この夜が明けるまであと百万の祈り

私が元気づけられた出来事や作品についてのメモ。最近TED聴き始めました

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「有害都市」  マンガ論というよりはネット炎上の話近いかも?

連載中もいろいろ話題になっていた作品でしたが、完結しましたね。

僕にとって、マンガを描くという作業は常に不安との戦いだ。戸田ユキヲ氏は「臆病さが文化を殺す」と語っていたが実のところ僕はいつも怯えていた。「正しさ」を求める人々が今日もどこかで本を燃やしている。いったいどれだけの本を焼きつくしたら彼らの正義は満たされるのだろう。先の見えない不安に押しつぶされそうになった時、僕は70年前の漫画家が残してくれた手紙に救われた。だいそれたことではあるけれど、僕もいつかそんな仕事ができたらと思う。
(中略)
この作品を、70年後のクリエイター達に捧げる。

申し訳ないけれど、正直いって全部読み終わった後の感想は「微妙」でした。

私はこの作品を誰かにすすめる気にはならなかったので今回はAmazonへのリンクも貼りません。これ読むくらいなら「シモネタという概念のない退屈な世界」のほうが絶対に面白い。有害都市はエンタメとシリアスな問題提起のいいところ取りをしようとしてどっちつかずになってしまった印象がある。

……普段だったらこういう評価になってしまった本はそっ閉じして話題に出ささずじまいにします。すごく面白かったわけでもすくつまらなかったわけでもない、微妙なのだから感想書きにくいです。でもこの作品の1つ1つのパーツはすごく興味深い、序盤のワクワク感は本物だったと思うのでなんとも反応にこまってしまいます。



一応感想を書きますが、どうしても私はこの作品に対して否定的な立場です。自分で書いていてもあまり気持ちの良い内容ではないです。不愉快な気持ちにさせてしまう可能性が高いので、予めご了承の上でお読みください。

こういった「テーマ性の強いフィクション作品」を見る際に頭に入れておきたい「ポーの法則」

メモ「ポーの法則」: 忘却からの帰還



扱ってるテーマが問題というよりは、単純に作品として中途半端で面白くないと感じる

繰り返しになるけれど、この作品ネット炎上なんかをしょっちゅう見ている人間として、各話で語られている個々の要素はめちゃくちゃ面白い。にもかかわらずなぜか全体で見ると「中途半端」で「面白くない」と感じる

特に最初はすごく面白かった。なんといってもタイトルやコンセプトはすごく良いと思う。マンガやラノベに対する「表現」に対する、国家による規制が極めて恣意的かつ厳しくなった世の中でのマンガの奮闘ぶりを描いた作品……であった。今までの筒井先生の作風からしてもエンタメ性が高い作品に仕上がっていくのかと期待していたのだけれど。


後半部分は途中で打ち切りが決まったのかそれとも作者の想像力がキレたのか、カッコつけて終わりにしたかったのかはわからないけれどなんか投げっぱなし感がして個人的には残念である。終盤、最後の3話あたりから急展開になり、いきなりエンタメ性が放棄されマンガ家を取り巻く現状(私達にとっては未来)に敗れ、70年先に対して極端に悲観視しつつ、そのまま作者のメッセージを垂れ流して終わる、というよくわからない展開になってしまっていると感じる。

この序盤と終盤の接続が非常に悪いと感じた。こういう結末にするのであれば、アメリカ人の編集者は出すべきではなかったと思う。この展開ならアメリカに行けばいいじゃないか、となってしまうからだ。

「エログロという概念のない綺麗で退屈な社会」というディストピアを描きたかったのであればもっと社会的な要素をしっかり作りこんで欲しかった。何もかも中途半端だと感じた。


詰め込みすぎて作品のコアの部分がどこにあるのかぼやけて拡散してる印象がある

あれこれ面白い要素を詰め込み過ぎたからこそ逆に中止がぼやけてしまったのかもしれない。

・主人公
・雑誌編集者
・アメリカ人編集者
・過去に有害認定を受けた作家
・諮問委員の戸田

それぞれが別の立場から現状に窮屈さを感じており、それぞれの立場から問題について語る。抱えている課題もバラバラだ。

敵役は非常に薄っぺらく描かれ、最終的に「我々の臆病さこそが問題なのだ」と語られる。

いろんな主張が拡散したまま統合されてない。バラバラのまま調理されずに差し出されただけのように見える。

たしかに言ってることは間違ってないと思う。
ブログ記事だったら喜んでブクマで絶賛コメントを書いてたかも知れない。
でもこれはネットの議論でもエッセイ集でもなくてじゃなくマンガ作品なのに。


作者の作品に対する態度に抵抗を感じる

おそらく作者は「マンガ家としていろんなものを気にせず思い切り自分が面白いものを描きたい。ただそれだけなんだ!」というメッセージを伝えたかったんだと思う。そしてそのことが妨げられていることを訴えたかったのだと思う。本人がどれだけ望んでも、世の中が批判されることに「臆病」になってしまったらもう自分が好きなことを思ったように描くことさえできなくなる、そういう作者が抱いている危機感を読者にも考えて欲しかったんだと思う。

それがストレートに伝われば良かったんだろうけれど、私としては読んでいてあまり気持ちよくそれが伝わらなかった。作者が自分の主張のために、実際の事実や時系列を捻じ曲げて描写していたり、敵役をあまりにテンプレート的に薄く、かつ秋元康やアグネスのパロディを入れるなど揶揄するような描き方をしていたりしているのが気に入らなかった。

臆病さの最たるは、この馬鹿げた舞台設定だ。分別盛の大人が揃いも揃って裁判ごっことは何事ですか?恥を知れと申し上げたい!

そうかいているにもかかわらず、作者の脳内では自分が正義で、間違った人間を偏った描き方に寄って裁いているように見えたし、自分の主張を強化するためには情報を捻じ曲げて描くというのを7話でやらかしてしまっている。

http://togetter.com/li/783449

自分が批判的に描いているものを、ご自身がされていてどうしてその正しさを主張できますか。「あ、これ青○才で見たやつだ」って気分になってしまいました。私はどうしてもそういうの受け入れがたいです。ストレートに勝負したいなら、ストレートにやって欲しかった。テーマがすごく興味深かっただけにとても残念な気分です。

二百二十分の一ゲット:フレデリック・ワーサム『無垢への誘惑』(2004年リプリント版) - Economics Lovers Live
Long Box: - 資料/Comics Code



「描クえもん」に期待

同じ漫画家が主題のものとして「描クえもん」がスタートしてますね。

トーチweb 『Stand by me 描クえもん』第1話 11月20日更新。

相変わらず泥臭いですがこちらはものすごくストレートで今のところグッとくるものがあります。続きに期待しています。