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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「約束のネバーランド」 毒親に飼育されて出荷されるだけの運命から逃げ延びよう

個人的評価★4

どれもこれも選び取れるほど世界は甘くないだろう。
「誰一人見捨てない」は夢物語の理想論かも知れない。
不可能だって誰もが諦めてしまう。
だけど、だからこそ、僕も覆したい。諦めたくないじゃないか。

農園という小さな社会で、支配者側に加担し続けること。それだけがこのセカイでわたしたちが生き残る唯一の道なのよ。生き残る道なんて農園のなかにはない。死を押し付け合う日々があっただけ。

プリズンブレイク系の作品。「バトルロワイヤル」系や「理不尽なゲームに巻き込まれる系」と合わせて、タイムリミットや脅威が設定されていて嫌が応にも行動しなければならないし、謎解きも必要になるため、スタート地点では非常に興味を引きやすいですが、逆に言うと魅力のない設定を作ると駄作になりやすく、作者の腕が問われるジャンルです。

そう言われれば「少年ジャンプ」では、このジャンルで駄作を出すと信頼をなくしてしまいかねないせいかこの手の作品少なかったのじゃないかと思います。万を持して登場してきたこの作品、巷の評判通りすごく面白いです!

そして、幸運なことにちょうどいいタイミングで読めました。4巻で一つの節目を越えました。未読の人は、私と同じように4巻まで出た今だからこそ読んで欲しい。

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同系統のマンガとしては

★★★★「辺獄のシュヴェスタ
★★★「ブラッドハーレーの馬車」
★★★「7seeds夏のA組編」
★★★「囚人リク」
☓「食糧人類」

などが浮かびます。システム面では「辺獄のシュヴェスタ」が最も近いです。

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また、「楽園と思わせておいて実は…」というニュアンスでは

★★★★★「新世界より
★★★★ 「魔法少女 まどか✩マギカ」
★★★  「無能なナナ」
★★   「結城友奈は勇者である

などの作品も該当するでしょうか。キリがないのでやめておきますが



本作品は、上記作品と比べて「敵と味方の距離が非常に近い」という特徴があります。たいていプリズンブレイクものは弱者が強者に立ち向かうゲームです。

敵が圧倒的に強者であるために、脱獄の意図知られたらその時点でGAME OVERになるのが基本であり、脱獄を目指すものは「脱獄の意図を知られていない」「メンバーや脱獄手段などの手の内を秘めている」ということを最大の武器として戦います。

もちろんあまりに戦力差が大きすぎるとか、敵が無能すぎると面白くありませんから「食糧人類」なんかは正直全然面白いと感じないのですが、やはりまずは「知られないこと」「その中で戦力を蓄えていくこと」という過程がとても大事になってくることが多いです。


しかし、このゲームの場合、2ヶ月以内に脱獄しないと、主人公たちは「出荷」されて殺される。敵側は、2ヶ月間逃さずに閉じ込め続ければ勝利という構図自体は他の作品と似ていますが、敵が脱獄を計画しているこちら側の正体を知っている。

「証拠」「権限」「信用」がないから出荷出来ないでいるだけだ。
言い換えればどれか一つでも手に入れたら、手のひらを返して出荷してくる!
でもこの状況は、僕らにとって好都合。
「権限」や「信用」なんてそう容易く手に入るものじゃない。
証拠を掴ませない限り、奴は僕らを逃がすしか無い。
互いに肚は判っている。しばし形だけでも共闘と行こうじゃないか。

お互いがお互いの正体や目的を理解していてその上で手の内を隠しながら殴り合いをしている。この距離感はかなり珍しいなと思います。(囚人リクも割りとバレバレですが、相手が強大過ぎるためか、距離感は遠めですよね)


「途方もなく大きいがパラメーターが固定」の存在にこちらが一方的に挑戦する、という形ではなく、人対人の頭脳戦、という感じですね。このため「行動目的」は絶対普遍のものではなく可変でありそれによって戦略や手段がめまぐるしく変わってくるし、相手の目的はわかっているようでわかっていません。 なにより、脱獄した後の世界については全くわからない。このあたりはすごく面白く出来てるなぁと。



というわけでこの作品は続きもとても楽しみです。



その他1 イザベラの「毒親」ぶりがとてもこわい……

この作品には「制御」って言葉が出てくる。
母親であるイザベラは「制御」できなくなったら「出荷」しようとする。

いいか?「制御できない」と思われたら終わりだ。
ママの目的は俺達の満期出荷。制御できるウチは絶対制御したい。
自分にならできる。それがイザベラっていう飼育者だ。

最初は「間接制御」だったけれど徐々に「直接制御」に切り替えて心を壊しに来る。

私はあなたたちを愛している。大好きなの本当に。我が子のように愛しているわ。
だからこそ諦めてほしくてここへ来たのよ。抗うことを。
大好きだから苦しんでほしくない。
私はあなたたちを苦しませたくないの。
(中略)
一体それのどこが不幸だと言うの?
逃げるなんて不可能。お外も危ないわ、絶望がいっぱいよ。
ね、お家の中でみんなで一緒に幸せに暮らそう?

そうして言うことを聞かないで逃げようとすると無表情で足をへし折り、
笑顔で抱きしめながら「かわいそうに」と言う。

思い通りの間はとても可愛がる。しかし求めているのはあくまで制御。
いうことを聞かないなら力づくで従わせる。

毒親とはどういうものかのイメージがつかない人にはこの上ないイメージだと思う。

絶対逃げろよ、クソガキ共!鬼ごっこは得意でしょう? 
逃げて逃げて、生き延びてこのクソみたいなセカイをぶち壊せ!

その他2 「出荷」を前提にするからこそ「合理的な教育」がなされるという皮肉

商品として出荷することを前提にすると、ここまで合理的に「飼育」するんだなあと。

1 のびのび健全に育てる
 発達した脳の育成には、運動も愛情も不可欠。
 のびのび育った感情豊かで健康な子供、それが最低条件。

2 秘密は厳守する
 恐怖で支配しても好みの脳にはならない。 

今の私達の社会って、鬼が姿を隠すこともなく堂々と振る舞っているよね……。
そして、認知度が高まって発見率が増えているという事情を考慮しても
発達障害」「適応障害」になる人がどんどん増えてきているよね。

「国家によっていきなり殺されない権利」という絶対的な点は保証されてるけど
今の社会って本当にこの作品で描かれている世界とくらべてあまりに
子供を育てるという意味においては劣ってるよなあ……。

その他3 精神的支柱を失った後の世界で生き延びる物語

4巻までは絶対的な既定路線であったと思います。

○○○○ではないにせよ、何かしらの犠牲が出ることはこの物語類型上の必然です。
それは「囚人リク」でも「7seeds」でも「辺獄のシュヴェスタ」でも変わりません。
それをここまで引っ張ることが出来たのも、ジャンプという枠組みで人気を得ることができたからなのでしょう。

本当の物語はここからはじまる。私はこの要素を突き詰めた作品として「灰と幻想のグリムガル」が凄い好きです。
約束のネバーランド」が好きな人でラノベも抵抗ないという人には強くおすすめ!

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