この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです

【スポンサーリンク】

「憂国のモリアーティ」6巻  努力がまっとうに報われる社会を作るためにどういう手段を選択するか

おすすめ度★★★(個人的評価★★)
5巻からは「アイリーン・アドラー」が登場します。ハドソンさんも可愛いけど、アドラーのキャラ良いね!

モリアーティとホームズの知恵比べ合戦も面白いし、この作品におけるモリアーティは三兄弟の三位一体なのも応用性が高くてすばらしい。私はシャーロック・ホームズシリーズをほとんど読んでないのだけれど、そういう人間でも楽しめるように、ちゃんとキャラクターが立っていると思う。アイリーン・アドラーがJになる展開とかは荒唐無稽すぎてついていけないけどファンがお怒りで無いならこれはこれでよいのかな、と。

この作品は既に高く評価されてるので私が特に語ることは無いけど良いマンガだと思います。


「オーク探偵オーロック」 シュレディンガーの切り裂きジャック - この夜が明けるまであと百万の祈り
こちらもどうぞ。







さて、ここからはあんまり作品に関係ない話になりますが。

私がこの作品に読んでて面白いなと思ったのは「多方面からの社会改良についての議論」がされてるところだったりします。アニメ「PSYCHO-PASS」のキャラデザ担当してた人が同じような話をしてるのがいい。

「努力が報われる社会」を求めるのは簡単だが、達成する手段はなにか

作品中でアドラーがこういう話をしている。

世界を正したかったのよ。
私は、ずっとそうやってきた。私の後輩女優が自殺させられたことがきっかけ。どれほど努力しても正当に評価されない・・・それなら、評価する側の人間を、貴族を動かさなきゃいけない。でもそれは簡単なことじゃない。
だから、私は女の武器を使って、それぞれの弱みを握ったわ。それによって、彼らを動かして、人々が才能に見合った努力が結実するように、援助させた。

これについて、いまならば、その答えは「マネジメント」だったということができるだろう。それを喝破したのがドラッカーだった。ドラッカーは「共産主義」や「ファシズム」に陥らず、それでも社会の発展を支えうるために必要な答えがマネジメントであるという答えを導いた。ドラッカーはマネジメントが発明される前は、17世紀~18世紀型のパラダイムしかなかったと言っている。そう、まさに「モリアーティ」が反逆しようとしていたのは、そういう古いパラダイムに支配されたままの社会が人々を苦しめている現状だった。

とはいえ、人々が「企業社会」「マネジメント」という答えに行き着くまでには、どうすれば社会のさまざまな課題を解決できるのかはみんなわかっていなかった。逆に言えば、みんないろんな手段を考え、それぞれの信念を持って、社会をよくしようと行動してきた。その手段が「フェミニズム」だと言う人もいれば、あるいは「市民革命」「社会革命」や「階級闘争」とかんがえるものもいた。

アドラーが選んだ手段は盗みやゆすりといった犯罪だった。男を食い物にすることで社会の不公平にあらがった。短期的な視点ではあるがこれはこれで勇気を持って実践していたのだからすごいことだ。

モリアーティは「啓蒙」や「弁証法的発展」と考えた。(犯罪はこの啓蒙の効果を加速させるための手段にすぎない)

一方、シャーロックは「科学的思考」と考えた。
f:id:possesioncdp:20180712040546j:plain

後世からみるとあれが間違いだこれが間違いだというのは簡単だが、みんな答えを知らない中で、われこそはと答えを探してあがいていた。この作品では、推理対決の傍らで、こうしたいろんな思想のぶつかり合いが楽しめるという点も面白い要素ではないかと思う。


ところで、この思想対決の部分は、たぶん6巻がピークでこの先はそんなに気にしなくて良いと思う。

本作品では、アドラーはまず、モリアーティの思想に共鳴している。なんかこのあたりの描写はあんまり好きじゃない。アドラーがやすっちく見える。また、6巻終盤でモリアーティは「コードギアス」のルルーシュと同じようなことを語る。しかしそれはうまくいかないと思うんだよなぁ・・・。

せっかく面白い切り口だったのに、なんかチープな結論で終わりそうなのはとても残念。まぁそれはそれとして、モリアーティとホームズの対決だけでも十分面白いので欲張りすぎかもしれませんが。


人はそこまで高潔であり続けられない。死の瞬間まで完全に高潔であり続ける生き方が出来たのは「ヴァンパイア十字界」のストラウスだけだと私は思う。だから私は、「ヴァンパイア十字界」はいまだにオンリーワンの作品だと思ってる。

一応一人の限界は理解して「三兄弟」でひとつのモリアーティである、という設定があるので、それがどこまで活きるのかは楽しみです。