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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「大日本サムライガール」

「帰ってきたヒトラー」 キャッチコピーは「笑うな危険」 - この夜が明けるまであと百万の祈り

ドイツがこうだとするならば、

現代のドイツではナチズムを「意味するもの」は禁止されまくっているが、ではヒトラーという「それそのもの」が現れた時、実は防ぐ手だてがないのではないのか? 我々(ドイツ人)は今ヒトラーが蘇ってもせいぜいコメディアン扱いくらいしかできないのではないか? という内容。

日本は「そのもの」はタブー扱いにしているものの「意味するもの」への取り締まりは甘い気がする。

なので、そういう存在を「萌え少女」や「アイドル」という記号にしてしまえば意外とタブーのすきをついて国家を乗っ取れちゃうかもしれないよね、というお話し。

そんなわけで「右翼」という概念を超絶美少女にして登場させます。こんな感じ。かわいい。

そして、主人公はその「政治家を目指す少女」をアイドルとしてプロデュースしていき、そこから派生してビジネスなどを行って着々と勢力を拡大していきます。このアイデアって、日本はある意味「帰ってきたヒトラー」のさらに先を進んでると思いませんかwww


イデアだけじゃなくて、美少女ラブコメとしても、経営シミュレーションものとしても面白いです。

とびっきりの美少女で、しかし世間知らずでコミュニケーション能力が弱いヒロイン。そんな彼女は主人公に全幅の信頼を置いています。
そのヒロインをアイドルとしてプロデュースする主人公。あくまで政治家を目指すヒロインとは最終的に目指すゴール地点は違うもののその過程として同じ方向を向いて手を携えながら敵を蹴散らしていきます。この様はまさに「快進撃」であり、読んでてすげえ気持ちいいです。「俺TUEEE」ならぬ「俺たちTUEEEE」ですね。ヒロインとのイチャイチャを楽しみながらすこしずつ上り詰めていく過程はニヤニヤが止まらないです。そんなわけで6巻くらいまでは文句なしに楽しい。





ただね……「もしドラ」でも「グレンラガン」でも「小説家になろう」の多くの作品でも、なんでもそうなのですがここからが、とても難しいんだと思います。ここまでの段階が面白い作品は結構あるんですよね。いろんなスタート地点から、てっぺんを目指して上り詰めていく過程の部分はリアリティもあって本当に面白く描いてる作品は多いんです。

しかし、いざ上り詰めて「責任ある立場にたち」「実際に国家や政治を動かしていく」という段階になると、とたんにぼんやりした展開やご都合主義になる作品が少なくない。なぜなら上り詰める過程は希望があり、ゴールがあり、荒削りでも許されるからいろんな無茶もできる。
しかし、やはりその目指すゴールにたどり着いてからは、そこが「日常」であったり「ルールを作ってそこに収まる」流れになると、完成度やディテールが求められる。この「非現実的な設定を基にした日常」を高い完成度で描写するのは難易度が高くなるのかなと。

この作品も、7巻あたりからはちょっとしんどくなってしまったように思いますね。あまり政治をきちんとやってるなーという印象は受けませんでした。




物足りなかったのは「権力を握った後の右翼少女のヒロイン」の危うさを描き切れたかどうかという部分です。

「帰ってきたヒトラー」はここをばっさり切り捨ててますが思考実験としては本当はここも描かれるべきだったように思います。現代に登場したヒトラーがネットの力で人気者になって、メディアにも取り上げられて、まるでアイドルのようになる。そこまでの過程を面白く描くということはできる。だけれど、その先は? どうやって、どういう流れで政界入りする?どうやって権力を握っていく? どうやって今の政治を描く? そこまでをリアリティを込めて描かなければ、「ヒトラー復活」の脅威を真に想像できているとは言えないのではないでしょうか。

この作品ではその部分をちゃんと描こうとしてるのですが、それでも「右翼ヒロイン」の危うさが感じられない。「主人公との決定的な決別や敵対関係」という部分が十分に描かれたとは感じることができませんでした。なにより「政治家として何かを成し遂げる」という難易度の高い部分が、なんだかあまりにも簡単に乗り越えられてしまったように感じました。

それだけ、「政治」をエンタメとして描くというのはとてもとても難しいのでしょうね、やっぱり。



文句っぽいことをかいてるように見えるかもしれませんが、私はこの作品かなり好きです。

6巻くらいまでは文句なしに楽しかったし、そのあとも政治エンタメとしては物足りないものの、魅力あるヒロインと二人三脚で大きなことを成し遂げるというボーイ(おっさん)ミーツガールという物語としては最後までテンションを切らさずに走り切ってくれたと思ってます。

経済エンタメとしていけるところまで走り切った前作「羽月莉音の帝国」ほどではないにせよ十分おすすめできる作品だと思います。ヒロインの魅力は断然こっちのほうが上だしね!




ところで、エンタメの中で政治を描くという取り組みはやっぱり難しいよねーという話を繰り返しましたが、昨日見た映画「シン・ゴジラ」は、この点で個人的に満足のいく描写をしてくれていたような気がします。
あんまり期待してなかっただけに予想外の面白さでした。また感想書きたいと思います。