この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです

【スポンサーリンク】

もし超絶美少女女子高生のサイコパスが恋をしたら・・・ 「ハッピーシュガーライフ」

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」あるいは「CARNIVAL」が好きな人は是非この作品を読んで見てほしい。

この作品は一言でいうと「サイコパスの恋愛」

とにかく、導入部分である1話の完成度が非常に高い。この1話だけでも読んでみてほしい(2巻に1話のプロトタイプがあるけれど、全く話の強度が違う)

主人公である松坂さとうは誰かを愛したことがない。愛を知らない。遠目からでも人目を引くような美人だからモテる。みんなから求められ続ける。しかし、どんな言葉をもらっても、何をしてもらっても何も感じなかった。生まれたときから与えられることが当たり前すぎてそこには何も感じないのだ。

そんな彼女は、とある存在に出会って、生まれて初めて心が満たされる感覚を得る。

○○は、どんなものよりも甘い欠片で、
私の心を満たしてくれる。
きっと、このキラキラした感情が愛というものなのね

彼女はこの感情をもっと味わい尽くしたい。際限なくむさぼりたいと思う。そのために最大限の努力をすることになる。



ここまでなら普通の少女漫画の恋愛物語なのだが、一つ問題がある。彼女はサイコパスなのだ。

サイコパス(精神病質)、ソシオパス(社会病質) - この夜が明けるまであと百万の祈り

共感能力と罪悪感がない。反社会的行動への歯止めになるような、うそがばれるのではないかという恐怖感、被害者への同情、良心の呵責、罪悪感にさいなまされることがない。

彼女にとって何かが彼女の「愛の追及」にとって邪魔だとしたら
彼女はそれを排除することに何のためらいもない。どんな困難も、彼女にとってはエクストリームスポーツのようなものでしかない。

彼女は彼女の愛のためにありとあらゆるものを犠牲にしながら、その愛を追求し続けていくことになる。

約束された破滅をどう描くか

私は「ヤンデレ」と「サイコパス」が死ぬほど嫌いなので、この作品の主人公についても嫌悪感が半端ない。

だが、この狡猾な残忍なサイコパス女が、他者を犠牲にしてでもどこまで愛を求め続けることができるのか。そして、その代償としてどのような結末を迎えるのか。その際、彼女が愛を捧げ続けた存在はどうなるのだろうか。

物語は開始した段階で取り返しのつかないところからスタートしている。破滅的な結末は最初から約束されている。その結末においてこのサイコパスが最後に何を思うか。それが知りたい。


サイコパスにとって最も難易度が高いものが恋愛かもしれない

彼女はサイコパスであるだけでなく能力も高い。
彼女にとって人を殺したり、陥れたり、だましたりするのは容易だろう。

だが、恋愛はそう簡単にはいかないだろう。
自分の思ったように人を愛することはできるだろうが、
相手は少しずつ成長して変わっていく。変化を求めるようになる。
ずっと同じ状態にとどめておくことはできない。

自分を本当の意味で愛してもらうためには
ウソ偽りなく自分をさらけ出すようなことも必要になってくるだろう。
しかし、おそらく彼女にとっては不可能なことだろう。

彼女が求めているのは蜃気楼を追い求めたり、
水に移った月を拾うような作業なのかもしれない。

彼女は途中で犯罪が露見して追われたりつかまったりすることは恐れないかもしれない。
しかし、己が求めた愛が破たんすることだけは耐えられないだろう。

「CARNIVAL」の木村学や「嘘つきみーくん」はこの難題になんとか答えを出した。
さて、松坂さとうがはたしてその答えをだせるかどうか。楽しみだ。


この作品で描かれる愛は「暴力」である

・徹底的に人を支配し屈服させ思い通りにしようと願うだとか
・相手の意思を無視してプライバシーを暴き立てようとしたり
・自由を奪って閉じ込めたりとか

そういう行為が正当化され、それが愛だと刷り込まれた人間たちの苦しみがこれでもかと描かれる。

そんなもん、理不尽だったら拒否して否定してふみにじってしまえばいいと今では思うけれど、それが拒否できない間はひたすらその愛という名の暴力にさらされ続けて心がゆがんでいくんだよね。

そうやって暴力的な愛にさらされ続けて苦しんでる人たちが、代償や癒しとして「本物の愛」みたいなのを求めだす。その様子はコミカルに描かれてるけど見てるこっちとしてはグロテスクに感じられてしょうがない。


類似作品

冒頭で述べた「CARNIVAL」「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」のほかにはこんな感じ。

未来日記」の我妻由乃の偏執的な愛。
「セルフ」の主人公のように、求められることに倦んだ主人公。
「レトルトパウチ」のゼノフィリア。
「レトルトパウチ」 ゼノフィリア(赤の他人しか愛せない) - この夜が明けるまであと百万の祈り

クズの本懐」のような「愛」の証明合戦的な要素もあるだろうか。(「カケグルイ」的な要素あるよなと思ったら1巻の帯でカケグルイの作者からの推薦がついててワロタ)

悪の教典」や「僕だけがいない街」の犯人の行動原理は
求めるものこそ違えどこの作品の主人公と通じていて参考になるだろう。

ergでいうならば「暗い部屋」「沙耶の唄」などが当てはまる。
この作品は、そういうお話である。

余談だけど、CARNIVALの主人公も、みーまーの主人公も、本人はサイコパス「ではない」。サイコパスなのは相方である。そんな主人公たちが理性をもってサイコパスのようにふるまうという点が、この系統において圧倒的に優れていると思う。私はどこかで書いたと思うがラノベの中ではみーまーがベスト3に入るくらい好きです。