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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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『姑獲鳥の夏』事件のまとめと感想  人間的母性と生物的母性のズレから生じるおぞましい矛盾がもたらした悲劇

関口さんにイライラさせられる作品ではあったし、序盤はだるかったけど、終盤の呪いの具合は「魍魎の匣」以上にえげつない……。物語の美しさでは魍魎の匣かもしれないけど、印象に残るのはこっちかなぁ。

・この世には不思議なことなどなにもないのだよ関口くん。
・創作としての怪談話は好きだが、何でもかんでも霊魂のせいにするのが嫌いだと言ってるんだ。
・幽霊は居るよ。見えるし触れるし声も聞こえる。でも存在はしない。
・民俗社会のもつ幻想を僕らは今や理解できないが、理解できないものを曲解して訳知り顔をしては行けないんだ。
・真相なんてだいそれたものじゃあない。僕は気がついただけだ。この事件はまさに群盲象を撫でるような事件だ。一人ひとりに話を聞いて全体像をつかもうとするから時間がかかる。だが、ああそれは象だと気がつけば終わりだ。
・呪いはあるぜ。しかも効く。少なくとも共通の言葉や文化を持つ集団の中では確実に有効だよ。意味もない存在に意味をもたせ、価値を見出す言葉こそ呪術だ。呪いはいうなれば、脳にしかける時限爆弾だ。
・仕事は引き受けた。ただ僕は高いぞ。
僕が信じていないと言っただけですよ。あんたのように、信じてる人にとっては霊魂はちゃんと作用するんです
・口を閉ざし、闇の彼方に隠蔽してしまうことこそが呪いにほかならないのです。

追記:京極シリーズにコミック版あるの知らなかったのですが、めちゃくちゃ素晴らしいコミカライズだったのでぜひ読んでみてください!

姑獲鳥の夏 コミック 1-4巻セット

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姑獲鳥とはなにか

姑獲鳥というのは中国の悪鬼だ。夜行遊女とか天帝少女ともいう。
羽毛をまとうと鳥になり、羽毛を脱ぐと女怪になる化物で、女児をさらって養女にするという声質を持っている。
しかしなんでウブメと姑獲鳥が一緒になったのかなぁ。子供をさらうのと子供を預けるのじゃ正反対じゃないか。

ウブメは普通産む女と書く。子供を預けにくると言われる。
幽霊とは違うよ。これはお産で死んだ女の無念という概念を形にしたものだ。
幽霊でない証拠に、個人にたたったりしないし、第一恨めしいといった顔つきじゃないだろ。

怪異の形を決定するのも生きている人、つまり怪異をみる方なんだ。だから男がみるウブメは女、女が見るウブメは赤ん坊、そして音だけのウブメは鳥、そしてこれらは、みんな同じものとして認識されていたのだ。つまりウブメは、お産で死んだ女の無念、というよりもっと広い範囲で捕らえるべきものなんだ。人間的母性と生物的母性のズレから生じた、おぞましい矛盾。生理的嫌悪かな。

鬼子母神の寓話

久遠寺家 憑物筋について

・他人にものを憑依させて不幸にしたりする。
・筋の家系には神経症や精神病を持った者が多い。主に女性に受け継がれる。
・久遠寺家の場合、他人に憑けるのは水子の霊。


憑物落とし

よしなきものにおそれたりとて人人大笑いして帰りけるとぞ、ですよ。私はそれに出てくる間抜けな侍の役どころです。

記号化、それがすなわち呪術であり、足すという概念が式。つまり式を打つといっても自然の運行や法則にはさからえない。しかし式を知らずに答えのみを見ると、仕組みがわからないから不思議に見える。つまり紙切れ一枚だって、使い方さえ間違えなければ人の一生を狂わせることくらい可能なのです。だが、式を間違うと正しい答えは決して得られない。

真相

「女性にとっては性行為こそが最終的な愛情表現であり妊娠はその結果に過ぎず、男性にとっては子をなすこそ究極の愛情表現であり、性行為はただの手段」

久遠寺梗子=想像妊娠&現実拒否

「絶対に生まれない子供を宿し続けることで、遡って過去のあり得なかった幸せ、を獲得した。同時に現在のあってはならない状況を拒絶した。」
8月に「恋文」の件で牧朗とスレ違いが生じ、それから当てつけで内藤に迫るようになった。

