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「障害者自立支援法」という美しい名前の法律の裏で起きた悲劇と現在の「高度プロフェッショナル制度」の問題の類似点について

「どんぐりの家 それから」を読みました。
この作品は、ろうあ者を中心にした障害者支援施設において、小泉政権下で成立し、2006年4月より施行された「障害者自立支援法」がどのような悲劇をもたらしたか。そして、それに対して当時の人達がどのように戦ったか、について描いた作品です。

この法律は民主党政権下において、2010年12月に「障害者自立支援法改正案」が成立し、2012年2月に野田内閣下において廃止、2012年6月に『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律』(障害者総合支援法)に変わっています。





※(注意)此処から先は、あくまでWikipediaの情報と「どんぐりの家 それから」を参考にしているだけで、十分なチェックはしていません。なので、一方的な視点からの批判であり、正確かどうかはわかりません。疑いながら読んでください。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 - Wikipedia




上記のソースを元にする限りでは、この法律の成立には大きな問題点が3点ありました。そして、今現在安倍政権下の「高度プロフェッショナル制度」に関する議論で全く同じことが繰り返されているのではないかと感じています。




問題点その1:「自立支援」という名前に反する実態であるにも関わらず、美しい名前でごまかしている

障がい者自立支援法 を知ろう!! 誰でもわかる 解説本 障害者自立支援制度改正のポイント
障害者自立支援法の概要と問題点

障害者へのサービスは保険ではありません。社会保障です。保険と保障は違います。

人並みの生活のできる人が万が一に備えるのが保険です。最初から、あるいは途中からハンディのある生活をせざるを得ない人が社会生活をできるようにするための公的な施策が社会保障なのです。障害者の福祉サービスを保険として考えること自体間違いでなのです。働くところがない、また働けない多くの障害者は収入がありません。収入があっても年金だけです。年金すら無い人もいます。この状態で「公平な負担」をいうのは論理矛盾です。収入の道を確保してからの話でしょう。負担をいうならもっと収入があるような施策の後に論議する課題なのです。

まずこのように「保険」と「社会保障」を意図的に混同しているという点がまず問題になります。
その結果、①障害者への「支援費」を削除し②逆に応益負担を要求する、という内容になっていました。「自立支援」といえば聞こえはよいですが、実態は「支援削減」ということです。*1このように、「名前は美しいが実態はそうではない」というものについては厳しくチェックを入れる必要があるわけですね。

高度プロフェッショナル制度についても、実際は「成果に基づいた評価」とかいろいろ謳っていますが、条文としてはそのような内容は全くないということはすでに指摘されています。スローガンがいかに美しくとも、十分に審議されていない、実態にあわない法律は、結局悲惨な結果になるというのは、5年目を迎える「改正派遣法」でもすでに示されつつありますね。


気をつけたいところです。

問題点その2:「このときも虚偽データ問題が発覚」するなど、いろんな問題批判があったにも関わらず十分な審議を経ず強引に採決した

2015年2月に閣議決定され、国会に提出された直後から当事者による反対デモや、野党による追求があったようです。

衆議院厚生労働委員会で、野党の追及により、厚生労働省の「障害者医療等に関わる虚偽データ問題」が発覚

自民党政権下で、政府が問題のある法律を提出しようとする時は、厚生労働省が虚偽データを用いるというのは伝統行事なのでしょうか。

ちなみに、この法律についての評価はいろいろ有るでしょうが、少なくとも一部施行の段階から多くの問題が発生し、完全施行してから半年も立たないうちに緩和措置を取らざるを得なくなったことを考えると、人の命に関わる問題でありながら、十分に審議がされていないまま、強引に採決されたことが伺えます

一部施行された2006年(平成18年)4月1日から、国会でも障害者の利用者負担が問題視され、法施行初年度から利用者の負担軽減策、事業者に対する「激変緩和措置」を取らざるを得なくなった

「どんぐりの家 それから」では、当事者の中で今までギリギリで成り立っていた生活が破壊される事例が多数発生しています。
これが直接の原因とは断言していませんが、障害者家族の無理心中事件なども取り上げられています。

今回の「高度プロフェッショナル制度」についても、法案が成立してしまう事自体にはあきらめムードが漂っていますが、また痛ましい被害が出てから緩和措置などを取るのでしょうか……。 今回の件に関しては電通過労死事件などすでに様々な事例によって問題点が示されているはずですが。なし崩し的に法律を通し、十分に議論をしなかった責任を取らないで済むというのは大いに問題がありそうですね。

問題点その3 :マスコミはあまり仕事をしていなかった(らしい)

「法案が通ってしまったら、次の日から生活出来無くなる。」との脊髄性筋萎縮症患者女性の批判が取り上げられたが、当時郵政民営化問題を大きく報道していた日本のマスメディアは、この法律案の存在や問題点の報道をほとんどせず、フジテレビ(FNN)の報道番組『ニュースJAPAN』が、批判的見地から「シリーズ・時代のカルテ『障害者の自立を考える』」で特集し、取り上げたのがほぼ唯一目立つ程度であった

これについては、私達も大いに反省すべきかもしれません。今回は十分チェックしたいところです。

しかし、今回に関しては、仕事をしないだけではなく、注目は集めているのに誤報が多いとのことです。これも絶望的ですね。


障害者自立支援法のその後。民主党政権下で成立した障害者総合支援法を、安倍政権では介護保険化によって解体しようとしている(らしい)

障害者自立支援法をめぐる問題を考える

障害者福祉については、2015年の改定で、障害福祉サービスの報酬単価は据え置かれたものの、事業者への報酬は実質1・78%の引き下げとなっており、今後、サービス事業者の運営に影響が出ることが懸念されていますが、前述の「基本合意」や「骨格提言」が歯止めになって、いまのところ介護保険のような厳しい給付抑制策はとられていません。

(中略)

(しかし)公的責任の後退のなか、安倍政権は、介護保険料の高騰や徹底した介護保険の給付抑制(利用者負担の増大、要支援者の切り捨てなど)に、多くの高齢者が悲鳴を上げ、被保険者の範囲の拡大を求める声がわき起こるのを待ち、応益負担化の徹底、さらには障害者総合支援法と介護保険法の統合へと舵をとろうともくろんでいると推察されます。障害者福祉の介護保険化が実現すれば、もはや障害者福祉は解体されたといってよいでしょう

このあたりについてもまだ自分の中でチェックが十分できていないので、今後確認していきたいと思います。



誤った法律の下で一番最初に被害にあうのは一番弱い人達

正直に言うと、障害者自立支援法高度プロフェッショナル制度も、私はただちに影響を受けることはないと思います。
それなりに蓄えもありますので、死ぬほどの残業を強制されるような私は辞められます。

しかし、本当に弱い人は、法律が変わったらダイレクトに影響を受け、命にかかわるのです。
そういう人のことを、よく知らないのに頭の中で想像しろと言っても難しいです。
少なくとも私には無理です。
私は完全な健常者ではなく障害を持っていますが、それでもこういう人たちのことは想像できなかった。

だから、もしこの問題について興味があるという方は、
実際にそういう困っている人たちを取り上げて描いているこの作品を一度読んでみてほしいなと思います。

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つらいことばかりではなく、障害を抱えながらも喜びと笑顔と尊厳のある生き方を求めて奮闘している人たちの姿が描かれています。

*1:ちなみに、安倍政権下において、障害者総合支援法の内容を再び小泉政権と同じような趣旨に戻そうという動きがあったようですが、一旦は食い止められたようです(後述します)。こうみると野党はちゃんと「政府の暴走を食い止める」という点において仕事をしているように感じますね