この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです

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「百錬の覇王」のひどい部分について、原作を確かめざるを得ない


ここまでアニメがひどいというなら原作を確かめざるを得ない。

覇王だけに。

覇王だけに

というわけで「7話だから原作2巻くらいかな?」と軽い気持ちで読み始めたところ・・・なんと4巻の220ページでしたマジカヨ。 7話で4巻まで終わるとか! アニメどんだけハショってんだよ!(2巻から3巻がほぼカットですね。)

そしてなぜ俺はこんな無駄な金と時間を・・・(自業自得)

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結論から言うと、原作もひどいところやツッコミどころはあります。主人公についても、周りに誉めさせまくりつつ本人は口癖でやたら自虐的なこというんですが、これ謙虚を通り越して鬱陶しくてイライラさせられます。
また、正妻が完全に確定してしまってる状況でのハーレム要素はあまり魅力を感じません。

けれど、アニメ版とは違って敵はちゃんと強いし、思考もするし、それなりに駆け引きが成立していており、主人公もツッコミどころはあれどきちっと成長していくので結構面白かったです。この巻までつづいているのは伊達ではない。
アニメがひどいからと言って読まずに原作まで否定するような真似をしないようにしましょう。


該当の箇所について引用しておきます。

4巻のP224あたりからです。

古来、名将は自軍に有利になるような土地を選び、その地形を利用して戦いに勝利を収めてきた。数千年、人類はそういう戦いを続けてきた。だがここに新概念が登場する。地形を利用するのではなく洗浄自分に有利なように作り変えるというものだ。いわいる「野戦築城」である。

1575年の長篠の戦いでの新戦術「三段撃ち」は確かに虚構であったかもしれない。だが、実はこの戦いで織田信長が日本で初めてこの野戦築城行ったことはあまり知られていない。16世紀初頭のヨーロッパにおいても、重装備の騎士を突撃させる攻撃的戦術よりも即興で馬防柵や、槍隊を並べるなどして防御障壁を作り、その後ろから銃や弩、大砲などの投射兵器で防御的に戦った方が強いと証明され導入され始めていた。

 
それに先駆けること100年以上。

ボヘミア1419年から起こったフス戦争で活躍した名将に、ヤン・ジシュカという人物がいる。彼が率いていたフス派は、貧農や一般市民だけという、ろくに軍事訓練さえ受けていない弱兵集団であった。一方、彼の敵であるカトリック側の十字軍は、その多くが騎兵からなっており、装備も練度も比べるべくもなく、さらには兵数においてさえジシュカのフス派を圧倒していた。

そんな劣勢を覆したのが馬で引く農業用荷車に鉄の装甲を施し、戦闘時には輪状に連結することで簡易の城塞を作り上げるという奇策「ワゴンブルク」である 。3人一組の鉄砲隊を組織してこのワゴンブルクに立てこもり、射撃係・弾込め係・銃身掃除係と役割分担し、間断なく射撃して敵を倒す。
数千年にわたり歩兵を恐怖のどん底に叩き落とした騎兵の弓斉射も突撃も、この鉄壁の移動要塞と鉄砲の「三段撃ち」には全く手も足も出ず、寡兵であったはずのフス派に完膚なきまでに敗れ、ドイツ、あるいはハンガリーへ向かう街道は、戦場から逃走する十字軍兵士達で満ち、神聖ローマ帝国の軍旗や十字軍の勅書さえフス軍の手に落ちたとされる。
現代日本の刑事ドラマ海外ニュースでもパトカーを盾にしての銃撃戦や、パトカーを並べてバリケードを築く光景が時々うつされるように、現在でも普通に運用されている立派な近代戦術だった。

割とまともっぽく書いてるように見えるんですが、あくまでネットで調べた知識という感じ。いや、作品中でもそういう設定なのでいいのかもしれませんが、野戦築城はこの頃がはじめてとか絶対嘘だろ。

(ノ∀`)アチャー



ちなみに、「乙女戦争 」ではワゴンブルク戦法は2巻で初出です。

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そんなわけで、「百錬の覇王」の説明は、フス戦争の説明としてもちょっと疑問点があるんですよね。 どうも「戦術至上主義」な印象があって、うまく歴史上の戦術の知識を作品の舞台に合わせられてないように思いますね。



あとこのあたりで、ちゃんと敵が湿原におびき寄せられた理由も書いてます。

孫氏曰く、「能く敵人をして自らいたらしむる者は、之を利すればなり」

来てほしいところに敵が自ら進んでやってくるようにしたければ、利益を見せびらかせばいい 。ゆうとはまさにこの考えに則って作戦を立ててきた。今のゆうとは相手の立場に立って考えるということができるようになっていた。

