頭の上にミカンをのせる

「命令されなきゃ、憎むこともできないの?」(ブルーアーカイブ#3 エデン条約編3.私たちの物語)

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「どるから」 ふざけた作品かと思ったらガチ経営ストーリーでめっちゃ面白かった!

おすすめ度★★★(1巻だけなら★★★★★)

空手家一人が幸せになるだけなら金なんかいらん。ただひたすら道を極めればええ。けど、周りのみんなも幸せにするには、金は大事やねん。姉ちゃん、私は偏狭で無知な若者に腹たっとんねん。よう見とけよ!300万ぽっちの返済。わしがのしつけて返したる!この道場は、わしが立て直したる!

空手の達人であり、さらに「正道会館」の経営者でもあり、さらに大型空手イベントのプロデューサーを勤めていたおっさん*1がある日突然ダンプカーにはねられ事故死、という「異世界転生あるある」な展開を経てその後若い女子高生に転生。転生した先の女子高生は経営難に苦しみ自殺未遂をはかった空手道場の跡取り娘だった。生きてやりたいことがあってどうしても死にたくなかった主人公は、「無知ゆえにあっさり自殺しようとしてしまった」女子高生へのいらだちと、前世へのリベンジを果たすその前哨戦として、まずその経験と才能をフル活用して町の空手道場の再建に着手する、というストーリー。


私、この手の経営立て直しとか、女子高生の成り上がりものってメッチャクチャ好きなんですよね。「ラストイニング」とか「大日本サムライガール」「羽月莉音の帝国」「王様の仕立て屋(ジラ・ソーレ)」「マネー・フットボール」とか、どれもおすすめです。

最初ちょっとだけ「異世界転生」の要素があるから雑な俺TUEEEE作品になるんではないかと危惧してたけどそういう心配は無用でした。ガチで能力も強い意志も有る人間が、得意分野を活かして最初からやり直すので、ちゃんと地に足のついた作品となっている。

この漫画、タイトルにあるように主人公が「空手アイドル活動」or「プロデュース活動」とかをやるようになるんだと思いますが、まだ全然そういう展開になってません。その前に、道場の経営を立て直すために地道な話をちゃんとやっていくんだよね。その点でものすごく信頼できる。最初の荒唐無稽な設定に拒否感を感じるかもしれないけど、騙されたと思って2話までぜひ読んで欲しいです。2話まで読んで興味持った人には絶対おもしろいと保証します

空手だって「おけいこ産業」として捉えみれば学習塾などと変わらない

今はどこの道場も、有名選手を出すとか派手なことばかり気を取られて、空手道場がサービス業の一つであるってことを忘れとるんや。つまり、空手道場の盛衰は有名無名の差やない。企業努力の差なんや。街の小さな道場でも、顧客層と商圏をリサーチして、商売人としてひたいに汗すれば、地域密着型で成功してる例なんて、いくらでもあるんやで!実は大型イベントのプロデュースより町道場の経営の方が儲かるんやでー。有名な道場は、短期的に見たらド派手な結果で成果を上げてるように見えるけど順番が逆や。地道な実践を優先した結果として、有名な選手が出ただけや

私は投資大好き人間ですが、この当たり、ほんとにすごいよく分かる。

ブログでも、ちょっと前には一部の「文章の才能やらカリスマがある人、タイミングに恵まれて成功した人」たちが自分の成功を売り物にしたり、それを真似て「無理やり互助互助して作った成功実績やら成果報告」を売りにしてのし上がろうとする人が結構いたよね。そういうの、ホント長続きしません。
はてなブログで一時期話題になってたけど素人がやってる有料メルマガだ有料オンライサロンビジネスだのnoteだの、まともに続いてるのどれだけあります?無理なんですよ。ああいうの。あれ、軌道に乗るまでにかかる労力がすごい大変だから。仕事の内容がそのままnoteのネタになるような人とか、「モバイルマーケティング研究所」みたいに、企業的な取り組みとしてやらないと続けられないんですよ。

この記事とかも参考にしてね。

まして、中身がない、再現性がないものをいくら短期的な実績で飾り立てて客を集めてもすぐにやめていく。あれなんて虚業の最たる例だよね。 そんなわけで、あそこらへんの中身スッカスカのオンラインサロンがやってる話より、このマンガ読んだほうが絶対に勉強になるよ。



