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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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社会問題にもなった電通過労死事件が「略式起訴」だけで終わりかけてるのは納得いかないという話

電通過労死事件、書類送検され、略式起訴されて、翌日に判決出たって話あんまり話題になってませんね。

http://www.asahi.com/articles/ASK753HSGK75UTIL00F.html

法人としての電通を労働基準法違反罪で東京簡裁に略式起訴し、罰金刑を求めた。同法の両罰規定を適用した。一方、書類送検された本社の管理職については、処罰を求めるまでの悪質性が認められなかったとして、不起訴(起訴猶予)処分とした

簡裁は今後、電通に罰金を求める略式命令を出すか、公開の法廷での裁判にするか判断する。

とりあえず簡裁がここで略式命令にしたら終わっちゃうの?


違法長時間労働の罪で個人の刑事責任が追及されるのはどんな場合か - Mesoscopic Systems
電通労基法違反事件はこのまま略式命令で終結するのか?

電通さんの場合、略式命令の請求先は東京簡裁であり、これまで(東京簡裁では)略式裁判によって手続きが進行するのが慣例です。しかし大阪簡裁では、昨年11月から今年にかけて、法人の労基法違反事件が4件、略式命令を「不相当」と判断し、正式裁判による審理が行われています(根拠は刑訴法463条1項)。
裁判所も労務事件に対して厳しい姿勢をとるようになりました。なかでも上場会社であるサトレストランシステムズさんの事件では、正式裁判に移行し、法廷での謝罪(経営トップによる)などが報じられ、関西のニュースでも大きくとりあげられました

このまま放置してたら下手したらこの話ここで終わってしまうんですが……。放置してていいんですかね?

この件に関してはかなり時間をかけて捜査が行われてきたのに、いざ裁判となった時に書面審理だけでのスピード判決が出る略式裁判で終わってよいのだろうか。そもそもなんで略式起訴なんだ・・・・・・というのがよく分かってなかったりします。

みなさんにも考えてみてほしいので、今までの流れを簡単に振り返ってみましょう。


2014年に過労死等防止対策推進法が施行

「週60時間以上」働く人を5%以下にーー厚労省「過労死防止法」大綱の意義は? - 弁護士ドットコム

過労死防止法は理念法です。一日の労働時間の上限など、具体的な労働条件を直接規制するものではありません。この大綱も、そうした意味で限界があります

今後数年間、国はこれに基づいて防止対策を推進し、毎年その結果を『過労死白書』のような形で国会に報告することになります。政府が具体的な数値とその期限を掲げる以上、国はその達成のために具体的な取り組みを行うとともに、毎年その進捗状況を確認していくことになります。


2015年12月に女性社員が過労自殺

2015年4月、電通に入社。11月上旬にうつ病を発症したとみられ、12月25日に都内の社宅から投身自殺した。労災と判断した三田労働基準監督署は、発症前一カ月の高橋さんの残業時間は月約105時間に達したと認定。「過労死ライン」とされる月80時間の残業時間を大きく上回っていた

これにつき、過重な労働実態だけでなくセクハラなどの問題においても女性社員ののツイッターログが残っていたことで、問題が顕在化。

過労死認定された高橋まつりさんのTweets。 - Togetter


2016年は電通の不祥事が多発したこととあわせて企業体質が社会問題化

また2016年には電通の不祥事が多発しており、これが合わさって電通の企業体質が大いに問題になりました。

上で書いているとおり、女性が自殺したのは10月ではなく、問題が騒ぎになったのが10月。女性が自殺してから問題とされるまで10ヶ月間放置されていたわけです。今回の裁判の結果も、このまま放置されちゃうかもしれないなと思うとちょっと怖いですね。



2016年10月14日 立ち入り調査実施

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201610/CK2016101402000249.html

従前、東京労働局や配下の労基署等が電通に対して「立ち入り調査」を行っていましたが、これは「行政取締法規」としての側面から。今日の「強制捜査」は、これではなく、さらに踏み込んで、刑事訴訟法に基づいて裁判所に「捜索差押令状」を請求して行った正式の捜査と思われます。根拠条文は労基法102条です。

電通の過労問題は「重大性」「悪質性」の両方に抵触

電通で繰り返された「過労自殺」、25年前にも起きた悲劇の過酷な実態 - 弁護士ドットコム
電通過労死問題、書類送検の可能性は? 「重大性」と「悪質性」がポイント - 弁護士ドットコム

悪質な事例については書類送検(司法処分)し、経営者らの刑事責任を問うことがある。2015年には靴小売のABCマートやクレジットカードのJCBなど有名企業も労働基準法違反で書類送検されている。

「重大性」と「悪質性」がポイントになるという。
①「重大性」は過労死を含む死亡災害の有無や、違法な労働の広がり具合などが対象。重大性については、2013年に病死した男性社員(当時30歳)と2015年に自殺した女性社員・高橋まつりさん(当時24歳)に対し、それぞれ過労死が認定されている点が当てはまりそう。

②「悪質性」は是正勧告の回数などで、勧告を受けた後に提出する「是正(改善)報告書」に虚偽記載があれば、より問題。後者の高橋さんについては、遺族の弁護団によって過酷な労働環境が明らかになっている。

電通も労働環境改善に本腰を入れだすも遅きに失した感

初動でも対応してますよというパフォーマンスはありましたが、表面的なものにとどまり、むしろ批判的な発言をした人に制裁的な処分が下されるなどブラックぶりをアピールすることになったりしていました。

http://light-shade.net/post-1458
この記事ちょううさんくさいですけどね……

電通、本日付で「電通労働環境改革本部」を発足 - ニュースリリース一覧 - ニュース - 電通
電通、労働環境改善に70億円投資 独立監督委を設置 :日本経済新聞



4月25日 違法残業疑いで書類送検=電通の労働環境の悪質性の高いことが確認された。

違法残業疑い 電通を書類送検 厚労省 :日本経済新聞

「労基署が調査をした事案で送検されるのは統計的には1%以下で、送検されることは希

厚生労働省は25日、労働基準法違反の疑いで法人としての電通と名古屋など3支社の幹部3人を書類送検した。全社的に違法残業が常態化していた疑いが明らかになった。厚労省としての捜査はこれで終結し、今後は検察による刑事処分の判断に移る。


というわけで、かなり捜査のほうはガチでやってる感じがあります。

にもかかわらず・・・・・・


東京地検が労働基準法違反の罪で電通を「略式起訴」

[http://www.jiji.com/jc/article?k=2017070601123&g=soc

略式起訴なので、基本は書面による審理になります。当然経営者や当時の上司も含めて裁判の場には立ってない。
これで終わりにして良いのかな。


翌日7月7日に不起訴(起訴猶予)処分

【電通過労自殺】高橋まつりさん母 電通上司の不起訴「納得できない」 - 産経ニュース

高橋さんは、書類送検されたまつりさんの上司の男性幹部が不起訴処分(起訴猶予)とされたことについて、「この上司が労働基準法違反の指示をしていたことは明確であり、刑事処分が妥当であると考えていたので、検察官が上司個人を不起訴処分としたことには納得できません」とした。
その上で、「入社してわずか半年の新入社員に対して、正社員に登用した月から連日の深夜労働や徹夜勤務、休日出勤をさせたことは絶対に許せない、悪質な行為であり、上司個人が罪に問われないことは、誠にやりきれない思いです」と訴えた。

そりゃ無念だろうと思います。
とはいえ、法律上や過去の事例を見ると、たしかに判決が極端におかしいというわけではない。もともとこういうレベルの判決が下りやすいのです。


さて、これについてみなさんはどう考えられますか?