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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「惑星のさみだれ」  一人の女の子のためのヒーローになる生き方

あんなすごい物語があったのに
それが終わったのに。
ぼくらの人生は10年経った今でも相変わらず続いている。
共にいのちを預け合った仲間を得て。
ぼくらの物語は続いていく。
こうして僕たちは少し、おとなになった。

いろんな要素がてんこ盛りですごい

この作品がめっちゃ好きだって主張する人は多いのに、正面切って感想記事書いてる人がとても少ないなぁと思ってたのだけれど、読んでみてなるほど、と。

惑星のさみだれ」はねぇ……あまりに盛り込まれているモノが非常に多いので、なかなか一言で語りきれない。
そんな中で伊藤剛さんが二つのテーマ「大人になること」「公共性の構築」のようなものを語っていたのは面白かった。

アダルトチルドレン問題ありーの(めっちゃエヴァですがな)
群像劇ありーの(最終地上戦、さみだれ抜きで戦い切ったのはほんとに素晴らしい)
ビルドゥングスロマンありーの(といっても夕日くんは元々熱い少年だけれど)
バトル要素ありーの(泥人形戦より、対人戦のかけひきが面白かった)
人間の意識の話ありーの(マイマクテリオン萌えキャラすぎる)
大人と子供の話ありーの(アニムスも周りの大人さえまともなら…って無理か?)
恋愛ラブコメ要素ありーの(アニマ、最初はおとぼけBBAかと思ったらめっちゃかわいかった)
男同士の友情ありーの(三日月くんもっと評価されるべき)
師弟関係ありーの(めっちゃFateのシロウくんとEMIYAですがな)
SF要素ありーの(興味深いのに作品中でメタ的に説明はしょっててワロタ)

と、ほんとにてんこ盛りで、1冊1冊の密度が濃い。


「一人の女の子のためだけに全力を尽くす」男の子の物語として

とはいえ、ベースはとってもシンプル。とにかく好きな女の子のために、男の子が一念発起してヒーローになるってお話。

他のヒーローものと違うのは、世界と女の子がごっちゃになってないこと。優先順位は明確に女の子側。結果としては世界を守る戦いもやるんだけれど、あくまで主人公の雨宮夕日くんが頑張るのは主人公にとって圧倒的な輝きを放っている朝比奈さみだれという女の子のため。実は作品中結構他の女の人にもモテたりするのだけれど脇目もふらずその女の子のことだけを追い続けてる。

最初から最後まで、ずっとその女の子を好きだという気持ちはまっすぐでブレることがない。ここがまた気持ち良い。最近読んだ「恋わずらいフリークス」の男にも通じる。私は、やれしょうもないことでフラフラ揺れる男の話とか読んでてもイライラしてしまうだけであんまり楽しいと思わない性質らしく、こういう真っ直ぐな青年の方が好きです。


自分の成長に伴って、女の子への愛し方が変わってくる

そのうえで、物語中主人公はいろんな経験をして、どんどん成長していくにしたがって主人公は、女の子への好きという気持ちの現れ方が変わってくるのがこの作品の特徴だと思う。


最初は女の子に依存し、ただ手を取られ引っ張ってもらうだけだった。女の子を求めつつも、また、女の子から求められつつも足手まといな自分に自己嫌悪する始末だった。まだ、女の子がなぜ自分を下僕に選んだのか、女の子が何を求めているのかもわからなかった。


それがだんだん力を手に入れ、女の子をサポートできるようになり、女の子のことを知る余裕が出てくる。ただ従うだけじゃなくて、女の子の気持ちを考え、女の子の行動を後押ししたりする(母との再会など)。だけどまだまだ「ヒーロー」になりきれなくて演じている、という感覚だった。


