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「ラブデスター」  デスゲームものには主人公の魅力と運営の誠実さが大事だと分かる作品

個人的評価★0.5(他人にはオススメしません)

デスゲームものについての私見


デスゲームは「まっとうなスポーツもの」で人気作を作るのが難しくなってきた時代の妥協策だと思っています。「邪道なスポーツモノ」だと思っています。

熱血スポーツものだとなかなか読者を引きつける作品が難しい。同じルールで同じスポーツを扱うと過去の名作が壁となってしまう。

黒子のバスケ」や「テニスの王子様」という例外は存在するにしても、基本的にはほとんど成功できない。

だから「スポーツもの」として新しいところにチャンスを求めるしか無い。

そうしていろんなスポーツジャンルのマンガが生まれたり、かるたやクイズなどでスポ根をやったりという工夫が生まれた。

ただ、既存のスポーツですら説明が難しいのに、マイナーなスポーツやマイナーな競技だとなおさら描くのは難しい。

だからわかりやすくて読者を惹きつけやすい「都合の良いゲーム」を作れば良い。

面白いゲームを作ることができれば、主人公たちが努力して凄いやつになる過程が無くても作品が作れるのではないか?

……そんな感じで生まれてきたのが「デスゲームもの」というジャンルだったのではないかと思います。




つまり、デスゲームものは王道のスポーツ漫画から少し外れたところで勝負してる「ちょっと邪道なスポーツもの」だと思うのです。

このジャンルでは今のところ「カイジ」と「LIAR GAME」が圧倒的に強いです。というかこの2作品を除いてほとんどゴミばかりです。

大事なのは、LIAR GAMEが示しているのは、「ゲームの面白さ」も武器にはできるけれど、やはりキャラの魅力、ドラマツルギーは必要だということです。そしてもう一つ、いろんな劣化作品を見ていて思ったのはもう一つ「運営の誠実さ」も必要だってことですね。

LIAR GAMEは、ゲーム自体は無茶苦茶なものが多いですが、他の作品とくらべて分かる通り、運営自体はものすごいフェア、真摯にやってるんですね。(最終巻を読めばその理由もわかると思います)

そこを抜かしてしまうと「なんでもあり」になってしまう。実際に「なんでもあり」であり、しかもその「なんでもあり」が主人公に対しては都合よく働くため、もう本来の趣旨とまったく逆の「俺TUEEEE」物語になってしまったものが多数あります。


長くなったのでまとめると、デスゲームの質を担保するためには

①運営が常識はずれなことをするのはいいが、なんでもありじゃなくてちゃんと「憲法」的な制約がある
②主人公たちは能力や魅力がちゃんとある

という2点が絶対的に必要だと思う、ということです。


この話がしたかっただけで、「ラブデスター」自体はまぁどうでもいいです


さて、「ラブデスター」は上記2つの要件についてきちんと条件を満たせていたかというと……
最初は期待してたのですが、惜しいけどやっぱりダメ、という印象ですね。




「運営」に対して「愛」を示すことができればクリアできるという変わった趣旨のデスゲーム

この作品は「もし正解するカドのヤハクイザシュニナが、愛を研究するためにデスゲームを開催したら」みたいな副題をツケたい作品。粗製乱造が目立つデスゲームもののなかでは比較的まとものような気がする。

君たちを下等たらしめる愛、その正体を暴かねば我々にも悪影響を及ぼすかもしれない。

そこで、私に親しい君が、愛を知らぬ君が愛に目覚めれば、
君を通して私も嵐を体験できるかもしれない…!
嵐が見たい!すべてを吹き飛ばすほどの嵐を!

1巻は面白かった

・プレイヤーが他の誰かに告白して両想い状態が成立したらゲームクリア
・告白に失敗したら両者ともに死亡
・1ヶ月以内に告白しなかったら時間切れで死亡

というシンプルなルール。

デスゲームものではあるけれど、ボス側が真面目にプレイヤーに向き合ってるのが珍しい作品。そのため、「序盤でちゃんとゲームクリア者が出る」

こんな当たり前のことが、デスゲームものでは珍しい。そんなこともあって、2巻以降に期待したけれど2巻以降は微妙かなぁ……



「デスゲーム」の設定がひどいことと、運営がまともであることは両立できると思うしさせてほしい


大半のデスゲームものの何がいやかというと、「ちゃんとしたゲームを作ること」が目的じゃなくて「主人公たち以外を殺すこと」=「生き残った主人公TUEEE」という演出が目的になってることなんですよね。
だから、主人公たちを勝たせるためにイレギュラーをたくさん発生させたりあまりにも完成度が低いゲームをやらせたりする。もともと状況が理不尽なのにそれをやられたらすぐ醒めてしまう。

