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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「メイドインアビス」   「プラネテス」が好きな人は絶対に読むべき作品

評価★★★★(個人的評価★★★★)

闇すらも及ばぬ深淵に。
その身を捧げ挑むものたちに。
アビスはすべてを与えるといいます。
生きて死ぬ。祝詞祝福のそのすべてを。
旅路の果てに何を選び取り終わるのか。
それを決められるのは、挑むものだけです。

とにかく絵がすごい

ストーリーとしては神曲の地獄巡りと同じです。

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©つくしあきひとメイドインアビス」4巻

https://ameblo.jp/kosmosskene-biosparodos/entry-12216318197.htm

我々に馴染みのある作品としては「闘神都市」「風来のシレン フェイの最終試験」みたいな感じ。とにかく様々な障害を乗り越えながら地下にどんどん潜っていくのが目的になります。
ストーリーはそれだけといえばそれだけです。

ですが、とにかく絵が美しい。作者の想像力から紡ぎ出される美しい絵や生物たちを見ながら、主人公たちがこの過酷な世界を実際に旅する様子をハラハラしながら見守る作品です。

絵柄はものすごい可愛いですが、比較すると背景として描かれるアビスの世界の自然は壮大で美しく、強大で、そして残酷です。

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このアビスにおいて、人間は万物の長などではなく、捕食される側の弱い生物の一つに過ぎません。

ですから、主人公のリコが下層を目指す旅はひたすらに過酷です。

第7層のうち、第3層より先はベテランでもまず生き残れない。しかもリコはまだ子供たちで探窟家としてはほとんど新米。しかも、このアビスでは「上昇負荷」という呪いがあるため、一定の階層より下に潜ると生存できません。つまり後戻りも聞かない一方通行。


4層ですでにあっさりと瀕死の状態に追い込まれながら、「奈落の至宝」であるレビという機械人間の力に助けてもらったり、途中で仲間になったナナチの力を借りながら、なんとか下層を目指します。

そういう意味で言うと、途中からは「ICO」のような作品として見るべきかもしれません。レグが、無力なリコを守りながら、なんとか目的地まで彼女をたどり着かせる。そういう側面もありますね。

「守るべきものを、見失うな……
 ヒトとしてどうするべきだとか
 探窟家の誇りだとか、僕はそういうのじゃなくてい。
 見失うな!」

リコがこのあと覚醒するかどうか、そのあたりも楽しみです。



黎明卿ボンドルドと「プラネテス」のロックスミス

私はこの作品読みながら「プラネテス」をすごく思い出しました。プラネテスは宇宙という上目指す物語であるなら、こちらはベクトルが地の底という下を目指す物語になっていますが、どちらも「見知らぬ世界を目指す」というロマンに囚われた人間たちの物語になっている。

両作品とも、主人公自体がロマンに溺れたバカとして描かれています。主人公もたいへんなロマンバカです。

リコはさ、お母さんに会いに行きたいんじゃなくて、
お母さんみたいになって、一緒に冒険がしたいんだな。
とっくに本音が建前を越えてるじゃんか

ただ、このロマンはどこまでも肯定されるべきかというとそうではない。両作品ともに主人公よりもずっとロマンがいきすぎて、逸脱した人物が存在する。


それが「プラネテス」においてはロックスミスであり……

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プラネテス・ロックスミス問題について。過剰な「わがまま」は力に通ず - 見えない道場本舗
【ブログ読書感想文】「プラネテス」のロックスミスさんをテーマに、「責任の取り方」について考えてみる。: 不倒城


この作品では、リコの母親であるライザやボンドルドなどが該当するでしょう。

良き伝統も、探窟家の誇りもまるごと踏みにじって夜明けをもたらす。まさに「黎明卿」だ。

俺も今までぶったまげるような原生生物や
狂気に触れた探窟家連中にも出くわしてきたがよ。
ボンドルドにあったときの印象はどれとも違った。

得体の知れない何かが、仮面をかぶってヒトの真似事をしてるんだ。
奈落に怪物がいるとするならおそらくああいうのを言うんだ。


5巻ではボンドルドが自分のロマンを追い求めた結果
行ってきた非人道な所業の数々が描かれますがまぁ、かなりえげつないです……。

喜びしか知らぬものから祈りは生まれません。
生を呪う苦しみの子……君にしか出来ないことが必ずあります。
君の名はプルシュカ。夜明けの花を意味する言葉です。
パパです。 私がパパですよ。

プルシュカ……好きなものが出来たのですね。
プルシュカ。たった今から、君の世界は変わってゆきます。
生の全てを呪っていた君が、最初の喜びを見つけたのです。
これからの一歩一歩が君を作ってゆくでしょう。
今日が君の誕生日、君の冒険の始まりです。

「ねえ、パパ。あたしが助けてあげよっか」
「なんとも頼もしい。共に参りましょう。君とならきっと越えられない夜などないはずです」
「あたしは夜明けの花。パパの特別だから、パパを特別にしてあげるんだ」

いたい…
いたい…
いたい…
いた…い…
いたい…
いたいのが…ふえてく…
あたしのいたみがぱぱのちからに変わっていく

それについて、リコはこう表現しています。

私は…ロマンはわかるのよ。
あなたはこれっぽっちも許せないけど


ロックスミスと違い、この作品ではリコたちとボンドルドは直接闘うことになりますが、やはりこういう人間は、最後の最後まで絶対に変わらない。人間の道徳という観点で考えるなら最悪では有るのだけれど強烈な個性ですよねこれ。多分これからも忘れないキャラクターでしょう。



こういう強烈なキャラクターとぶつかりあいながら描かれる物語は、他にない力強さを感じさせます。結構読むのしんどいですが、連休の日などにぜひ読んでみてください。