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「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「ゴブリンはもう十分に強い」 人間と魔物の対話が成り立つ条件について

評価★★(個人的評価★★★★)
最近ろくにマンガを読んでなくて★評価をつけられる作品がほとんどなかったのだけれどこれは久々にオススメです。

(読まなくてもいい前置き)この作品のジャンルについて

ジャンルとしては異世界ものでちょっと前に定番人気だった「チートクラスに強い主人公が異世界で静かに過ごしたがる」というジャンルですね。
私はこのジャンルと以前から根強い人気の「悪徳令嬢もの」ジャンルが好きです。

「俺TUEEEE」ものが猛威を奮った後、そればっかりだと飽きてきたというか、強さと引き換えにそういう物語(責務)を背負わされるのはしんどい。(というかどうしてもこれだとテンプレになる)だから「強いんだけどその強さに責任も負わない。世界のことなんかお構い無しで、特殊なスキルを活かして自分の周りの幸せを優先する」という要素になっています。最近でいうとこの作品が典型的でかつ人気が高いですね。

これは、読者には何のストレスもないため非常に読みやすいと思うのですが、作者側にとっては、日常を魅力的に描くスキルと「独自のスキル」による立ち回りで世の中を渡っていくストーリーを作る能力が求められるため、テンプレだけでは対処できません。より力量が求められるようになってきていると思います。 これがさらに一周すると「うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない」という作品も出てきます。このあたりはほかからもいろんな流れを受け入れながら、より新しいものを生み出そうとしてる感じはします。

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小説家になろう」っていうとすぐテンプレテンプレって馬鹿にする人が出てきますが、テンプレが飽和してくるとこうやって次の流れが自然発生的に生まれてくるダイナミズムがわかりやすく可視化されるところが魅力だと思います。*1私はちょっと後から追いかけているので最先端のものは知りませんが、きっと今でも自分の知らないところで新しい流れが生まれていると思います。そういうところを抜きにして、1つか2つの作品だけ見て「小説家になろうなんてこんなもん」みたいに語っても面白くありません。「ガラパゴス的進化」とは言えるかもしれませんが、せっかく「小説家」になろうとするなら、こういう変化の部分を見ていったほうが面白いと私は思いますです。

「チートクラスに強い主人公」をモンスター側に設置するといろいろ発見があって面白い。

んで、「ゴブリンはもう十分に強い」ですが、これは名前の通り敵側のゴブリンさんがチートクラスに強いという作品です。
かといって「オーバーロード」みたいに「強さ」と「魔物側である」ことを理由に倫理コードを回避して好き勝手に暴れまわる、みたいな話でもありません。*2

上で述べたように、この作品の主人公であるゴブリンさんはめちゃくちゃ強いけど魔王になろうとか世界を支配しようとか全然思ってません。ただ、人間側は魔物を倒すことは当たり前だと思ってるので、しょっちゅう襲ってくるので、それを撃退する。この作品世界の人間側は死んでも死んでも生き返って来ますから、そのうち顔なじみができてきます。

そんな感じで、きっちり敵味方にはわかれて殺し合ってるのに、いつのまにやら会話が成立して、友達に近い感覚すら芽生えてくるっていうのが面白い。でもそれもこれも、「このゴブリンがゴブリンのくせに強い」のと、それでいて「人間に恨みを持ってたりはしない」という2点があるからなんですよね

「敵」でかつ「弱い存在」だってものを考えてる存在だって認識ができるかどうか

話が急に変わります。

私はよくネットを見てますが、「自分の敵で、かつ殴っても殴り返して来ない弱い存在」を探してる人っていますよね。経験値稼ぎ感覚というか。暇つぶし感覚というか。私もあんまり人のこと言えないけどさ。

んで、そういう人って、その殴る対象が何を考えてるかとかろくに考えてない。勝手に決めつけて勝手になぐる。反撃されることすら考えてない。見下しをしているから、反撃されたり、自分の意思に同意されないだけでもすぐにキレる。

私はポリコレとかフェミニズムの人たちの一部にこういう「エモーショナル・インコレクト」を感じます。もちろんミソジニー側もそうですが、彼らは一応自分がクズであることは認識しているようです。あるいは、とにかく「恨み」で駆動している人たちもまた、対象を人としてみていないなと思う。こういう人って、たとえ言ってることが正論だろうが弱者の味方だろうが、他人へのリスペクトがない。

多分自分が勇者のつもりで、かつ弱いゴブリン狩りをしているつもりなんでしょう。男女平等のためとかいいながらも弱いやつたたきしかしてない。「無敵の人」になっちゃってるんですよね。


そういう人たちは「強いゴブリン」と出会うまで、ゴブリンと対話しようとすらしないと思う。じゃあ実際に「めちゃくちゃ強くて」「しかも人間に対して強い恨みを持っていない」ゴブリンさん出してみたらどうなるか、ってのがこの作品です。そういう観点で読んでも面白いかもしれません。

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「魔物は死に関して淡白でぞんざい」というような描写がところどころに挟まれており、今のところこの作品のファンタジーは、魔物側の仏様か何かかというような執着の薄さ、穏やかさによってかなり支えられている(アキの善良さもかなり貢献しているが)。「作品世界の幸福感を成り立たせるためのツケを最終的にどう処理するのか」が個人的には先の展開で楽しみなポイント。

これは私も気になった所。いつまでこの調子で続けられるかってのが本当に興味深い。ぜひ完結まで頑張ってほしいなと思ってます。


もちろん、ゴブリンあるいはゴブリンに殺された人のどちらかが相手に対して恨みを持っているとこの作品になります。

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今のネットはこればっかりでくっそギスギスしているので、時にはゴブリンさんか人間かどちらかがふわっとしてるファンタジーで癒やされたいです。この作品とか「魔王城でおやすみ」とかは私そういう意味で大好きです。

*1:当然ですが、ラノベの世界でも、ドラマの世界でもすべてそういう変化は起きていると思います。なろうはその変化が「わかりやすい」というところが面白いと言ってます。

*2:オーバーロードを否定するわけじゃないですよ。俺TUEEEE作品として一番やりたい放題やってて楽しいと思います。設定の勝利ですね。ただアニメになって、かつそれなりに人気が出たのに全く批判が出なかったあたり、ネットでいろいろポリコレポリコレ言ってる人のセンサーってめちゃくちゃチョロいなぁと思ってます。もう全部中世とかモンスターにしてしまえばいいよね。