった。苦しい毎日が続いた。ある日派閥の拡張の際に配られた神酒を飲んでしまったことで、リリもその魔力に取り憑かれてしまった。頼れる仲間はいない。独力で(神酒を得るための)金をかせごうと躍起になった。けれどムダだった。リリには冒険者の才能がなく、サポーターへの転換を余儀なくされた。そしてリリは搾取された。

ブラック企業でも、一部の人間は得をするから成り立っているんですよね。むしろブラック企業の方がはるかに活き活きする人もいるでしょう。「そこでもちゃんと生活できている人がいる」というのは全くナンセンスな意見だと思います。



腐った環境から逃げようと思っても逃げられない。自分を変えるという希望も持てない

神酒の魔力が尽きた後、一度涙を滂沱と流しながらファミリアから逃げ出したことがある。ファミリアの肩書を捨て、一般人になりすましなんとか仕事にありつきようやく平穏を手にしたのもつかの間。どこから聞きつけたのか、冒険者達はリリのもとへ押しかけ金を奪っていったのだ。彼女の居場所も徹底的に打ち壊していって。

鎖に繋がれたゾウは逃げられないというが、実際に逃げたとして、その後本当に生きられるかというと、逃げないゾウを愚かというのも酷な話かもしれないですね。文句あるなら自分を変えろ、って言葉があるけれど、そういう希望ごと潰されちゃってる人もいるんだと思う。



無力すぎて親とか神を恨むくらいしかできない

リリは主神であるソーマを恨んでいる。なぜこんなファミリアを作り上げたのかと。
ソーマに悪意は無い。害意もない。そもそもリリたちには興味すら無い。無関心。
ソーマは何もしてこないししてくれない。ファミリアの状態が今どうなっているのかを把握しているかも不明だ。
ひょっとしたらソーマを恨むのはお門違いかもしれない。偉大なるソーマの視点からすれば
子どもたちがいっそ憐れむほどに愚かなだけなのかもしれない。
しかしリリは、己の主神を恨めしく思うのを止められなかった。
結局、リリに残された道は、「ソーマ・ファミリア」所属のサポーターとして生きていくことしかなかった。

ネットで日々無差別に呪詛をまき散らしている人いますけど、
特定の何かを解決すれば自分の状況がよくなる、と思えなければ、自分もそうするしか無くなっちゃう気がする。


たとえいい人がいても、その人を信じる勇気を持てなくなってしまったら完全に詰み

冒険者なんてみんな同じだ。自分より弱いリリにひどいことをする。あの優しい少年だってきっと。いつか掌を返すに決まっている。そうに違いない。裏切られる前に裏切って何が悪いというのだ。どうせ最後には捨てられる。見捨てられる。

自尊心が低くなりすぎると、責任回避や他者攻撃に抵抗がなくなってしまう

モンスターと遭遇したとしてもリリは他の冒険者になすりつけるすべに長けている。むしろそのような技術ばかり鍛え続けてきた。悪どくて、姑息で、そして一人では何も出来ない、リリの精一杯な手口だった。
リリがこうして冒険者たちを襲うようになった理由は、ひとえに復讐、意趣返しだ。散々自分を苛み苦しめてきた彼らから、今まで奪われたものを取り返すと決めたのだ。リリはその好意を正当な権利だと信じて疑っていない。冒険者はみな冒険者なのだ、悪い人間なのだと、コレまでもこれからも頑なに主張する。

他者への呪いが自分に跳ね返ってくると自己嫌悪、自己否定を経て希死念慮、リセット願望に陥る

専門職のサポーター、蔑視の対象。欠損しても冒険者は痛くも痒くも思わないただの荷物持ち。役立たず。一人では何もできないリリの天職。まさにリリそのものだ。

愚図な自分、リリは、リリのことが一番嫌いだった。
「神様、どうして……」
リリは誰かに呼ばれたかった。リリは誰かに頼られたかった。利用されるのではなく、必要とされたかった。

弱い自分は嫌いだった。他人の手で人生を左右される自分のことが大嫌いだった。リリは、リリではない誰かになりたかった。
「どうして、リリを、こんなリリにしたのですか……?」
リリは、今の自分ではない、もっとマシな、別のリリになることを求めていたのだ。

やっと死ねる。やっと終わる。
ようやく、ようやくリセットだ。
何も出来ない自分を止められる。弱い自分を終わらせることができる。
誰も助けてくれないちっぽけな自分を、なんの価値もない自分を、寂しい自分を。やっと、リセットすることができる。
……やっと、一緒にいてくれる誰かを見つけられそうだったのに。

きっかけはなんであれ、自分の気持ちに向き合うことができればワンチャンあるかも

「……寂しかったなぁ」
ぽろりと口から転がりでた言葉に、リリは驚いた。
最期の最期でこぼれた胸の中の本音。
そうか、自分は寂しかったのか。

誰からも必要とされないことにはもう慣れていた。慣れてはいたが、寂しさが消えることはなかったのだ。
寂しい。誰も頼れず誰からも頼られないことが、寂しかった。一人でいることは慣れてしまったけど、寂しかった。
「そうですか、リリは……」
誰かと一緒に居たかったのだ。ようやく認めることの出来た胸の内の気持ちに、リリは自嘲した。

呼んで欲しかった。言って欲しかった。認めて欲しかった。リリが大っ嫌いなリリのことを、受け入れて欲しかった。