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「ライアーゲーム」13巻 自己否定を乗り越えて、その先に自己肯定を目指すには

ライアーゲーム第4ゲーム本選「椅子取りゲーム」の話。

このゲーム中でアベちゃんというキャラがいる。
親に虐待され、自殺を考えていたところをとある宗教に取り込まれた人物だ。


当然ながら、自尊心はとっくに崩壊しており
教祖を妄信し、教祖の役に立つことで自分に生きる意味を見出そうとする。


なによりあまりに傷つけられすぎたから、
「自分が不幸な原因」を納得することを求めすぎた結果、
以下のようなシナリオをインストールしてしまう。

「悪いのはお前じゃない。
 悪いのは悪魔の血を持つ周りの人間たちだ。
 お前は悪魔の血が薄いから生きる価値がある」

「悪いやつ」の存在を仮定し、そいつを攻撃することで自尊心を保つのだ。

自尊心を保つために「悪い奴」を求めずにはいられない人はいっぱいいる。でも、他者批判で自尊心を保つのは修羅の道だ

これを滑稽だと思える人は幸いだ。

しかし、ネットには、この悪魔の部分を「在日」「精神病」「生活保護受給者」などの社会的弱者や、部外者を意味する言葉に置き換えると成り立ってしまう例がいくつもある。主にネット右翼と呼ばれる人たちだ。この人たちが好きな言葉は「愛国」「真実」みたいなやつである。

あるいは「新自由主義者」「差別主義者」「東電」「港区のOL(?)」などの社会的強者側とみなした存在を攻撃のターゲットにする人もいる。主にネット左翼と呼ばれる人たちだ。この人たちが好きな言葉は「当事者意識」みたいなやつだ。


このように日本でいうネット右翼ネット左翼はどちらかというと「何かを守るため」ではなく「何を敵視することで自尊心を保っているか」で分類されるといってよい。より詳細はこちらの記事を読んでほしい。

右翼(国家主義)と左翼(社会主義)は反対概念ではなく、独立概念である - モジログ
世界を上下に分けて下に味方するのが左翼、世界をウチとソトに分けてウチに味方するのが右翼 - モジログ

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ただ、ネット右翼だろうが、ネット左翼だろうが、こういう活動に参加するだけで安定した自尊心を得ることはできない。


たとえ周りからどういわれようと、自分と反対側の存在をたたき続けている間は何かをなしている気分になれる。最近でいうとSEALDsなどが典型例だが、だがその活動がどこかで行き詰るととたんに「自分は何をやっているんだろう」「自分は結局無力なのではないか」「自分のやってることは誰の役にも立ってないんじゃないか」と思うようになる。

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宗教に頼るだけでもちょっとしんどい。

この作品のアベちゃんもまさにそういう状態に陥ってしまう。

教祖を信じて「悪魔の仲間」をやっつける活動に従事している間は、自分のことを疑わずに生きていられた。目の前の相手のことを見ずに全部悪魔だと思い込んでいれば正義の味方でいられた。

しかし「悪魔と思えない存在」が目の前に現れて、根気強く対話を求め、信頼を示してくれるようになることで心は揺らぎはじめ、さらに信じていた教祖が、戦いの中で劣勢になるや否や、自分を虐待した親のように自分を否定し始めた。アベちゃんは今まで信じていたものや自分を支えてきたものが崩壊するのを感じる。

自分を「役立たず!」「死ね!」となじるこえがまた復活する。つまり教祖に従うだけでは逆境に耐えられなかったわけだ。

回りくどい自己承認が生み出す自意識の縛り - Why do you need ...?
デレマス7話 - この夜が明けるまであと百万の祈り

彼女にとっては「信じられる教祖」という存在が必要だったのかもしれないが、それだけでは足りない。

誰かを信じてすがるだけでは、すがろうとする存在が自分を認めてくれる範囲だけでしか自分は何もできないし、その存在が自分をちょっとでも否定しようものならまた価値のない自分に戻ってしまう





「自己否定を取り除く(俺は悪くねえ!)」だけではなく、その先に「自己肯定」をするためには何が必要か

アベちゃんの場合は、もう一つ「誰かに信じてもらうこと」「誰かに頼りにされること」「誰かのために何かを成し遂げる」ことが絶対に必要だった。

ガヤだって、力を合わせれば大きな仕事ができる。
私もきっと、無意味な存在なんかじゃないんだ!

それによって「自分で自分を肯定する」きっかけをつかむことができるようになったかもしれない。(まだ途中なのでどうなるかわからない)


といっても、まだ13巻の時点ではどういう結論にたどり着くかはわからない。この先アベちゃんがどう化けるのかはとても楽しみだ。


参考
嫌われる勇気03 承認欲求を持ってはいけない - この夜が明けるまであと百万の祈り