中盤、女の子が行動できなくなると、その女の子だけに依存するのではなくいろんな人と関わりを持って自律的に行動し、むしろ女の子をリードするようになる。


終盤には、だれよりも早く絶望(ビスケットハンマー)のとなりにある希望を見出して皆をリードするところまで成長し、私男だけど、男から見ても格好良くなってきたなーって思えるようになってました。



そして最後は

すみません、白道さん。僕はあの子が好きなんです。だからあの子を止めるのは僕でありたい。他のだれでもなく、僕が。

好きな女の子のために、ホンモノのヒーローになる。


さみだれはずっと夕日にヒーローを求め続けてた

「知っとったよ、ゆーくん。こうなるって。
 だって、ゆーくんはずっと、あたしのヒーローやったから


 ほら、ゆーくんは、格好いい。
 ゆーくんは覚えとるかな。去年のあたしの誕生日のこと。
 ありがと、ゆーくん。あの時ああ言ってくれて。
 嬉しくて悲しくて、わけわからんかった。
 ゆーくんのいうことや表情やその瞳に、あたしいつもどきどきしとったよ。
 


 東雲さんが遺した技に気がついてゆーくんが泣いた時かな。
 いつかこうなるかもって思ったのは。
 だからあの時私はゆーくんに聞いてみた。でもゆーくん、うそつき。
 

 ああ、そういえばあの時やったっけ。
 騎士団が揃って皆に出会った。
 ありがと、みんな。あたしと仲良くしてくれて。楽しかったよ。

 夏が来て、お母さんが来て。
 あの時、あの時かな。ゆーくんは私を止めるってはっきりわかったの。
 でも、格好よかったよ



 世界への好きが、もっともっと増えてって。
 最後の戦いなんてコないでずっとこんな日が続くなんて思いたくなって。
 
 

 …すぐにそんなの無理って思い知らされたけど。
 止めたくても時間はビュンビュン過ぎてって、
 ゆーくんはどんどん、どんどん格好良くなっていって。ほらまた、そんな顔。
 


 最後の戦いが確実に近づいてきて思った。
 みんな、未来へ行きたいんだ。
 そしてあたしは行けないんだ。
 あたしがいない未来で、みんな幸せになるんだ。
 止まれ時間。止まれ!止まって!お願い!!
 知ってたのに、知ってたのに、なんで今さらあたし。



 すごいな、ゆーくんは。
 あたしにももう止められへんあたしを。止めに来るんやな。あたしのヒーロー!

さみだれは子供の頃から色んな物を諦めて生きてきた。
そんなさみだれがある日たまたま出会っただけの夕日という存在に執着を持つ。

彼女にとって、いつでも夕日は希望だった。

そんな彼女が、希望を失って沈んでいた夕日のことを信じて成長させ、
いざ立ち直った夕日はすごい勢いで成長していってさみだれのヒーローとなる。

そういう「青空エール」みたいな眩しい青春モノ、あるいは
グレンラガン」のようなビルドゥングスロマンがこの作品のベース部分ですよね。

おっさんとしてはまぶしすぎて目が潰れそうですが。



この作品ではおっさんも活躍するので、私はおっさん側の立場で楽しむことにします

そういう直球ドストレートな青春ものとして楽しむこともできるし、
この作品ではそういう主人公たち若者を見守り助ける「おっさん」たちも活躍するので
そちらがわから作品を楽しむこともできます。いずれにせよてんこ盛り。

次で決められる。圧勝だ。だが、「流星の矢(ネガイカナウヒカリ)」がなければ為すすべなく一撃で全滅していただろう。
未来を拓いたのは、この二人だ!守る戦いは大人のものだと思っていた。それは驕りだった。
子どもたちには、自分の明日を守りぬく力がある。流星の矢が完成した日、子どもたちの明日がきたのだ!

とにかく読んでて元気が出てくる作品であり、希望を失いかけてるときなんかに読み直したいですね。


「惑星のさみだれ」の男性キャラを考察してみる(前篇) - さて次の企画は
『惑星のさみだれ』とあの漫画の比較 - SUPLOG