ソシャゲでもそうでしょう。運営が恣意的であったりザルであったり、主人公に極端にボーナスがつくやつ不公平さを堂々とやられるとやってても面白くない。理不尽なゲームだからこそ、ルールは厳格にやってほしい。その最低ラインを守ってくれてるだけで結構安心できる。


この手の作品で圧倒的に評価が高いLIAR GAME」の運営はルールをしっかり守っていた。それでも作者の力量があれば面白い作品は作れる。物語のために安易にゲームのルールを捻じ曲げるようなことはしないで欲しい


テンプレが協力すぎてやはりその壁を崩すのは難しいのかなぁ……

1巻はやるじゃん!と思ったけど2巻以降は他のテンプレに近い展開が続いてしまう。ちょっともったいない。

例えば2感では恋愛促進のために「肝試し」イベントを行うのだけれど、これがまぁいかにもテンプレ的な展開。本当に恋愛成立を目的としているなら「時間制限による死」は必要ないはずだが、結局そういうふるい落としルールを入れることで大量の死者が出る。

また、チープなデスゲームものにありがちなやつで高校生たちがクズばかりなところは読んでてちょっと萎える。「仲間が異常に無能であったり、裏切り者が出て足を引っ張ることでリスクが発生する」というのはリアルと言えばリアルなのかもしれませんが、こういうゲームはすでにもう山ほどでてるんだから、いい加減そこのテンプレから脱出して、しっかりゲームとしてのレベルを高めていって欲しいです。

テンプレの害悪1 主人公が平凡

お前は気に入らない。
会長気取りのくせに、綾鷹のように成功率を上げるでも、敵を殺ろうとするでもねぇ。
自由だ何だと言って結局何もしてねぇ腑抜け野郎だ!

とにかくテンプレの中でもっと害悪なのが「④主人公が平凡、善良、無条件に仲間を信じる」ということ。とにかくここが足を引っ張ると、ほかがいくら良くてもダメになってしまう。

この作品も、主人公が「全員が誠実であることを前提」に作戦を立てる。理想主義者なんですね。でももし本当に全員が誠実なら、リーダーそのものが不要なんですよ。そういう作戦を立てること自体、責任放棄に等しい。そして、「神様の言うとおり」みたいな作品は、この主人公の甘さを、誰かに押し付けて主人公を来残らせ、それでいて主人公は仲間の死に涙は流すが全く成長しない、というのを繰り返す。こういうのって、エンタメにしても良くないと思う。せっかくデスゲームで、しかも主人公にリーダー役をやらせているのだから、そのリーダーとしての成長みたいなのを描いて欲しい。
すでに「自殺島」「トモダチゲーム」「ダーウィンズゲーム」「出会って5秒でバトル」のようにここから脱している作品もあります。こういった作品がもっと増えてきてほしいなと思います。

この作品では主人公の振る舞いが腑抜けすぎた結果、支持が落ちて一回違う人間にリーダーの座を奪われるものの、そいつを失脚させた後は信を問われなくなってる。民主党政権後の安倍自民党かよ……。



ひどいことをした「みんな」がすぐに心変わりにして許される展開は一番嫌い

この手のデスゲームもので本当に多いのが、「集団心理に寄って誰かをみんなでいじめていた」のに、真実が明らかになったらすぐにテノヒラクルーして、それに対して謝罪すら無い、という現象。「君に届け」ですらこの現象が発生していたのだけれど、わたしこういう描写が本当に嫌いで、マンガが読者に与える悪影響の話するならこれこそまっさきに問題にしたい。


主人公がバレンタインイベントにおいて最後の最後までチョコを受け取ろうとしないのはナンセンスすぎる

自己満足のために、自分にチョコを渡そうとしてくれた人間を殺すとか、浮気するより遥かにひどいだろ。意味がわからんよ。


自由恋愛 VS 見合いという設定は結構好き。

なんか結局自由恋愛が勝つみたいな展開になってるけど、この状況ならむしろお見合いは大いに有りだったと思うので、そういう時に既存の価値観を前提にされるとなんのためのフィクションやねん、ってなりません?



いろいろともっと面白くなりそうな要素は多くあると思うのですが、なんというかもったいない作品だなぁという印象です。


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