最初はつかみのために、こういうかなり「わかりやすくせこい」話も出てきます。

改善点なんて出納帳簿を見れば一目瞭然。新規の入会者が少ないのは仕方ないにせよ、退会者が多すぎる。これはな。おそらく月謝を毎月持参させてるはずや。これを自動引落のみに変えるだけで、退会者は3割減る。さぼって練習にコないやつでも月謝だけは払い続けてくれる。

「せこいというのは褒め言葉」「誤差の積み重ねが勝つ商売や」

「弱者」や「ほとんど何も持ってない人たち」が強者と戦って生き延びていくために必要なことが描かれてるのがすごい

ちなみに、この作品、決して空手業界が簡単って言ってるわけじゃない。一方で、現役の格闘家の苦しい現実も数字込みで描いてる。そこは全く否定しない。今までどおりのやり方だったら、まず間違いなく苦しい。だから、旧来のやり方でやってた道場がものすごく苦しい経営状態なわけですしね。

普通にやってたら、広告宣伝費をかけられる大手に駆逐されてしまうんです。

ではどうやって町の空手道場の経営を立て直し、食っていけるようにするか。

最初に出てくるヒントは「スタバ」です。

いやいや、急造のスター選手で客を集めるつもりはない。というか、そんな古いやり方はせえへん。金も知名度もない街の空手道場が、競争を勝ち抜いて僅かな男の生徒を取りに行くんはレッドオーシャンに飛び込むようなもんや。

うちが狙いに行くんは、女子や!目指すのはスタバ空手や!

「スタバ」以前はコーヒーちゅうたら、男ののみもんやった。タバコ臭い空気の店で、おっさんたちがたむろするようなイメージやった。それが、スタバ以降、女の子も当たり前のように飲んどるわな。きつくて怖くて汗臭い格闘技でさえ、やり方を変えれば健康的で安心でおしゃれなスポーツにできるんやで。

はい、ここまで読んで「よくあるやつ話かよ、そんな話知ってるし聞き飽きたよ」って思った人。  いますよね? 私は少なくともちょっと思ったよ。

実際に、ここで止まってしまったらせいぜい「オンラインサロン」とかやってる人たちと同じレベルです。勉強になるけど、自分の役には立たない。本当に大事なのはこういう理論をどうやって個々人の事例にアレンジするかですよね。

具体的に「空手」でスタバのように女子が来るようにするためにどうしたらいいかアイデアやイメージがパッと浮かびますか? ちゃんと「すでに女性が持っているニーズ」と「空手」をちゃんと結び付けないと、形だけおしゃれにしても全く相手にされません。CMでいくら大げさにいっても長続きしません。第一、スポーツブランドがやってるように女性向けユニフォームを用意したり、施設改装とか出来ません。

あくまで「お金がない、経営破たん寸前の、小さな空手道場」ができること、という制約で考えていかないといけない。ここまで話を聞いていた友達や門下生がいろいろアイデア出すけど、甘っちょろいやつはすぐに却下されます。

そのうえで、主人公は「なるほど!」っていう思い切った手を打っていきます。これも、ただ読んでると「ふーん」で終わってしまうかもしれないけど、自分であれこれ考えたあとだったら「おおっ!思い切ったことするな!」って感じると思います。私は感じました。

そういう意味で、来週から連載をリアルタイムで追いかけていきたいと思うくらいこの作品は面白そうだなと思ってます。

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と、いうわけで。一巻の時点では激推し作品でした。1巻だけなら★5つけてもいいくらいなんだけど。ん?2巻から……そっちの方向いくの?(いや、タイトルからしたら、「石井館長」の個性と「アイドル」路線を推し進めていくのは自然なんだけど、そうじゃないところが好きだったのに……)というわけで、微妙に風向きが怪しいです。

*1:というか石井和義さんはリアルに実在するの人物なのですが、そこは知らなくても全く楽しめるというか実際私は全然知らないので架空の人物ということにします。「実在の人物」をネタにしているのはくまで話題作りのためであり、そんなものがなくても十分面白いです