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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「僕だけがいない街」  仲間とともに、惨劇に挑め

私は、私だけがいない街のことを考えると気持が軽くなる。遠く遠くへいきたい。 (雛月加代)

代償と引き換えに過去に介入できる「リバイバル」という能力?を持つ主人公が、現在で起きた惨劇から母親を守るために、15年前の過去に戻って、その時に起きた連続殺人事件の謎を解き、可能ならばそれを防ごうと奮闘するお話。

いろんな要素が詰まっていて一言でうまくいい表すのが難しい作品ですが、ベースはミステリでしょうか。「ひぐらしのなく頃に」が好きな人ならこの作品も好きだろうと思います。また、ズイショの表現に「ジョジョの奇妙な冒険第四部・第五部」の影響が見られる言い回しがあって個人的にニヤリ。



主人公の成長と仲間を作って敵と戦う展開は王道ながら良い

サスペンスものとしてのこの物語は実際に読んでもらいたいと思いますが、
それ以上にこの作品が魅力的だなと思うのはありきたりかもしれませんが「主人公の成長」と「他人を巻き込んで活動を広げていく」部分です。

主人公は現在において惨劇を体験し、それを防ぐため、過去の子供時代に戻ってくるわけですがいくら知識や情報だけあっても、子供一人ではできることはたかが知れています。
しかし過去に主人公は、過去のトラウマや、現在で起きた事件のせいで自分のことを疫病神のように感じ、人に心を開けなくなっていた。最初一人で何とかしようとします。思いついたことはなんでもやるけれど、結局過去の殺人事件を防ぐことは出来ず現在も変わらないという結果に終わってしまいます。


そこから現在に戻り、とあるイベントを経ることによって主人公は人を巻き込むことへの恐れを捨て、むしろ積極的に人を頼るようになる。そうやって、過去でも、現在でも、理解者を得て、受け入れてくれる人を見つけて少しずつ前向きに行動していくようになるというその変化の部分が面白い。

また、その働きかけによって、周りの人間を巻き込んで、協力して目に見えない犯人から子どもたちを守る活動を行う。この辺りの展開は「ラブライブ!」や「もしドラ(途中までは傑作)」のような面白さに通じるところがあると思う。





この活動の途中、仲間たちの中でも頭脳担当であるケンヤの言葉と表情がグッときます。

主人公「いま、思いついたんだ。結末はこれから考えるよ。事件になってもいい。計画途中で見つかってもいい。
どんな結末だろうと、雛月が死ぬよりはいい。 」

ケンヤ「俺はこうして人のことを退いて観てる。だから状況はよく見えてても、アプローチは下手だ。そんな俺の目の前で、悟は踏み込んでいった。俺にはまるで、「こうやるんだ」っていう意思がお前に入り込んで俺を叱ってみせたように思えたんだ。お前のことがヒーローに見えた」

この時のケンヤの気持は、後でちゃんと意味を持ってきます。











主人公と目に見えない犯人との手探りしながらの駆け引きが熱い

この作品の真犯人は5巻の最後に判明します。(その前から大体予想はつくと思うけど)

「名探偵コナン」に出てくるような殺人を犯すためだけの舞台装置ではない。とても人間味があって、この犯人は非常に面白くて「殺す相手」以外に対してはめちゃくちゃいい人なんですよね。主人公が成長していくきっかけにもなっている。だからこそ、主人公は気づかない。気づこうとできない。むしろ信頼して隙を見せてしまう。

また、この犯人は非常に慎重であり、状況を観察して「条件が変わったら殺人の対象を変える」という知恵がある。過去に介入する物語として、単に条件をちょっと変えれば事件を防げるわけでもないという面白さを産み出してくれる。

このように、犯人と主人公の双方向の関係で、過去がちょっとずつ変わっていく、というやりとりも面白いです。


「ひぐらしのなく頃に」においてもXYZルールや、状況に応じて惨劇の展開が変わるといった展開が徐々に解き明かされていく楽しみがありましたが、この作品はより主人公と犯人の対決構図がはっきりしていて、そのあたりが違いになってくると思います。






6巻からタイトルにある「僕だけがいない街」というタイトルに沿った展開がスタート

あの時、君は僕らのヒーローだった。
君に追いつきたくて君と一緒に戦いたくて今の僕らが在る。
それを君に知って欲しかった。

真犯人は明らかになったものの、物語はそこで終わらない。
学校における過去の殺人事件こそ防げたものの、犯人を捉えることは出来ず、現在の惨劇は防げない。むしろここからが本編開始。

真犯人がわかってもそれだけで追い詰めることができない、そういう非常に強い敵に対して、主人公及び、仲間たちがどのように立ち向かっていくか、今後の展開もとても楽しみです。