この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです。 ※記事を読まずにはてなスターを押して回る行為はお断りしております。

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「orange」  いろんな可能性に思いを馳せながら今を大事にする気持ち

「あの時ああしていれば」そんなのはきっと未来にいるから言えることだ。
後から思えば簡単なことかもしれない。
でもその時の自分は精一杯で、
(もし、声をかけて振り返ってくれなかったら?)
(もし話を聞いてくれなかったら?)
(もし…)
うまくいかないこともあるんだって、私は経験したんだ。

イムループもの、未来予知もの、未来からの手紙ものはすべて別のジャンルだけれど
この作品は3つめの未来からの手紙もの。

少女漫画でこのタイプ見るのは初めてかも。

ある日少女のもとに、未来の自分からの手紙が届く。
その手紙の内容は、いまのままでは級友である翔を失って後悔することになるから
なんとかして未来を変えて、彼を救ってほしいというもの。

過去にいる10年前の私。
あなたにはこの先たくさんの喜びや幸せが待っています。
どうかその幸せに気づいて。
どうかその幸せをこぼさないように。
26歳になった私には、後悔していることがたくさんあります。
この手紙を書いたのは、16歳の私に
この後悔を一生残してほしくないからです。
大切なものを失わないで。
○のことをしっかり見ていてあげてください。

それだけだったらいいんだけど
「毎日毎日、やたら事細かく指示が飛んでくる」のが特徴。
自分から未来の人間にクレームをつけるわけにも行かず
この後も毎日のようにペースで手紙飛んでくるのって私だったら耐えられないかも

【実況】 実況者vs指示厨 #1 ‐ ニコニコ動画:GINZA


未来の自分と今の自分は別の人間

私はタイムループものがとても好きなのですが、
これを読んでいると「自分の意思で戻るタイムループ」と
「未来の自分とはいえ、他人から情報だけ送ってこられる手紙」では全く違うな、と思いますね。


主人公はもともと内気というか少し対人関係に臆病な女の子。

やっぱり自分が体験して後悔してるわけじゃないから、
後悔するとわかってても動けないもんですよね。
というか、私は未来なんか体験しなくたって
今こうしたら後で後悔するってわかってることたくさんある。
それでも行動出来ない。そのときの痛みは先のことだから
わかってるつもりでわかってない。
だから、今直近で視える不安や臆病さに負ける。

プロスペクト理論。


なによりこの作品、
「今のままだと後悔することになる」ということがわかっているだけであって
未来の自分だって「どうすれば正解だった」ということはわかってない。
つまり、行動を変えて間違う可能性がある。
正解がそもそもあるのかどうかすらわからない。

今を変えなければいけないということがわかってるだけで
結局何もわかってないのと同じ。
そういう状態で、勇気を出せるか。それは難しい。

そういう状態ですらずっと諦めずに行動し続けたからほむらちゃんは脅威なのであって
そもそもまだ自分自身はその失敗を体験すらしておらず、
ただそうなると言われているだけの自分が、後悔を先取りして行動できるかというと。



ということで、結局のところ大事なのは今の自分の気持ち、ということになる。
だから、未来からの手紙は「今のままだと後悔することになる」って危機感を与えるスパイスみたいなものであってほしい。*1

それでも、翔の悩みにちゃんと気づいてあげられていたら。
話を聞いて上げていたら。
私はいつも自分のことで精一杯だった。
翔にだって、後悔することはあったと思う。

10年後の未来の私は、今の私よりきっとずっと後悔してるはず。
翔とたくさん話しをシておけばよかったって。
未来に翔はいないけれど、ここにはちゃんといる。
うまく行かなくても、なんどでもやり直せる。
翔はちゃんとここにいる。
声が聞ける、私の声も届く。
大切にしたい。一秒、一瞬を。

実際の主人公は未来の自分側なのかもしれない

ただ、この作品やたらと「未来の自分」も描写される。これはどういう風に受け止めたらいいんだろう。
これは、あえて未来の自分も描くことで両者を別物として切り離す、ってことなのかな、と。

ツライ事実があったとき「あの時こうしていれば…」って気持ちは強く沸き上がっていた。それでも「自分が巻き戻」ってしまうと、いろいろな過程をすべて否定してしまうことになる。だから、未来の自分はそのつらさを受け入れ噛みしめる。自分自身が戻ろうとは思わない。そのうえで、別世界のifの自分が、後悔しないように生きている姿に思いを馳せる、と。



これは昨日書いた「惑星のさみだれ」のエピローグに出てきた会話なんだけどたとえそれが実現しなかったとしても、そういう可能性がありえた、と思うことはつらいことでもあるけれど、救いでもある、という話でした。

「よかった。あの二人(氷雨と東雲半月)が幸せになる。そんな未来も確かにあったんだ」
「そして数ある未来の中で、そんな風に大人になれたお前(雨宮夕日)がいて私も良かったと思う」

いろんな可能性に思いを馳せながら、それでも今の自分を認め、愛せるようになるのが大事なのかな、と。




作中では臆病な女の子の主人公が、正解がわからない中で、それでも「後悔しないように」って気持ちを持って行動し続けることで少しずつ未来を前向きな方向に持っていこうとする。私も今自分の未来が平坦で詰まらない、これから数十年もつきあうに値しないようなものに見えてしまっているけれど、彼女みたいに頑張れば、未来を変えていけるのかな、ってな感じで考えていきたいと思います。

*1:しょうがないけれど、読者としてはあくまで今の主人公側の立場にいて、未来の主人公がどれだけ後悔しているか、どれほどつらい気持ちだったかはまだあんまり伝わってない。それについては別の作品で補完すべきかも。「僕等がいた」みたいな長く続く後悔の話を知っていると感情移入増しそう。お互い大事に思っていたのに、どうしようもない事情から離れ離れになって長い間苦しみ続けたカップルの話。そういう想像働かせながら読むと、もっと真剣になれるかも