内藤

久遠寺梗子の婿養子になることを求められたが、内藤が好きだったのは姉の久遠寺涼子。途中から久遠寺梗子と関係をもつようになる。

藤野牧朗

亡き母の教えという呪縛によって、何が何でも愛する人間と結婚し、子供を作らなければならないと思いこんでいるパラノイア。
12年前に久遠寺「梗子」に一目惚れし、関口を介して恋文を出す。実際は「涼子」がそれを受取、涼子と通じ、妊娠させる。妊娠させた相手と何が何でも結婚し、子供を作ることが彼の人生の目的になる。
その後久遠寺家に婿入することには成功するが戦争の影響で生殖行為が不可能になっており、何が何でも子供を作るために「完全な体外受精の完成」の研究に没頭する。

久遠寺菊乃(母親)

この「母親」こそが代々続く久遠寺家の呪いであった。
陰陽師家の一族。式王子や護法童子、不動明王の眷属の童子などを使役する。水子を使役しているなどの話はデマ。
30年前「無頭児」を出産。目の前で母親に産んだ子を石で撲殺。ショックのあまり錯乱して別の母親の子(内藤)を奪う。

久遠寺涼子

生まれつき病弱で、しかも時々「ウロ(神がかり)」を発症してしまうため忌み子のように扱われる。彼女もほとんど無頭児であった。
関口から久遠寺梗子宛の恋文を受取り、藤野牧朗と関係を結び、出産する。しかしこの子も無頭児であり、母の菊乃が撲殺する。これによって人格が崩壊する。
この後2件「赤ん坊が消える事件」が発生。その後は何もなかったが、牧朗が婿入りした後またスイッチが入り、3件の赤ん坊消失事件が再び発生する。

小児科の菅野医

話の中でしか作品中に登場しなかったがこの人物が諸悪の根源。最低最悪のロリコン。媚薬を使って久遠寺涼子に性的虐待を繰り返す。
途中で涼子から逆襲されるようになり、久遠寺涼子と藤野の間の手紙の配達役を引き受けたのもこの人物。最終的には久遠寺涼子に寄って殺されたと思われる。

久遠寺「京子」

菅野の性的虐待とダチュラの多用によって生まれた二重人格。最初は涼子の上位人格の「神憑り」だったが、赤ん坊を殺された際に人格が崩壊し「下位人格」に堕ちる。その際に第三の人格を生み出す。

「久遠寺の母」

涼子の中に生み出された第三の人格。「涼子」の上位人格のため、涼子はこの人格の際に行った行為を認識できない。この人格の時は「子供を見ると石で打ち殺し、ホルマリン漬けにして京子への見せしめにする」
→「京子」状態の際に子供をさらい、「母」状態の時にさらった子供を殺す。

3つの人格の中で僕らの常識が通用するのは涼子さんだけだ。京子も母も、人を超えたところにいる彼岸の住人なのだ。彼女たちの行動原理は、彼女たちにしか理解できない。

殺害後の隠蔽処理は、母の「菊乃」が行っていた。

終局

赤ん坊を殺していたのは

久遠寺涼子(母の人格)

藤野牧朗を殺したのは

久遠寺涼子(母の人格)

久遠寺菊乃を殺したのは

久遠寺涼子(京子の人格)

久遠寺梗子を殺したのは

衰弱死

久遠寺涼子はどうなったか

自殺。(結局生き延びるが、のちの作品で殺される)

あの人は妖怪でも幽霊でもなく、夢の中の住人でもない。彼女を特別視して闇に葬り去ってしまうのじゃあ、彼女は永遠に呪いから解き放たれないだろう?

最後は涼子さんだったんだ。そして君に感謝の言葉を言ったのだ。あの時涼子さんは、姑獲鳥からうぶめになったんだよ。だから姑獲鳥もうぶめもおんなじなんだ。涼子さんも梗子さんも事務長も、そして藤巻も。みんなうぶめだったんだ。

なんとも後味の悪い作品である。