少数の騎兵で敵を釣りおびき寄せて包囲殲滅するのは騎馬遊牧民の常套戦術である。そして以前我が軍の将であったロプトは、かつて爪灰牙3支族連合軍の包囲に拠り大敗を喫した過去がある。包囲の恐ろしさ、優位さは知り尽くしている。

だからこそ、ゆうとはあえてこの湿原にのこのこと兵をすすめてみせたのだ。この歩兵に対して騎馬が圧倒できる広い湿原ならば、必ず好機とみて大兵力を率いて包囲戦を仕掛けてくるだろう、と。

そして敵を呼び寄せるため、警戒や対策をさせないため、今の今までワゴンブルクを封印してきたのだ。これも孫氏が語源となったことわざ「始めは処女の如く、後には脱兎の如し」に倣った作戦だった。

というわけで、少なくとも原作において、三沢さんのつっこみは大体的はずれといってよいでしょう。あくまでアニメがこの辺りの意図を十分描ききれていないだけですね。


というわけでちゃんと説明はある。しかし、この文章好きじゃないわ、、、ハックルさんが書いた「もしドラ」や「エースの系譜」なみにこじつけを感じる。先にドバーって元ネタを説明して、実際の描写についてはあまり詰めきれてないですよね。

「エースの系譜」について増田で感想を書いたときに「ハックルさんが野球についていろいろ博識なのはわかったんですが、小説は作者の知識TUEEEE自慢の場じゃないんですよ!作品外の作者の知識と、作中の人物の区別がちゃんとできてないんじゃないですか?」みたいなことを考えていた記憶がありますが、この作品もそれに似てる。ハックルさんの「エースの系譜」ほどひどくはないですが、地の文における作者の主張が強くて、少し読むのが苦痛でした。


しかし、原作はアニメと比べるとそれほど悪くない

上で述べたように、作者の知識がややあやふやだったり、いろいろ戦術を考えてるけど結局大事なところは「このセカイ特有の謎の能力」で力技で解決してしまったりと、ツッコミどころはもちろん多数あります。

でも、原作はアニメと違って敵が無個性で無能というわけではありません。それなりにちゃんとストーリーを持っており、思考して主人公の考えを上回ってくるシーンもあります。割と互角だったり敵の方が有利になる展開もあります。実際このあとワゴンブルク戦術はいったん敵によって弱点を見つけられ、主人公は危機的な状況に陥ります。


主人公TUEEEではあるけれど、最初は無力なところからスタートしてるし、チートをてにいれて調子にのってたら痛い目にあって謙虚になる、みたいな展開もあります。よくあるサイコパス主人公の無双ものとは違う。(倫理的に都合が悪いところはごまかしてるのが子供向けって感じですが)

いろんな敵に対して、臨機応変に現代の戦術や兵器を使って戦うというアイデアは悪くないし、敵もアニメみたいに無能ではない。

自分が中学生~高校生くらいだったら十分楽しめたと思います。いやほんとに悪くなかったよ。緋弾のアリアとか好きな人なら絶対に楽しめると思う。





余談ですが、「百錬の覇王」の「百錬」は「百錬成鋼」から来ています。

他の国の言葉で、幾度も心身を鍛錬することによってはじめて立派な人物になるって意味だ。実際、俺の知ってる歴史を見ても、歴史に名を残すような大人物で一度も失敗してないやつなんてまずいない。

この言葉をタイトルに持ってきているように、けっこう主人公は負けたり失敗しながら成長していく話になってます。そのあたりをしっかり描いてくれてたらもうちょっとアニメもまともになったのじゃないかなあ。




とはいえ、残念ながらこの作品読むのであれば、その元ネタとなった歴史上の戦いなどを見ていったほうが絶対に面白いです。
あるいは先程紹介した「乙女戦争」とか。残酷描写やエロ描写が受け付けない人はいるかも知れませんが歴史ものとしてとてもおすすめなので、是非こちらを読んでみてはいかがでしょうか。

あと個人的にはこの「ホークウッド」めっちゃおすすめです。

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この作品は「クレシーの戦い」という、ヨーロッパ史上で非常に重要な戦いを描いた作品なのですが、日本では「クレシーの戦い」自体あまり知られていないですよね。 前知識無しで読んだらめっちゃ面白いと思います。 すごい好きなのに知名度が低くて残念なので、この機会に是非一人でもいいから読んでほしい。