この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです

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Under the Rose春の讃歌 10巻

評価★★★★(個人的評価★★★★★)
最後のページ見て、思わず涙が出てしまいました…… 彼女はいろいろとひどいことをしたけれど、やはり可愛そうな女性で、とても悲しい。

過去の本作品について書いた感想記事へのアクセスが急に増えてたからチェックしてみたら、1年半ぶりに新刊が出ていたのを知り購入して読んだ。
……のはいいんだけど今読むにはキツイ…ほんまにキツイ。まさにこの作品は、貴族の館の中でネットで話題になっているパワハラセクハラのオンパレードだからだ。

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この作品は、「エマ」と同じく19世紀の英国を舞台に、ある貴族の家庭の物語を描いている。

器量が良すぎて不採用続きだったレイチェル・ブレナンが、ロウランド伯爵家の家庭教師(ガヴァネス)として採用されるところから物語が始まる。牧師の娘として厳格な倫理観の持ち主であるレイチェルは、妾や庶子を持つアーサーに強い不快感を示すが、アーサーの子供達に対する深い愛情を知り、子供達に理想的な家庭を与えるためにアーサーと正妻であるアンナの仲を取り持とうとする。しかし、奇妙な均衡を保っていたロウランド家はレイチェルの努力によって徐々に歪みを露呈し、レイチェル自身も押し殺してきた自らの心の闇に苛まれるようになる。

8巻の時点でもう家庭崩壊しまくっていたわけだけれど、貴族の家の家庭崩壊というのは、その家族だけの問題ではなく、使用人たちにも影響する。暴君として振る舞う母親によるパワハラや愛情や教育が行き届いていない貴族の子らによるセクハラ、が吹き荒れる。 

家庭教師レイチェルは、それにまっとうな倫理で立ち向かおうとするわけだけれど

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歪みながらもなんとか機能していた家庭を壊そうとした人間として、立ち向かおうとした母親だけでなく使用人からも白い目で見られ、◯◯◯されたりと散々ひどい目にあう。

彼女は被害者なのに、彼女は美人だったし、他の使用人よりは待遇が良かったから、身体を売って館の主人に取り入っているなどの口さがない誹謗中傷にもさらされる。(もちろん比較してよいものではないが)ネットにおけるセカンドレイプとかいうのが生易しく思えるような状況で、それでも彼女は「子どもたちを守ろう」「自分の信じていた倫理観を守ろう」と頑張っていたが、じわじわと傷ついていき、ついにこらえていたものが決壊する。それでもなお、様々な事情から、やめることは出来ないし、その被害を誰かに訴えることも出来ないのだ。完全な生き地獄である。

実際、子どもたちのために頑張っていたのに、とどめを指したのが子どもたちの無邪気な言葉で崩れ去るブレナンの姿は本当につらい。

何が正しくて、何が間違っているのか。
このいびつで美しい、このロウランドの中では
本当の神の教えも、当たり前の善悪すら 私には……

前にも書いたけれど、最終的な結末を「Honey Rose」を読んで先に知っているから耐えられるけど、かなりしんどい。このあと彼女が立ち直れるのだろうか……。




また、こういうパワハラセクハラの被害にあって、しかも泣き寝入りをしなければいけないのは当然彼女だけではない。場合によっては文字通り「抹殺」されたメイドもいる。10巻に出てくるエピソードはこんな感じだ。物語の中盤で、貴族の息子であるアイザックに、勇気を出して忠告をしたメイドはいつのまにか館からいなくなっていた。アイザックはその後、レイチェルの教育や触れ合いの中から、いろいろ学習して思いやりの心を使用人にたいしても持つようになるが、そんなアイザックがメイドと再会するシーンがある。

「あれ?俺の部屋係だよね」

「人違いです」

「え?そのくるくる前髪、見間違えないよ。
 前はグレースの部屋係だった印だ。
 待ってよ、なんで急に、俺の部屋の仕事しなくなったの?」

「失礼します…!」

「ごめんなさい。
 俺、もういたずらとかやめるから。
 虫とかカエルとか持って帰るのやめるから。だから……」

「ぼっちゃん、私はロウランドを首になったんです」

「なんで……」

「私が使用人の心得を忘れて、坊っちゃんに失礼な口をきいたからです。
 坊っちゃんの部屋係として私はふさわしくなかったからです。
 ミス・ブレナンが、ミセス・マージにとりなしてくれて
 私は、母の名前で別人として館の外で使用人の世話をする下働きに慣れました。
 坊っちゃんのお世話係だった、お館の使用人の私はもういないんです。」


「そんなの、おかしいよ。
 叱られることをした俺が悪いんだ!戻ってきてよ!」



「ぼっちゃん、分かってください。
 私は村に祖母がいて、心配だから遠くでは働けません。
 仕事がなくちゃ生きていけないんです。
 私を思いやってくださるなら、どうか私のことは、忘れてください」

こんな感じの描写がたくさんあって、この時代の話に現代の私が口出しをできるものではないかもしれないが、それをおかしいと思い、立ち向かおうとしたレイチェルがひたすら悪し様に言われるのは怖いですね。

しかし、ではパワハラをしまくっている女主人のアンナが絶対的な悪かというと、
彼女は彼女でめちゃくちゃ可愛そうな境遇の人間なんですよね。(7割くらい彼女が悪いけど)
これは重大なネタバレになるからやめておこう……。



そんなわけで、私がこの作品の感想書く時、いつも読んでてしんどい、しか言ってないような気がするのだけれど、どうしても彼女が報われるシーンが見たい。 なかなか新刊が出ないのもしんどいけれど、なんとか最後まで見届けたいなと思います。



この作品は好きなので、毎回感想書いてるなー。
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