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「いちえふ」  意外にも異世界ラノベもののような読み応え

やっぱり実際に読んでみないとわからないものだなぁと。この漫画は原発云々をひとまずおいても面白いです。


実際に福島第一原発で労働者として働き、その実態をまとめたマンガとして話題になっていた作品。作者自身に政治的な信念や社会的使命感などがあまり感じられず(あえて言えばメディアのインチキ報道が嫌い)、あくまで自らが体験し、五感で掴んだ日常を淡々と描写しようとするスタンスが貫かれている。どんなに世間では重要視されていようがあくまで一作業員としての作者の目線で作品が語ら荒れる。

そのためか「小説家になろう」における異世界モノ作品を読んでいる様な読み応えだった。


「異世界」における日常

実際作者は首都圏にいて仕事に困っている状態で、「高給と好奇心、それにほんの少しは被災地のためという義侠心から」原発での仕事を希望する。しかし、実際に現地に行ってみるとそこにあるのは「フクシマの隠された真実」などではなく「多層下請け構造の最下層にある作業員の日常」である。 


一作業員の目線から見ると、東京から見たら異世界とも思えるような特殊な環境での様々なルールに適応すること、現場での人間関係を円滑にこなすこと、それから毎日の作業に関する問題に対応することなどがメインになる。 放射線に関する危険はたくさんあるがそういったことは自分で考えてもどうにもならない。親会社の人間が用意した対策を信頼するしか無い。幸い作業員の放射線被爆対策は相当神経質な仕組みが用意されているからそれを信じて従うのみである。 それよりも作者を悩ませているのは「作業中に鼻が痒い」であるとか「トイレの管理問題」であるとか、「休憩所の換気」と言った問題である。ちょっとこのあたりで孤独のグルメで豚がかぶってどうしよう・・・ってな話を真剣に悩むゴローちゃんを思い出したりもする。


こういった問題をこなしつつ、徐々に慣れてきた作者は少しずつ環境を整え、自分が見える世界を広げようとしていく。

最初は住居も会社が用意した住居に数人でつめ込まれ、仕事が始まるまでは給料が出ないため給料を前借りさせられ、十分な手取りがない状態で生活に不安を抱えながら仕事をする様な状態からスタートする。それがだんだん仕事も覚えてくる。職場の人とのコミュニケーションも進み情報も入ってくる。給料も少しずつ溜まってくる。そうすると「多層下請け構造」における人員調達の姿も見えてくるので、今自分がいる底辺の職場から上を目指していこうという気持になってくる。そして、何人かの仲間とともに自らの住居を借り、情報交換をしながら職場を目指し、少しずつ職場のステップアップを目指していくようになるのである。

こうやって、何もわからない状態から手探りでスタートし、「人間としての成長」ではなく「職場や環境のレベルアップ」を段階的に達成していくという描写も、おもしろい異世界ラノベもの作品を読んでいるような感触であった。



と、このようにまずマンガ作品としても普通に面白い。最初は原発の細かい情報とか気にせず人間関係周りだけ読んでも楽しめる。


原発作業員の目線から見た現場の実態

その上で、この作品で扱っているのは、異世界のように感じるとはいっても、現実にあった原発事故のあと、原発で働いている人のナマの体験記録である。 メディアで報道されるような大げさな話ではないが、全く知らないような現場での話がたくさん紹介される。この点でもとても読み応えがある。なんといっても、現場の人達が実際に何を考えているのかというのは、こちらの憶測ではかれるものではないからとても興味深かった。

ここは実際に読んでみてほしいけれど例えば現地にいる人はやはり放射線から逃げられないので、ただ怯えたりヒステリックに騒ぐのではなくしっかりと知識を得ようとする。ちゃんと知らないと、何でもかんでも放射性が原因だと感じて怯えることしか出来ない。だから放射線防護についての教育もするし普段それほど勉強なんてしてない人でも「本気で怖いからこそ、本気で勉強する」。細かい作業やルールについても一つ一つ意味を確認しながら先輩が後輩に厳しく指導していく。そういう様子が描かれている。 



回によってクオリティにばらつきはあるけれど、総じてとても興味深く読めました。一回ではすべての情報は頭に入ら勝ったので何回か読んでみようと思います。

2巻と3巻の間にすごく時間がかかるようだけどどうしたんだろう…?