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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「これだからアニメってやつは!」  SHIROBAKOの数年後・・・かな?

29歳アニメ制作進行をしている女性が主人公のお話。
制作進行が主人公の物語といえばSHIROBAKOが大ヒットしましたが、
まさに主人公は宮森が制作進行としてしっかり成長した姿を描いているような印象を受けます。

SHIROBAKOで描かれなかった、より難易度が高い仕事について描かれていたり、
「制作デスク」のその先、について考えさせる展開になっており、
リアルよりなのでアニメ制作現場の大変さが強調され、「午前3時の無法地帯」と似た印象を受けました。

まさにSHIROBAKOの数年後、という感じで途中までものすごく面白かったです。

ただ終盤になって一気に話が飛んでしまい、尻すぼみになってしまったのが残念。(打ち切りなのかな……?)
それでも途中までの盛り上がりはとてもよかったですしSHIROBAKO好きな人にはぜひ読んでもらいたいなーと思います。


ベテランからみた「制作進行」という仕事

宮森の物語が新人製作として仕事に翻弄され、先輩に助けてもらいながらなんとか乗り切っていくものであるなら
こちらは、まさにベテランの製作として最前線で立ちふさがる壁と戦っていきます。

・私達の主な仕事はスケジュール管理だし直接画作りに関わることはないわ。
でも演出とのウチあわせは戦よ!いいものつくるためには一歩もひかないわ!

・可能な限り良い人材を集めるのが進行のしごとよ。現状で十分なんて私が言うわけ無いでしょ

主人公が有能であるということは、それだけ多くの問題、難しい問題も主人公にぶつけることができるということです。
SHIROBAKO」は現実に即しながらもあくまで「理想の職場」「理想のアニメ製作」を描く作品であったし、宮森を通して、各パートの人間を輝かせることが目的の作品でした。それゆえにあまり描かれていなかったようなこともありましたが、この作品はあくまで「製作進行」の人間を中心に描いた作品です。


「スケジュール管理」や「原画回収」が基本ではあるけれど、他にもやることがあまりに多い。関わる人が多い。



①「どうやって人を集めるか」ではなく「そもそもまずどういう人を集めるか」を考えること。
 そのために仕事の内容を正確に把握するため監督や監督代理である演出とバトルを繰り広げ
 必要に応じて一歩もひくことなくバトルを繰り広げること。

「自分の中で作品の方向性やカットの意味がわかってないと人に仕事頼めないでしょ」
「それと監督の描くイメージもな」

明確な設計・作成意図があって、初めて集団作業の質は高まる。計画をたてる監督がブレたりぼやけたらその時点で後はおしまいだ


②クリエイター職のスケジュール管理は実質的には「モチベーション管理」や「問題解決」に等しい。
 各アニメーターのモチベーションを維持するためにどこまでのリソースや支援する手段を持てるかを考えること。

「やり方はひとつじゃあ無いだろ!お前のやりかただけが正しいと思ってんじゃねえよ!集団作業ってことを理解しろ!お前の仕事はなんだ、言ってみろ。制作進行は質やスケジュールをただ管理すればいいじゃねえ。一番大事なのはスタッフのモチベーションを上げることだろうが!」

視聴者の感想じゃねえんだから!フィーリングじゃなくて演出意図をきちんと書けって!

③スケジュールどおり進まず人も時間も足りなくなった時に、どういう手段で埋め合わせるか。
 緊急事態に対応してもらえるストックを作るために普段から人間関係や貸し借りの構築を作っておくこと。


④そこまでやっても無理な場合はプライベートを投げ打ち、駆けずり回ってなんとか間に合わせること。


⑤その他雑務

制作進行は、とにかくやることが多いのだ。
進行管理、素材の回収、運搬、その他こんなことも……「資料のコピー」……これが地味に辛い。

などなど。他にも「脚本」「彩色」「撮影」の打ち合わせなど



普通、新人にできるのは④と⑤くらいでしょう。基本的なスケジュール管理と原画回収だけでいっぱいいっぱいだと思います。コミュニケーション能力が高ければ場合によっては②ができるかもしれません。SHIROBAKOにおいては宮森自身のコミュニケーション能力が高くかつ①や③については見えないところでのフォローが強かったことがわかりますが、それでもそこまでが限度でしょう。
①は相当な知識がないと難しいし、③はもう純粋に蓄積がものをいう世界です。普通の会社であればこれらは「管理職」以上がやるべきマネジメント部分と言えます。それにしたって、ある程度の肩書や、組織の後ろ盾などを前提としてようやくこなせることです。
にもかかわらず、この作品で描かれているアニメ製作は、マネジメントが組織的に行われておらず、この制作進行という個人の能力ややる気に依存する構造になっているように思いました。

この作品の主人公は相当優秀で、物語後半に「制作デスク」に推薦されるレベルなので、こうした問題をこなしつつやっていくのですが、そこまでやっても厳しいのがアニメーション制作なのだな、ということがよくわかります。

そのうちあの人達も気づくんじゃないかしら。
こんなスケジュールと予算で作れるのはスタッフがいのちを削ってるからだって。

新人の頃と違って30過ぎると仕事だけでなく人生を考えなければならない

SHIROBAKOにほとんど描かれていなかった要素として仕事人だけでなく個人としての幸せの部分をどう考えるかも描かれています。

主人公は物語冒頭で、仕事が忙しすぎて交際相手とスケジュールが合わず破局してしまいます。

どう言ったら、わかってもらえたのかな。
彼だけじゃなくて家族にも言われるんだよ。
なんで絵もかけないお前がアニメなんか作ってるんだって。
仕事内容話しても理解してもらえないし、
一日中働いてる仕事なんかあるわけないって怒られて。
私だって、普通の人と時間合わせようって努力はしてるよ。
でもそんなの無理じゃない。
脚本もコンテも作画も、機械みたいに規則正しく上がるわけないもん。
スタッフにだって早く素材出せって怒られて恨まれて。
うまく進行してもそれが当たり前だって褒められることもないわ。

そこまでしてなぜ続けるのかというと「やりがい」しかない。

でもね、それでも自分の担当した作品が出来上がったの見ると今でもドキドキするんだよ。
初めて仕事した時から今でもそれは変わらないの。
そりゃあ出来が悪いって叩かれる時もあるわ。
辛くてもうやめようって思ったことも何度も在るよ。
それでもOAみたらそんな考え吹き飛んじゃうんだもん。
頑張ってよかった。やってよかったって。これだからアニメってやつは!って。
辛くて苦しいけどやめられないんだよ…

しかしこれを言っていられるのも30くらいまでで、やりがいだけで続けていくのは限界がある。
アニメが好き、だけで続けていくのは限界がある。
その先のキャリアについても考えないといけない。

実際に、先輩の制作進行デスクは結婚して退職してしまうことになります。

主人公もそろそろ自分がどうあるべきかを考えなければ…
という感じでこれについてもいい感じで踏み込みつつあったのですが、
あっさり物語が終わってしまっています。

製作ってよく小間使いみたいに言われますよね。
素材集めて届けてスケジュール表作ってチェックして
でもそれが製作の仕事の根っこじゃないってわかったんです。
私達は人と人をつなぐのが仕事なんです。
星のように散らばっている才能を見つけてひとつにつなげて。
そうやって大きな輝きを作るんですね。
私は絵は描けないし脚本もコンテも作れません。
もちろん音楽の才能も全く無いです。
でも私にもできることが在るんです。ここが私の居場所なんです。

これはこれでいいんだけれど。
それはまた別の作品に期待しなければいけないのかなー?