頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

最近のこのブログのお気に入りは「アークナイツ」です
アークナイツ
kindleセールの紹介
新NISA解説ブログ
発達障害

「ミスミソウ」完全版 まともに読もうとするとヘンテコな話

この作品には「精神破壊(メンチサイド)ホラー」と銘打たれている。メンチサイドの意味は

長い質問、薬、拷問などを用いてとして、人の価格と信条を徐々にむしばんで、破壊して、急進的に異なる考えを誘導する組織的努力

要するに、この作品の舞台は、春花の精神を崩壊させ「殺人鬼」として作り上げるための実験場だったってことですかね。これは意図的に春花をぶっ壊し、陰惨な殺人劇を繰り広げさせ、それを上映するという悪趣味極まりないショウだったんだなやっぱり。

いじめっこたちの描写について

というのも、いじめっ子たちの描写が極めて不自然なのである。


他の生徒は全て春花をぶっ壊すための道具である。あらかじめ同じように、田舎の閉じた世界に高校生たちを集め、ろくな家庭を与えず精神を蝕ませる。容姿や能力にも秀でたものがなければ、夢があってもそれを目指すと必ず叩き潰される。徹底的に閉塞感を与え、なんの娯楽も与えない。それでいていじめだけは黙認する。子どもたちの感情を、全ていじめという方向に向けるための舞台装置が出来上がっている。


そんな中、いじめをやってるやつらは、殺される前にそれぞれの生活描写が描かれるが、恐ろしく平凡である。部活動とかやってる生徒が居る描写がある中、いじめに参加しているやつらは、たいていが容姿は醜く、秀でたものもない。群れているやつらに「いじめ」以外のつながりも感じられない。何一つ特徴がない。おそらく、この狭い学校の中でさえ、ヒエラルキーでは下位あるいはハグレものの存在ばかりだろう。リーダーの小倉妙子でさえ普通程度の存在でしか無いと思われる。

普通だったら、こういうやつらはいじめをする資格すら与えられない弱者である。こういうヒエラルキーの人間が悪いことをしていたら、より上のヒエラルキーの人間からたしなめられるからだ。しかしなぜかこの学園ではそういう力学が働かない。

こんな感じでこの作品、学校の描写が無茶苦茶なのだ。いじめがある時は学園にいじめをしている生徒以外いなかったような感覚を与える描写なのだが、いざ春花が復讐を始めると、いきなり学校に他の人間が出現する、というような感覚だ。もしかして、本当にそうなのかもしれない。作中人物はそのことを認識できないが、途中で人員補充がされているのかもしれない。


とにかく、この作品は、最初から完全に主人公の家庭以外の登場人物は「洗脳」されている状態であると思われる。いろんな異常を認識できなかったり、最初から過剰に暴力的になっている。閉塞的な家庭云々の描写ははっきりいってミスリードであろう。

春花は殺人鬼モードになりきらなかったためgdgdな形で全滅した

いや、主人公である春花でさえも何らかの暗示が仕掛けられていると思われる。それは「いじめっ子たちに抵抗しない」という暗示だ。いじめっ子たちによって家族を殺された後も、急に復讐モードに移行するわけではなく、しばらくはおとなしく過ごし、いじめに対してもただ耐えていた。ある行為によって殺意が完全にONになるまでは本当に無抵抗だったのだ。


このあたりのトリガーがよくわからない。

少なくとも春花は家族の復讐という行為ではあまり行動していない。

春花が能動的に襲って殺したのは久賀だけである。この久賀だけが狙われたのは、スイッチが入っている時の春花にいじめっ子の一人が「おかあさんに火を付けたのは久賀だ」といったからだと思われる。それ以外は復讐されるという恐れから「自分たちから春花を襲ったことによって」反撃で殺されている。

その証拠に、小黒は春花に殺されたわけではないし、佐山を殺しには行かなかった。
一方で、ミツルに対しては明確な殺意を向けている。

このあたり、単に感情を制御できてないとも言えるし、チグハグな感じもする。

などなど、まともに読もうとするといろいろと意味不明だなぁと思った。


結局のところ、いじめを見て見ぬふりをした担任の南は保護者との争いの中で事故死し、小黒は佐山に殺されたり、佐山もどさくさで殺しちゃった感じでスカッとしない。
まぁそのスカッとしないのは意図的なものなんだろうけれど、それにしても春花の描写はもうちょっとなんとかならんかったんだろうか。

おまけ1

・ミツルは春花の妹のショウコをたすけられたのに焼かれているところを撮影していた変態。
・小黒は、ミツルではなく春花のことが好きなレズ。

おまけ2

完全版には、描き下ろしとして「いじめが始まる前の小黒と春花のやりとり」が描かれてるだけで、大した内容ではないのですでに読んだ人には不要。

ミスミソウ 完全版(上) (アクションコミックス)

押切 蓮介 双葉社 2013-03-12
売り上げランキング : 11811
by ヨメレバ

ミスミソウ 完全版(下) (アクションコミックス)

押切 蓮介 双葉社 2013-03-12
売り上げランキング : 12824
by ヨメレバ