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「もしイノ」を読む前に読んでおきたい「なぜもしドラは売れたのか?」

この本、めっちゃ面白いのでなぜはてなの人たちが読んでいないのか私にはわからない(困惑)


この本はブロマガの連載を再編集した作品で、岩崎夏海さんがもしドラに関する主観を全て包み隠さず語っためちゃくちゃ贅沢な本です。



たとえば文体の話。

ひたすら同じ語尾を繰り返し説明調が強い岩崎さんの文体は一部の人からはかなり不評です。私も読みにくいぞ、と思ったのですが、実はあれは明確な意図をもって書かれているのです。その秘密がしっかり語られています

ゴッドファーザー』は、例えばこんな文体で書かれていた。

アメリゴ・ボナッセラは、ニューヨークの第三刑事法廷で判決が下るのを待っていた。それは自分の娘を残酷に傷つけ、辱めようとした奴らに対する報復なのだった。

この訳文の特徴をいえば指示語が多いこと、文末が「た」か「だ」で終わるのが多いこと。あるいは、その独特の突き放した視点も特徴といえるかもしれなかった。淡々としていて客観的なのだ。それでぼくも、この文体を取り入れて『もしドラ』を書き始めた。それはこんな書き出しで始まることになった。

川島みなみが野球部のマネージャーになったのは、高校二年生の七月半ば、夏休み直前のことだった。

この書き出しの一文が思い浮かんだ瞬間、ぼくはふいに、『もしドラ』の小説としての全体像が、ありありと立ちあがってきたように感じた。このまま最後まで走っていけそうな気がした。

※ちなみにはてなウォッチャーの方はご存知だと思いますが、別にもしドラ書き始める前から岩崎さんの文章はずっとこんな感じです。
http://anond.hatelabo.jp/20110319224832


サスペンスもSF要素も人生讃歌もあるミステリー小説として読もう

この作品は表向きはもしドラの成功を分析することでノウハウを語るような本だと思うかもしれない。でもそうじゃないのです。岩崎夏海さんがそんなつまらない話を書くわけないじゃないですか。


この本はそういうノウハウ本の皮を被ったミステリー小説です。「岩崎夏海」という実在の人物をモデルにして描かれたフィクションとして読むべきです。



作品中、岩崎さんの語りは時系列がいろいろと前後しており、「ミステリーとしての信頼出来ない語り手問題」や「SF的なタイムパラドックス」の要素が楽しめます。ノンフィクションだと思って読むと発狂して死にますがフィクションとして読めばエンターテインメントとしてかなりレベルが高いと思います。


また、自分をジョブズに例えたりアンリ・ルソーに例えたりと持ち上げまくったり、もしドラのすべての要素が完璧であるという前提で販売戦略から表紙へのこだわり、そしてやねうらお論争についてまでを熱く語り、そのすべてにおいて全能感に満ちた記述が続きます。並のラノベやなろう小説などではまるで歯がたたない「岩崎夏海を主人公とした俺TUEEEEEEE」の物語が楽しめるのです。



なんといってもこの作品の素晴らしいところは人生讃歌であり人類へのハゲましのメッセージに満ちているということ。



岩崎夏海さんの視点においては、彼のすべての行動に意味がある。すべての苦悩に価値がある。家に引きこもってFF11をやってるだけのネトゲ廃人時代ですら大成功に欠かせない経験でした。若くして成功したもののそこから色んなものを失いギリギリまで追いつめられたのも、そこまで追い込まれなければ「もしドラ」を出版することはなかったのだから必要なことだったのです。



全ては己の心が決めるのです。たとえ現実が理不尽であろうと、己の心がそれに屈しないかぎり人生には常に希望があるのです。退屈に思える日常でも本人がそれに意味を見出し楽しみ続ける限り人生は彩りに満ちているのです。



このポジティブという言葉では生ぬるい、過去も未来も現在も超越し塗り替える力、これこそがギガロマニアクs……じゃなくて、この小説に登場する「岩崎夏海」という人物の最強の武器なのです。



読み終わった後、私は強くハゲまされた気になりました。

もしドラ』はなぜ売れたのか?
その理由を、一言で言い表すのは難しい。だからこそ、こうしてさまざまなことを書き連ねてきたのだが、それでもあえて一言で言うとするならば、それはぼく自身が命を賭けてこの作品に取り組んだ、そのことの「執念」のようなものが行間から滲んでいたから───ということがあるのではないかと、今振り返ると思う。

この小説に登場する「岩崎夏海」という人物はなんて格好いいのだろうと思いましたね。この小説を読むことで私は強くハゲまされました。



大事なことなので二度いいますが、こんな面白い作品をなぜはてなの人たちが読んでいないのか私にはさっぱりわかりません(呆れ)