この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです。 ※記事を読まずにはてなスターを押して回る行為はお断りしております。

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「BANANA FISH」と元ネタ「BANANAFISHにうってつけの日」の関連について

BANANA FISHアニメ化とかまじか。
うろ覚えだからまた読み返さなきゃ(使命感)

と、読み返す前に思い出しながらちょっと語ってみます。

私は漫画の感想を普段ネタバレとか一切気にせず書いてますが、さすがにこの作品はネタバレなしで体験してほしいので、あえて書いておきます。

ネタバレ注意! 全部原作読み終わってから読んでね

BANANA FISH」はサリンジャーの「BANANAFISH日和」が元ネタ。

この「バナナフィッシュ日和」は20ページくらいの短編なので読んでおくといろいろと捗ります。

「奴らはね、バナナがたくさん入ってる穴のなかに泳いでいくのさ。入ってくときはごく普通の見かけの魚なんだ。けどいったん入ると、もう豚みたいにふるまう。バナナの穴に入って、七十八本バナナを食べたバナナフィッシュを僕は知ってるよ」。彼は浮輪とその乗客を水平線に三十センチ近づけた。「当然ながら、そんなに食べたらものすごく太っちゃって、二度と穴から出られなくなる。ドアを抜けられないのさ」

んで、サリンジャーの他の作品とかと比較して

・バナナフィッシュ=現代社会に生きる人々、あるいは主人公
・バナナ穴=(戦争・虚栄心など)狂気に満ちた現代世界
・バナナ熱=狂気・とくに常識や通念などに影響されて固有の感性を喪失した心的状態

みたいな分析がされてるやつですね。
こんな分析をする必要はないので、とにかく一度読んで見ると惹き込まれると思います。


以下は、BANANA FISHを最低でも1回最後まで読んだ後の人向け

んで、作品ではあえて「バナナフィッシュ」はただの敵側の陰謀の名前、ってことにしてますが、
オタクなら当然「バナナフィッシュ日和」の物語と「BANANA FISH」は重ねて読みますよね。

※初めて「BANANA FISH」を読むときにこの読み方をすると面白さが大いに削がれるので厳禁!

シーモアとアッシュを重ね合わせるだろうし、シビルと英ニの存在を重ね合わせるよね。

①主人公そっちのけで「妻」と「妻の母親」との会話
主人公=しーもあ
妻 =みゅりえる
妻の母親

シーモアは妻のこと愛してるし、
妻も主人公のことを理解できないまでも受け入れて愛してるんだよね。


シーモアとすごく話がはずむ幼女シビル
シビルは幼女だけれど、シーモアを好きな気持ちは一人前。
どっちも話が噛み合ってないというか、
シビルはシーモアの言ってること全然理解できてないんだけれど
それでもシビルはシーモアのことが大好きで肯定してる。
二人の間には明確な壁がありながら、
それでいてナンセンスな言葉を重ねながら、なんか通じ合ってる。

このあたりとか、めっちゃ英ニとアッシュぽいよね。


③「バナナフィッシュ」の話
この話をしてる時点でシーモアはすでに●●するつもりだったのか、ってのは全然わからない。

ただ、とにかくシーモアは恐ろしく優秀で、知識がある人間であり、
もともといたファミリー(グラス家の長兄)では慕われるような存在だった。

だから「知識」という食べ物を貪欲にとりすぎて、
現実の世界へ戻ることのできなくなったばかりか
あまりに強くなりすぎてしまった自我に苦しんでる、という状態。


アッシュはIQも高く美貌も備え、度胸もあってリーダーシップを発揮する完璧青年。
それでいて、内面はボロボロに傷ついているという設定なわけだけれど。
やはり通じるものを感じるよね。
別にこれがシーモアの解釈というわけでは無いだろうけれど、
吉田秋生さんなりに、シーモアを意識してないわけはないと思う。



シーモアがシビルに「冒険」をさせる

シーモアとシビルの二人は、その与太話を元にバナナフィッシュを見つけに、海へ入る。
シビルを浮き輪に乗せて、大きな波が襲ってきたときに
シーモアは浮き輪を上手く操作してシビルを助け、波越えをさせる。


アッシュもまた、「バナナフィッシュ探し」で無垢な英ニを成長させる。
まぁこっちはすごい血なまぐさいけど。


⑤妻よりもはるかに強いつながりをシビルとの間に感じるシーモア

シビルは、波の中にバナナフィッシュを見つける。
バナナフィッシュは架空の生き物で、シーモアの頭の中にしか存在しないはず。
そのバナナフィッシュが、見えるわけがないと否定するけど、
シビルは確かに見えた、しかもバナナを6本もくわえているところまで確認したという。
シビルはシーモアの思っていたイメージよりも鮮明に、シーモアの内面をとらえた。
それを聞いたシーモアはシビルの足にキスをする。

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吉田秋生 「BANANA FISH」)

アッシュは自分の心が傷つきすぎて、自分では直視できないし
傷ついてるだけじゃなくて人殺しとかしまくってるから今更許しを求めることも出来ない。
そういうところまで含めて、キリスト教的な観点とかなく、ただ友達として受け入れる英ニ。
このあたり、別に私は全くBLとか感じなかったけれども、
まぁでもこれが女同士だったら私も「尊い」とか言ってたと思います……

もうこの段階で英ニくんはひどい目にだいぶ合ってるし
途中でアッシュを怖がったりもしたし、必ずしも無垢ではないんだけれど、
それでもこの時の英ニはアッシュから逃げないよね。 



⑥感情を制御できなくなるシーモア
シビルの足にキスをした後、あわててホテルの部屋に引き上げて、悶える。
自分と世界を共有してくれた初めての、そして恐らく世界でたった1人の女の子と今になって出会った衝撃は大きく。シーモアは猛烈に感動し、同時にいたたまれない気持ちにさいなまれていた。
よりにもよって、なぜ新婚旅行の最中に、出会ってしまったのか、というやつ。


このあたりでアッシュとシーモアが大きく分岐する。
年齢違うし、アッシュは奥さんはいないし、方向性もここで逆に進む。
アッシュに執着し続けたマフィアのボスがまぁアレかもしれないけど。


⑦そして話の終わり
シーモアは部屋に戻り、トランクの底から拳銃を取り出し、ベッドに腰掛けて
となりで眠っている女性(つまりミュリエル)を一目見ると(以下略)



多分、みんなだいたい同じようなことを考えながら読んでたんじゃないかと思うけどどうでしょうか?
こういう読み方は邪道だから、一周目は何も考えずに楽しんでる人のほうが絶対に面白いと思う。

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ちなみに、シーモアについてはこっちの本を読むといろんなことがわかるので合わせて読むのを強くおすすめ。

大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア-序章 (新潮文庫)

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蛇足。
もちろんBANANA FISHは大好きですが、終わり方については美しいとは思うけど好きではないよ。
正直、私はあんまり乙女回路が強くないので、最後の終わり方では圧倒的に「花咲ける青少年」のほうが好きです。