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『嫌われる勇気』について、タイトル以外に1つだけ覚えておいて欲しいこと

「貢献感覚」という言葉だけは覚えておいてください。この言葉がこの本のキーワードです。

「嫌われる勇気」の中で「嫌われても構わない」と書かれているのはどういう時?

「人が自由を選ぼうとした時、道に迷うことは当然あるでしょう。そこでアドラー心理学では、自由なる人生の大きな指針として「導きの星」というものを掲げます。旅人が北極星を頼りに旅するように、われわれの人生にも「導きの星」が必要になる。それがアドラー心理学の考え方です。この指針さえ見失わなければいいのだ。こちらの方向に向かって進んでいれば幸福があるのだ、という巨大な理想になります。」


「その星はどこにあるのですか?」


他者貢献です。」


「あなたがどんな刹那を送っていようと、たとえあなたを嫌う人がいようと、「他者に貢献するのだ」という導きの星さえ見失わなければ、迷うことはないし、なにをしてもいい。嫌われる人には嫌われ、自由に生きて構わない。自らの上空に他者貢献という星を掲げていれば、つねに幸福とともにあり、仲間とともにある!」

この本を引用するのに「他者貢献」or「貢献感覚」という言葉を使わない人はまず間違いなく本を読んでません。

つまり「嫌われることを恐れるな」という話は単体では成立しません。「他者貢献のため」「自己決断のため」に必要なのだということをわかっていない人がいう「嫌われる勇気」は、アドラー心理学の教えと全く関係ありません。


「嫌われることを恐れないこと」それ自体を正当化することは出来ません。「何のために」はすごく大事だから、みなさんもちゃんと確認しておきましょう。


「嫌われる勇気」はなぜ必要か =幸福の条件である「貢献感覚」を得るため

「嫌われる勇気」は最初から最後まで手を変え品を変え「承認欲求」を捨て「貢献感覚」を持つことこそが幸せの条件だということだけを述べている本です。

「嫌われる勇気」は、この本の目的を達成するためのスタートにすぎません。それ自体がテーマではないし、目的でもない。この本のゴールはあくまで「幸福になるために自分で決断する自由を得ること」「人を幸福にすること」です。だから次回作のタイトルが「幸せになる勇気」なのです。

目的なくただ「どんどん嫌われよう」みたいに言ってる人についていったらダメです。

抽象的だった「嫌われる勇気」の続編である「幸せになる勇気」は具体的で使える話が多い - この夜が明けるまであと百万の祈り



「嫌われる勇気」のあらすじ(興味ある人だけ読んでください)

以前に私が書いた紹介記事から再度引用します。
「嫌われる勇気」01 幸福を感じるためのたった一つの条件=貢献感覚 - お前のことが好きやったんや
嫌われる勇気03 良き承認欲求と悪い承認欲求 - お前のことが好きやったんや


一時的に「他者貢献」を実感できたとしても、それだけで「貢献感覚」ひいてはそこから得られる「僕には帰る場所がある、こんなに幸せなことはない」という感覚(=「共同体感覚」)」が長続きするかどうかはまた別の問題です。


幸福の条件である「貢献感覚」は


①「自己受容」
②「他者信頼」
③「他者貢献」
のサイクルがきちんと循環する場合にしか持続しない。 


「他者貢献」の実感があっても「自己受容」ができてなければこの感覚は崩壊するし、「自己受容」ができても「他者信頼」ができていなければサイクルが止まってしまい「貢献感覚」は持続しません。さらに、このサイクルを回すための潤滑油として「勇気」が必要になる。「勇気」もこのサイクルを回すたびに強化される。


サイクルの話なので、一番最初に一歩踏み出すことが一番むずかしくてだんだん楽になる。そのことを信じて、最初に自分で決断するという一歩を踏み出すことが一番大事。そういう話です。今で言うと「マインドフルネス」を説くようなお話なのです。

この最初の一歩を踏み出すためだけに「原因論から目的論へのシフト」「共同体感覚」「承認欲求を捨てよ」「エネルゲイア的な生き方」「課題の分離」などいろんな話をしていますが、根本としては「他者貢献」こそが生きる意味であるから、そのための必要であれば、他者に判断を委ねず自己決断をせよ(=嫌われる勇気を持て)という話をしている本だと理解してください。



繰り返しになりますが、この本をちゃんと読んでいれば「嫌われる勇気」はあくまで手段であり、目的は「他者貢献を通じて幸せになること」ということを意識しているはず。「なぜ嫌われる勇気を持てるのか」を理解できていれば「どんどん嫌われよう」みたいな乱暴な言い方は絶対にしないはずです。炎上記事を書いてるような人が「嫌われる勇気」「嫌われることを恐れない勇気」を主張するなら、「この記事を書くことであなたはどういう他者貢献ができると思っているのですか?」ということを問われなければいけない。




「嫌われる勇気」という本がベストセラーになったことの功罪

「嫌われる勇気」を持てば、幸せになれる~対人関係に悩まない生き方~:日経ビジネスオンライン

なるべく多くの人が読んでみたいと思うようなタイトルを選びました。

この本は「アドラー心理学」を紹介するための本です。

実際にこのタイトルのインパクトのおかげで、本来アドラー心理学にきょうみない人もこの本を手に取るようになり、大ベストセラーになりました。その結果、アドラー心理学が広まった事自体はとても良いことだと思います。

ところが一方で、ネットは炎上するようなことを書く人間が、自己正当化するためにこの本を読みもせずに「タイトル」だけを自分に都合よく解釈する人がちらほら見られます。炎上するような記事書いておいて、この本のタイトルを自己正当化に使うなら自分でちゃんと読もうよ……。てなわけで、今後明らかに読まずにタイトルを自己正当化に使ってる人を見かけたらこの記事のURLでも貼っておいてください。




「嫌われる勇気」の理解にすごく役に立つと思う2つのマンガ

「嫌われる勇気」とは何か、「他者貢献」とは何か、というイメージが湧かない人は「オフィス北極星」を読んで欲しい。

訴訟リスクというものに無頓着だった日本企業のためにアメリカで一人事務所を開き、リスクコンサルタントとして独立したゴウ、という男の物語。「他者貢献のために自由に決断すること」の孤独と、それ故のやりがいが描かれています。この漫画読んでなかったら「嫌われる勇気」で語られていることが私にはイメージ出来なかったと思う。逆に言えば、この作品を読んでいたおかげで私にはよくイメージ出来た。


「はじめの一歩を踏み出す小さな勇気」がテーマのマンガといえば「ネギま」ですね。作者の赤松健さん自身が、マンガ業界のために「マンガ図書館Z」というサービスを運営するなど貢献されています。

正直「嫌われる勇気」より、この2作品の方がはるかにおすすめです。

私は「アドラー心理学」がそれほど好きじゃないのですが基本的にマッチョ向けだからです。「要は勇気がないんでしょ?」の哲学に満ちている。北風みたいな本です。でも、この2冊は決して押し付けること無く、その勇気の大切さを教えてくれる。なので「嫌われる勇気」を読むのは、まずこういう作品を読んで「私も勇気を出したい」と思えるようになってからでも遅くないと思います。

アドラー心理学についての私の概観 - この夜が明けるまであと百万の祈り