この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです。 ※記事を読まずにはてなスターを押して回る行為はお断りしております。

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「うつくしい子ども」  残酷な神が支配するのグレッグを思い出してつらい

「きみの持ち続けている その絶望にはいまだ名前がないのだ。誰も その名を知らないのだ。その絶望の名前を。
 きみは喪失し続ける。その喪失にも名前がないのだ」
「なぜ……ですか?」

「歴史は敗者の苦痛に名前を与えない。その絶望に近い名は……死だ。
 どんなことがあっても 自らは死なないと約束してくれ」

http://www.moae.jp/comic/chibasho_utukushiikodomo/1

えーとですね。ここで終わりっていうのは怖すぎるんですけれど。

これうつくしいのかもしれないけれど、この美しさは自分以外の人間を殺すよ。

もうこの女の子が生き延びた時のほうが怖い。

別に徳ちゃんの考えを受け入れろとは言わない。でも、誰かに弱音を言って欲しかった。

最後まで誰一人何一人許すこと無く、許されること無く。

それでも「私は、私を肯定する」というのは、これは自分が自分にとっての神になるということですよね。

神というのは愛、報復、許し、癒し、等々、人間が縋(すが)る対象なんですが、縋(すが)る神が実は残酷であったら、けっこうコワいですねー。だから支配するのは何でもよくて、支配するカミの性格に問題があるってのがミソですねー。

他の何者にもすがれないから、自分の将来にすがる。

やむを得ないことかもしれないけれど、きっとその人間は他の誰も受け入れられないし、誰も許せないと思う。


残酷な神が支配する」という作品にグレッグというサディストがいる。

やはり親の愛を受けることが出来ず、人の愛を信じることができないまま育った。

彼は死にものぐるいで努力して貿易商として成功したが、どうしても他人を信じることができなかった。

完璧であろうとしすぎて結婚した妻ですら信じられないし、自分の弱みを見せることが出来なかった。

ささいなことで疑心暗鬼になって妻を追い詰め結局失ってしまった。

そうやって自分で自分を傷つけつづけ、その傷を他人にも背負わせようとした。

愛する人間ほど傷つけずにはおれず、暴力によって支配せずにはおれない人間になってしまった。

やがて完璧なよき人間であろうとする方向と、他人を傷つけねばすまないという真逆の方向に引き裂かれて、歯止めが効かなくなった。




この悪魔のような人物が結婚を前に神に対して誓いをたてるシーンがある。

そこで「俺はオヤジのようにはならない」「全身全霊をもって妻を愛す」「決して裏切らない」

と何度も何度も自分に信じこませるように唱える。

きっと、この時の彼はとても不安が強かったのだろうと思う。

読み終わった後でこのシーンに戻ってくるたびに何回読んでも涙がでてしまう。




「うつくしい子ども」の彼女も、よほどの出会いがなければこうなってしまうと思う。

そして、徳ちゃんの存在はそこから抜け出すための蜘蛛の糸だったのではないか。

彼に弱みを打ち明けて、泣いてすがることができれば、きっと輝きは失われる代わりに平凡で穏やかな幸せを得られたはずだ。

しかし彼女は、きっとそれをわかっていて、それでもその道を選ぶことを自分に許せなかった。それを逃げだととらえて拒否してしまった。

此処から先は、徳ちゃん以上の出会いが無い限り、修羅の道しか残ってないのではなかろうか。

いじめられていた人間が自分をいじめた人間に望むこと - この夜が明けるまであと百万の祈り

わかっている。ここにいる限り解放されることはない。いつまでも傷口は開き、裏切りは重く、幸福はただあさましく。そして私は全てを許せないまま。許せないことをたった一つの証明として---

彼女は本当に強い。きっと考えなしに家を飛び出して最貧困女子になるようなことは多分無いのだと思う。

すくいきれないもの 「最貧困女子」 - この夜が明けるまであと百万の祈り

その代わりに、きっとサバイバーとして、他者に心を許すことが困難な人生を送ることになると思って辛い。

そういうことを考えながら読んでしまったのでめちゃくちゃつらい。

幸があってほしい。というか、作者さんできればちゃんと続きを描いて欲しい。

できることなら、この先戸田誠二作品みたいな、過酷でもどこかに落とし所が見いだせる展開があってほしい。