読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

この夜が明けるまであと百万の祈り

私が元気づけられた出来事や作品についてのメモ。最近TED聴き始めました

【スポンサーリンク】

フリーゲーム「Reincarnation」は「直面化(Confronting)」と「精神統合」を描いたセラピー的な物語

※「続きを読む」からいきなり致命的なネタバレがあるのでご注意ください。

ネタバレなしのゲーム紹介はこちら。

彼女たちの長所を活かした戦い方をして、新しい女の子を仲間にしてあげてください。そして、彼女たちの主に会うことがこのゲームの目的です。一週目は、少女を育てるゲームです。二周目は、彼女を知る物語です

http://www.freem.ne.jp/win/game/6143

非常に音楽やグラフィックが良くて、システムがシンプルなので初心者にも遊びやすいRPGです。なのでごちゃごちゃいうよりさっさと自分でプレイしてみてください。だいたい4時間もあればクリア可能です。



いきなりネタバレ全開のあらすじ(一応反転)

「伊状香織」という女の子が、クラス内で起きていたいじめを止めようとして自分がターゲットになり、悲惨ないじめにあって心を閉ざしてしまった。 心を閉ざしてしまった女の子の中で、彼女の心のなかにいたキャラクターが力を合わせて彼女の心を救いに行くというお話。

まずこの作品が位置づけられる類型である「精神世界からの脱出もの」について

こういう類型は非常に多いですね。パッと思いつくのだとこんな感じでしょうか?多分みなさんもやまほど思いつくものがあると思います。厳密には違うのもありますが。

書淫

いばらの王

いじめられっこ虐殺ゲーム

冷たい校舎の時は止まる

メガテンif

ゆめにっき

AngelBeats!

この類型の作品は以下の6つの要素から成り立っています。

①閉じ込めているのは誰で。

②その理由は何で。

③どういう世界観やギミックを持っていて。

④脱出しようとしているのは誰で。

⑤どういう条件や課題をクリアすれば脱出できて。

⑥脱出した後どうなるか

この類型の作品は①の精神世界が全てであり、究極のセカイ系ということもできるでしょう。「セカイ系」なので「ループもの」や「ゲーム設定」との相性も非常に良いです。


ループもの - Wikipedia

主人公がループをネガティブに受け止め、苦難する姿を描く
主人公がループをポジティブに受け止め、成長する姿を描く
主人公がループを特定の問題の解決に用いる
主人公がループする状況そのものを楽しむ

ループものにしても精神世界からの脱出モノにしても、これらは人生における「壁」や「トラウマ」を乗り越えるための難易度の高さを描くために昔からいろんなギミックとして用いられることが結構多いです。 

そして、この「精神世界に取り込まれる」系は、厳しい現実によって己の前途が真っ暗になったり、挫折やトラウマを経験して心が停滞し、精神世界の内側に引きこもらざるをえなくなったような人がテーマに成ることが多いです。 作品全体でなくとも、こういうキャラは結構登場しますよね。

最近はさらに進化してストレートに「引きこもりを救う話」なんかが出てきてる感じです。


Reincarnationは「直面化」の過程を戦いとして描いている

さて、この作品の場合、「①閉じ込めている存在」と「④脱出しようとしている存在」は同じです。

つまり、自分で自分を閉じ込めているタイプの作品です。結構な割合でこのタイプの場合「復讐」や「欲望充足」タイプになります。つまり気に入らない敵をとり込むことで思うままに復讐したり真相解明を目指す。あるいは理想の世界を構築してその中で納得できるまで生きようとする。

しかしこの作品はそうではなくて、最初から最後までまっすぐ「直面化」(Confronting)を描いている物語です。 情緒もクソもなくネタバレすると「現実のひどいいじめによって心を病んでしまった少女が、自分の心と向き合っていくことで、死と再生を経験する物語」になってます。

その過程がRPGになっています。

この作品は、主人公がいろんな要素にバラバラに砕け散った状態です。その中の一つが目を覚まし、最初は弱々しいながらも、一つ一つ敵を倒すごとに仲間が増えて強くなっていきます。 

一方立ち向かう敵もどんどん強化されていく。こういう「戦い」を通して、自分を苦しめていたものを倒していった先に、はじめて見失っていた自分が見える、という仕組みになっています

自分との対話というのは、そのくらい過酷であり、戦いそのものなんですよね。

このゲームにおける「自分」と「敵」について

味方サイドは「放浪者」「魔女」「兵士」「厨二病」「指揮者」「いばら姫」「勇者」「妖の姫」などいろんな属性を持っています。これは引きこもった彼女が自分の理想や慰めとして産みだしては捨ててしまったキャラクターです。

一方敵サイドは「サンタクロース」や「人魚」といったものから「月と太陽」、それから「雷神」「幽霊」などいろんなものがあります。これは彼女が嫌いであったり恐れているものでしょう。夢や希望を感じさせるものを否定し、夜が来て次の日が来ることを恐れ、その他にも色んな物を嫌って敵として扱っていることがわかると思います。

最初は「味方」サイドを育てて、「敵」に負けないようにする。そんな話です。


この作品の素晴らしい所は「味方も敵も、絶望も希望も自分の中にある」という描き方をしているところ

この作品の素晴らしいところは、単に自分と向き合うことを戦いとして描いているだけではありません。 1周目はひたすらそういうトラウマや苦手なものとの戦いを通して克服していくような話に見えるのですが、それだけじゃない。

この作品には2周目があるんですね。1周めをクリアしただけだと「このセカイを作っていたのが自分であること」だけしかわかりません。自分はなぜこんな世界を作ったのか、自分はどういう状況なのかがわからない。まだなにかが足りない。


足りないのは何か。自分が敵として扱っていたものを受け入れることです。


2周目では、倒した敵を否定しません。敵もまた味方になります。敵もまた自分なんですね。主人公を気遣うようなメッセージを述べます。 敵だと思っていたものもまた自分の中の一部だった。だから自分の中のものを良いもの悪いものとして分けて争わせるんじゃなくて、それもふくめて自分なんだと受け入れる。 ここまで来てはじめてちょっと前に進み出せるかも、と思わせる展開が生まれてくる。



自分と向き合うだけでなく、何かに憧れることで力を出すこともできる。「自分なんてこんなもん」と諦めたくない

そういえば私がこの中で一番早く生まれたのだな。私の気高い精神とこの肉体は全てあなたで出来ている。元の世界にいる私にも、あなたからの愛でできた私を見せてやりたいものだ

主人公が生み出した勇者「エリエール」のセリフ。

彼女は勇気の象徴。もともと「エリエール」はオンラインゲームのキャラクターであり、自分とは違う。でも、このゲームのキャラクターにすぎないエリエールに憧れることで彼女は現実で一度勇気をだしていじめに立ち向かった。 結果としてはそれが失敗で、その失敗によっていじめられることになってしまったけれど、その時の行動自体は間違いだったわけじゃない。

この物語の主人公には、胸を張って生きて欲しいと本当に思う。


自分のイメージだと「3月のライオン」の川本ひなたみたいな感じ。多分、立ち向かえばこのゲームと同じように支えてくれる人も出てくると信じたい。

f:id:tyoshiki:20160416163733p:plain

f:id:tyoshiki:20160416163744j:plain