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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「いじめっこ虐殺ゲーム」感想  強くなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない

映画「SAW」シリーズ、あるいは最近話題のマンガ「賭けグルイ」が好きな人におすすめ。私は大好物でした。

最新情報 - いじめっこ虐殺ゲーム
ひねくれゲームならおまかせのPLASTIC LABELのゲーム。フリーゲームなのにボイス付き。しかも結構熱演してます。

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目が覚めると見知らぬ迷路に閉じ込められていた。何故ここにいるのか全く記憶がない。武器の入ったトランクケースと、数字が記されたブレスレットが与えられた。
そんな私のもとに、風という女の子が出てきて告げる。私はこの迷路からはやく脱出しなければならない。そして脱出するためには、私をいじめた、いじめっこと対決することが必要なのだと。

ゲームのシステムは非常にシンプル。部屋に行って、イベントをクリアする、を繰り返すだけ。

①8つの扉からいけるダンジョンを通って「対決部屋」に行く



②「対決部屋」に入るとまず自分がいじめられた時の体験がリフレインされる。結構えげつないいじめが多い。


③部屋の中には自分に対していじめを行っていた女の子がいて、いじめっこは過去のいじめを全く反省していない。それどころかしらばっくれたり逆ギレしてこちらを責めてくる。かなり気分が悪くなります。


④いじめっ子を許すか許さないかを選択できる。イジメッ子を許す場合は難易度は非常に低い。遺恨をわすれて協力さえすればふたりとも簡単に助かる仕組みになっている。ただし、助けても感謝されることは全くなく、主人公は全く成長できない。一方、許さない場合は、ゲームで戦って勝利を勝ち取っていくことになる。このゲームで戦ってむかつくいじめっこを倒す、ことがこのゲームのメインパートになる。勝つ度に主人公は精神的にどんどん強靭になっていく。どちらを選ぶかはプレイヤー次第



⑤相手を許した場合は赤い扉へ、相手を殺した場合は青い扉へ進むことができる。

最後まで敵を倒すか、赤い扉を開くとゴール。行動結果によって、3種類のエンディングに到達します(BAD, Good, TRUE)

ただ全部許すだけでも、全部殺すだけでも真実に辿りつけない

前半はただいじめられっ子がいじめっ子に復讐するだけでスッキリ、という展開だったのだけれど,だんだん違和感が浮かんでくる。

ちょっとずつ、いじめられていた時以外の記憶も戻ってくる。

じぶんをいじめていた子たちは元々はそれほど悪い人ではなかったのではないか、みんな何かに怯えていたのではないか、もしかしてどこかに黒幕がいたのではないか、という疑念が湧いてくる。

また、復讐をしているうちに、復讐のためとはいえ、だんだん相手を殺すことに抵抗を感じなくなっている自分に気づく。私はここに来る前どういう人間だったんだろう。そもそも、私を先導する「風」という少女は一体何者なのだろうか。


という感じでなかなか考えさせられます。




以下感想

こんなリトルバスターズ!は嫌だ(涙)。この作品にハッピーエンドは存在しません。いまは、まだ。
この物語は「ギリギリ」のところで間に合うリトルバスターズ!とは違って、始まった時点ですでに「取り返しの付かない事件がすでに完了してしまっている」ため、どうやっても救いがありません。全エンディング到達しましたが「True END」と「BAD END」どっちがマシなのか、悩ましいところです。エンタメというよりはメッセージ性に特化できるのはフリーゲームの良い所ですね。

①この作品は、まず「虐殺ルート」で過去のトラウマや自分をいじめてきた人間を乗り越えていくことで強くなる、というルートを体験できます。いざ立ち向かってみれば、イジメッ子たちもそれぞれに弱さを抱え、怯えながら強気に振舞っているだけの自分と大きく変わらない存在であることに気づく。死ぬ気で戦えば決して勝てない相手でないことがわかります。

②そうやって、自分にもそういう強さを得ることが可能であったことを知った上でなら、その強くなった立場からようやく「許す」「殺さない」という選択肢を選ぶということが可能になります。 

③しかしここで、ただいじめっこを許す、ただスルーするだけでは以前と何も変わらない。相手は反省しないしまた同じことを繰り返す。いざとなったらいじめっ子戦う覚悟を持ちながら、それでも相手と同じ立場に堕ちるのではなく、その中で自分は正しくある勇気を一人ひとりが持つことが必要なんじゃないでしょうか。そうすることで、世の中を少しずつ変えていくしか無い、という祈りのようなメッセージを出している。それがこの「いじめっこ虐殺ゲーム」ゲームなんじゃないでしょうか。

そういう意味で、このゲーム「イジメッ子」を虐殺していくというヒャッハーな要素もありつつ、一方で「傍観者」側や「いじめられっ子」側にもちゃんと責任を求めている。結構厳しい作品だと思ってます。
これと同じことを、エンタメが求められるアニメでやろうとしたAngelBeats!は本当に思い切ったことをやったんだなーと思います。

世界を信じるためには、まず自分が信じる世界の一部にならんと…

If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.

の訳として、

「ハードでなければ生きていけない、ジェントルでなければ生きていく気にもなれない」という翻訳こそ正しいという意見もあるそうです。私も、この訳こそがいいな、と思うんですよね。


「どうして人を殺さないのか」とか「何のために人に優しくするのか」っていったら、そうでなければ、生きていく気になれないから、だと思うんですよ。世の中捨てたもんじゃないって信じたいなら、まず自分がそういう風に行動するしかない気がする。

そんなことを思わせてくれる作品でした。