この夜が明けるまであと百万の祈り

私が元気づけられた出来事や作品についてのメモ。最近TED聴き始めました

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「夢かもしんない」 僕だけにみえるアイドルの少女

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ハッピーですか?

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星里もちるさんは自分が好きな漫画家さんベスト10に入る人なのでほとんどの作品を読んでてどれも好きですが、今日は昨日の「人間でした」つながりでこの作品。

 
「人間でした」が高校生の初々しさでつっきった作品なら、こちらは社会人の生きる現実の世知辛さをベースにしているので色々と制約が多いのですが、そこにちょっとした奇跡が起こるところが好きです。
ほんわかした絵柄なのに少し切ない結末がくせになります。
 
 
また、これは本題ではないですが、アイドルってなんだろうというとき、わたしにとってはこの作品の女の子こそがアイドルとしての究極の形の一つだとおもってます。
 
 
 
 
 
*バブル崩壊後のサラリーマン
主人公は中小規模のシステム販社の営業マンの部門リーダー。
 
上長の理不尽な態度に耐えながらもバリバリに働き、部下からの信頼は厚く、美人の妻と可愛い娘がいる。
 
ただ、最近なんだか家庭がうまく行かなくなり妻との喧嘩が増える。仕事も成果はでているものの満足のいく手応えが得られない。いろいろと不完全燃焼で自分を持て余し、またなにをやっても報われない気がして閉塞感を感じている。
 
 
そんなとき、若い学生の頃自分が心底入れ込んでいたアイドルの幽霊がやってきて、こういいます。
「わたしが、あなたをハッピーにしてあげる」
 
 
 
このことをきっかけにして、いままでモヤモヤしながらも平穏を保っていた生活は嵐に巻き込まれることになる。
 
*「モテキ
突然妻が仕事を始めたいと言い出し、そのことで揉めて別居することになったりする。
 
実は自分をしたっていた部下の娘が自分にアプローチをしかけてきて浮気したりする。
 
大学のときの友人でベンチャー企業の社長になったやつからスカウトされたりする。
 
 
他にもいろんな角度から主人公に「いままでの人生を捨てて新しい道に踏みこめ」といわんばかりのイベントが主人公に降りかかる。
 
 
この作品の場合、主人公を通して、バブル期あたりの固定観念を揺さぶってます。この揺さぶりこそが星里作品の特徴。
 
 
「普通」に生きてきて、そのなかでモヤモヤを抱えた主人公の内圧が高まったときに、とあるきっかけを元にしていろんな変化が巻き起こされる。そのきっかけとなるのが、先ほど言った幽霊の女の子なのです。
 
 
*アイドルという存在の重要性
さて、ではなぜこの女の子がそんなに重要なのか。それはこの子が主人公にとって夢や希望を持つことそのものだったから。
 
 
子供の頃冴えない存在だった主人公は、当時アイドルだったこの少女に夢を託していた。この世にはキラキラしたものがあるという希望を感じていた。にもかかわらず、この女の子はある日あっさりと死んでしまう。それがあまりに悲しかったから、夢や希望を持つこと自体を諦めてしまったんですね。ついでにその少女のことも忘れるようにしていた。
 
サウザーかお前はといいたくなりますが、そのくらい主人公は少女のことが好きだったわけです。
 
そんな主人公の若い頃の未練の象徴であり、また、どんなに強くおもっても夢なんて叶わないと思うきっかけになった少女が、自分のために幽霊となってやってくる。そりゃ心乱されますよね。
 
 
そんな自分にしか見えない「彼女」との再会?をきっかけにして、主人公はいっとき子供の頃に戻ったように普段ならやらないことをやらかしたりしながら、若い頃に閉じてしまったはずの自分の心を開いていきます。
 
 
しかし、こころが若返ったからといって、いままで積み重ねてきたものまでが元に戻るわけじゃない。大人としての責任と、子供の頃にもどって彼女とともに楽しく思うままの人生をいきたいという気持ちに主人公は引き裂かれていきます。
 
 
そんな彼をみて、彼女はある決断をします。この決断が何重もの意味で切ないです。
 
*夢が終わった後に残るもの
この作品は、物語の中でいろんなドタバタがありますが、実は最初と最後でそれほど大きく物事が変わっていません。大体元にもどっています。
 
それこそ、主人公が見た彼女のことは「夢かもしんない」と思うほどに。
 
でも、その「夢かもかんない」出来事のの中で、主人公の内面は少し変化しています。こころのモヤモヤは少し軽くなっています。その代わり、少し切なさを感じたり、今自分の周りにいるものを少し大事に感じられるようになっています。

*1:とはいえ、星里さんの作品、他の作品だと大体「最初からどこかイレギュラー」な存在を描くことが多いのですが、この作品は主人公は当時の普通で、それにイレギュラーが襲いかかる形式になってますよね