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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「子供を殺してくださいという親たち」 「最貧困女子」とあわせて読みたい「最難の精神病患者」たちの姿

私の仕事は「決断」を提供することです。息子と心中するとか、私しかいないとかそんな「決断」はまともじゃない。お母さんがまずスべきことは、あの医者に見切りをつけることです。そして、Tくんとお母さんの命を助けてくれる別の医者を探す。それが私の今の決断です。

「絶望に効くクスリ」の5巻で登場していた押川剛さんの体験談を、「ダンダリン101」の作者が漫画家した作品。かなりリアルより路線です。

押川さんのお仕事は、説得による「精神障害者移送サービス」

重度の統合失調症やうつ病、強迫症やパニック症といった精神疾患など。精神科医療とのつながりを必要としながら、適切な対応が取られていない子どもたち。そういった子供を持つ親からの依頼で対象者を説得し、医療につなげる。それが業務である

これを二十年以上続けている。その経験の中から、「本当に救いようのない事例」を中心にして描いています。

山田玲司さんの「絶望に効くクスリ」だけでは、押川さんが生い立ちから仕事ぶりまで完璧なスーパーヒーローのように描かれていましたが、この作品ではそういう雰囲気は全くありません。精神障害者の家族を持った家庭の悲惨な状況を世に知らしめることが目的の作品ですから、「闇金ウシジマくん」なみに精神が消耗するお話しか載ってません。 *1 

そのうえで、いくつかの事例については解決するパターンもあり、医療につなぐ必要性と、その希望についても描かれてはいます。

個人的には、押川さんの「子供が壊れてしまうのは親の育て方や愛情不足が原因だ」と断定していく姿勢はあまり好きではないのですが、逆に言えば、このくらい強い信念を持っているからこそ、困難な現実や、救いきれない人たちと向き合い続けながらも折れること無く、精神障害者およびその家族まで含めて助けていくという活動を続けることができているのだろうと思います。

作者さん自身あとがきで「ファクトが大事」ということを繰り返し強調されているので、この漫画を読んでうのみにするのではなく、いろんなデータなどを自分で見ていける人におすすめです。

作品中で登場する病名

話数 病名 結末
1 統合失調症 傷害事件により実刑判決。妄想に沈み社会復帰不可
2 アルコール依存症 傷害事件を起こし精神病棟に強制収容
3 被害妄想が強い統合失調症 15年にわたりゴミ屋敷に住み続けた後多発性硬化症に
4 攻撃性の強いうつ 5年の入院治療を経て退院

依存の根底にはパーソナリティ障害や精神病質があると言われています。
もともと認知のゆがみや性格の偏りがあり、そのうえさらにアルコールの問題を抱えている。その本質に向き合わない限り真の解決は難しい。立ち直れるのは100人に1人だと……私はあいつがそんな一人になれるとは思いません。なんとかしてやりたいとは思いますが、私達の力ではもうどうすることも出来ません。あいつが退院したら、こんどこそ私達親を殺すか、本当に通り魔事件を起こすでしょう

俺が見てきた家族はみんなそうだ。他人なら愕然とするような部屋の様子を見ても、家族は平然としている。あれも、血の繋がった本物の家族の姿の一つだ。二人は晴美さんが病気であるという認識はなかった。家族として認めたくなかった。しかし、そのような考え方は自滅への道だ。

家族はみんな問題が起きると、家族の中だけで解決しようとしがちだ。しかし、そういう家族というのは実は一人ひとりに問題がある場合が多い。そんな人間が集まってなんとかしようと思っても、生まれるのは不安ばかりだ。だからお前は◯◯家の息子としてではなく、一人の人間になることがまず大事なんだ。だからお前も親元を離れ、他人に委ねるという一歩を踏み出せ。

俺から見ると、あの家はお前にとって安心できる場所じゃない。だから俺はお前にいいたいんだ。どうしようもないクソ親のことは、お前からけじめをつけてもいいんじゃねえか?

現実でも8050問題や7040問題による殺人事件が顕在化しはじめることに……

togetter.com

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これは連鎖殺人みたいなものかもしれません。

最初の事件で、50過ぎの引きこもりが他人を巻き込んで死ぬ拡大自殺が起き、

その結果、自宅内でも母親に対してDVを行っており
「自分の息子は将来他人を手にかけるかもしれない」と思っていた親が
そうなる前に、と手を下したような形なのかも。

川崎における殺人事件の実像が、当初藤田さんが語っていたようなものとかけ離れている恐れがある一方で、
それとは別の形でますます世間の「40~50代引きこもり」への風当たりはきつくなっていくのでしょうね。

今後もこうした事件が起きるかもしれません。

ああ、外行くのが怖い。電車に乗りたくない……


おまけ1 統計的数字(続きを読んだら追加するかも)

1精神病患者数は2013年時点で400万人。日本の総人口の30分の1が精神疾患で通院や入院をしている。

2アルコール依存症の患者数は2013年時点で推定109万人。10年前から19万人増加。



おまけ2 2度の精神保健福祉法改正について

1999年(平成11年)精神保健福祉法改正により、第34条(医療保護入院のための移送)が制定されました。この制度は、「医療保護入院が必要な状態にある精神障害者、もしくはその疑いがある人を精神保険指定医が診察し、精神障害者と判断し、ただちに入院させなければ、自傷他害の自体に至るような場合で、入院について本人の同意が得られないと判定されたものについて、家族の同意を得て、都道府県知事の責任で(実際には都道府県職員が)精神科病院に移送する(応急入院の場合は家族の同意も不要)」というもの

2014年4月、改正精神保健福祉法が施行され、国(厚労省)は、「入院医療中心から、地域生活中心へ」を謳い、制度上も、保護者(家族)が、患者に治療を受けさせる義務等の責務はなくなりました。しかし現実には、地域で精神障害者を支える体制が整っているとは言いがたく、とくに対応困難な対象者ほど、どの専門機関からも曖昧な言葉で門前払いされるような事例が増えています。

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ダンダリン 労働基準監督官 DVD-BOX

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*1:※山田さんは「青二才」の最上級互換バージョンであり、たとえ現実の人間であっても好きなものであればとにかく持ち上げ、嫌いなものはとにかくけなす。好き嫌いが超激しいです。なんでもキザっぽく語り、良い面だけを徹底的に誇張し、格好いい所だけを見せようとする。一見格好悪くみえる点も全て「わかってるよ」と肯定していくスタイル。だから、山田さん自身はめっちゃ周りの人をいい気持ちにさせ、からモテるのだろうなぁとは思いつつ、リアリティという面では信頼できないんですよね。(もちろんそういうコンセプトだとわかっているので全く問題ありません。)