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この夜が明けるまであと百万の祈り

私が元気づけられた出来事や作品についてのメモ。最近TED聴き始めました

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「金の国 水の国」 いがみ合っていた「国家」が素敵な結婚をする美しいおとぎ話

2016年度の「このマンガがすごい 女性一位」作品です。なので、すでに多くの人が読んでいるとは思いますし、すでに多くのところでオススメされているとは思いますが、本当に素晴らしい作品でした。私もこれは是非読むべき!とオススメしたいです。


ストーリーや設定のすばらしさもあるとは思います。でも、私がこの作品を特に素晴らしいと思うのはとあるワンシーンがとても輝いているからです。このシーンのために全てが構築されている。その構成が美しくて素晴らしい作品だなと思うのです。

この作品は、ひとことでいうと「国と国が結婚する」物語です。

結婚して他人と家族に鳴るということは夢物語ではない。
我慢することや悲しいことは波みたいに押し寄せて、
最初に感じた愛や恋は時間とともにどんどんすり減って違う何かに変わっていく。
だから君は、その時の美しさよりも、一瞬の楽しさよりも、
自分の親兄弟と同じか、それ以上に自分を大切にしてくれる人を探しなさい。


もちろん国と国が結婚することはできないから、実際には国のいろんな人たちがやりとりをするのですが、登場人物が一人ひとりとても個性的でかつ物語を感じさせるしっかりした描写になっており、よくこれだけの人物を一人ひとり魅力的に描きながらしかも1冊に収めきったな、と作者さんすげーすげーって感じます。


A国は金の国(商業国家)。B国は水の国(資源国家)。
お互いがお互いに必要なものを持っているのに、お互いが相手の国を見下し合っていてずっと争っている。協力し合えば、ゆずりあえば、どちらも欲しいものを手に入れられるのに。どちらも、相手を対等な存在だと思っていないから「相手の国に戦争を仕掛け、全てを奪い取ってしまおう」とする。そして、お互いに消耗していく。


しかし、この「協力」がうまくいかないのは、決して相手に対する侮りとか、無理解とかそいうネガティブなものだけが原因ではない。身内を守りたい、「過去」を守りたい。そういう気持ちもあるのです。守るべき大切なものがあるからこそ、よく知らない相手を信じて自分を変えるというリスクを取ることが難しい。

君主たるものは、民の生活をまず考えるものです。我が国の民が路頭に迷うことを思えば、B国に攻め入ることはまちがいではありますまい

わしは失敗した王として名を残すことが怖い。死後百年も専念も腰抜けと言われ続けるのが怖い


そんな両者の関係に変化をもたらしたのは、お互いの国のいたずら、というか意地悪なんですね。

本当に、たまたま、運命のいたずらで、A国の王女とB国の青年が出会って、良い関係を築くことが出来た。そして、B国の青年は自分の夢を追い求め、A国の王女はB国の青年を助けようとがむしゃらにうごいいた結果、誰も想像してない形で国まで動かしてしまう。

ずっとつづけばいいとおもった昨日を少しでも守れるなら、傷つくことなど恐れている場合ではなかったのです。たったそれだけのことなのです。たったそれだけのことなんです。

いつでも難しい方の道を選んでください。後で良かったと思えますわ。

そして、こういう個人の思いが、国まで動かしてしまうんですね。


もちろん現実の国はこんなに簡単に動いたりはしないでしょう。これはおとぎ話です。でもおとぎ話だからこそできる、このダイナミックさはとても魅力的です。




そして、こういうダイナミックな展開だからこそ、一番大事なシーンが輝くのだと思います。


「このシーンのためにこの漫画はあったのだ」と感じる輝く瞬間がこの作品にはある

ところで、私は全体としてバランスが取れている作品はもちろん好きですが、たとえ全体として微妙でも、ワンシーンがすごく輝いていると感じる作品がもっと好きです。このワンシーンのためにこの作品はあったのか、と感じた時、そのマンガを読めて本当に良かったと感じます。

以前とある同人誌に寄稿したことが有りますが、その際も「true tears」のとあるシーンに惚れ込んで、その話を書かせてもらいました。そして、この作品にも、私にとって、とても輝いているシーンが有ります。それがp254~p257ページです。この作品はすべてこのシーンのためにあると言っても過言ではないと私は思います。



この作品は基本的に、B国の青年が主人公です。彼が頑張って二国間をとりもとうと頑張る話です。その覚悟は生半可なものではないです。脇目も振らずに頑張っても、成し遂げることがほとんど不可能な困難な事業です。だから青年はただがむしゃらに前に進みます。王女はそれを陰ながら応援するのみです。

「今更責任を感じないでくださいね。もう国は動き出しました。
 あなたの覚悟が足りないと、大事な人も守れませんよ」
「そうだ…これぐらいでグラついてどうする」(p131~p132)

あっしは暗闇の中にお嬢さんを置いてまでこの道をを選んだんですよ。 (p218~p219)

ずっとその方向で話が進んできて、その過程で青年はいろんな人を犠牲にしながら(少女漫画なのでオブラートに包んではいますが)引き返せない所まで来て、何が何でも目的を達成しなければならない、そういう状況で、主人公はとある選択を迫られます。

このシーンに至るまでの積み重ね、そして彼の選択、この流れがとても美しいと私は感じました。もうね、上手く言えないけど、とにかく読んでみて欲しいです。

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短い作品ならではの、構成が見事な作品でした。くりかえしになりますが、ちょうおすすめ!