この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです

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「乙女戦争」をより楽しむために

この作品は、「乙女戦争」の紹介ではなく、「乙女戦争」をより楽しむためのお話です。「乙女戦争」は単行本の巻末に詳細な歴史背景解説があるので、それも合わせて読むとすごく面白いですよ。
需要ないかもしれないけど、私はこのあたりの歴史がとても好きなので、適当にこの件について、明日21:00からまたツイキャスで適当に話しようと思います。よかったら聞いてね ♪ 

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もちろん、乙女戦争最新刊までについての簡単な紹介もします。


「乙女戦争」はフス戦争を題材としている作品

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%99%E5%A5%B3%E6%88%A6%E4%BA%89_%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB

タイトルの「乙女戦争」はチェコの古い伝説であり、本作が「女の子が主人公となって積極的に戦う戦争」という意味を持たせるために付けられている

ボヘミアポーランド地域を中心にして起きたフス戦争という題材につき、
②「神聖皇帝ジギスムント」と「ヤン・ジシュカ」との戦いの部分を中心にして
③フス派の視点から描いた

作品である。

フス戦争は1419年から1439年まで続いているが、ヤン・ジシュカ自身は1424年には病死しているため、多分この後はそれほど詳細には描かないだろうと思う。というより、ヤン・ジシュカ亡き後、ジシュカの遺志をひきついで戦った人たちは「フス派」の中でも「ターボル派」であり1434年に、同じフス派の仲間によって皆殺しにされるという結末が待っている。

ここまで描くとエグすぎてちょっとシャレにならないと思う。私はこういう悲劇を読むのが好きなのでできればそこまでやってほしいけど、エンタメとしてはどうだろう……。

「フス戦争」を題材にすることの面白さ

フス戦争は
①「ヨーロッパ史最初の火器を使った戦い」
②「国民軍の原型のような軍隊を組織したこと」
③「特権階級である騎士の突撃を、庶民集団が完膚なきまでに破った」

という3点が大きな特徴である。

とはいえ、この三点だけでは世界史的にはそれほど新しいわけではない。

1346年にはイングランド軍のロングボウ部隊が、数でまさるフランス軍の騎士隊を圧倒する「クレシーの戦い」や「アジャンクールの戦い」があり、この頃にはすでに大砲も使用され始めていた。そのため、単に騎士階級の没落という意味ではすでに新しいものではなかった。 

また、「狼の口」で有名なモルガルテンの戦いは1315年であり、庶民が騎士階級を倒すという物語もすでにあった。

更にいうと、中国史においては、このあたりの戦術は軒並み先に取り上げられている。「てつはう」で有名な蒙古襲来は1274年と1281年である。百錬の覇王」で話題になった「装甲馬車」戦術に至っては、それこそ秦の時代にも三国志の時代にも類似の軍略が見られる。古代中国まじ半端ない。

そこで、明確な差別化要素として「銃を使用することで非力な少女・子供たちが戦う」「宗教的要素を存分に取り入れている」という点が面白い。

大西は、フス戦争を題材に採り上げた理由として以下をインタビューで答えている

・革新的な戦術で弱者である農民が、強者である騎士を次々に倒していく。
宗教戦争の過激さと純粋さ。
・女、子供が戦士として活躍する。
スラヴ系の金髪の女の子と民族衣装が描ける

戦争と少女という題材を扱っており、性暴力や性奴隷などのシーンも多い。

このあたり、相当難しいと思うのだけれど、作者の大西先生はめちゃくちゃ歴史について詳しいお方なので、安心感がある。


時代背景を知れば知るほどこの作品はさらにおもしろくなる。

この時代はとにかく既存の特権階級が没落していく変革期で面白い。
ペストによる人工激減や、魔女狩りの恐怖など暗い時代背景をベースとはしているものの一方で大きな変革が起きていた。

神聖ローマ帝国大空位時代後の騒乱。
教会大分裂による宗教的権威の動揺とその反動による異端派への過激な弾圧
・領主や騎士が分立している状態から国王への集権への移行
イスラム教勢力、とくにオスマン帝国の驚異。 
・初期ルネッサンス

などなど、いろんな変化がいっぺんに起きていた。

歴史として学ぶならものすごく面白いだろうけど、
この時代の人達は信じるべき価値が揺さぶられまくって本当に大変だったろうと思う。

ちなみにこのとき

百年戦争は後半に入っており、ジャンヌ・ダルクが処刑されたのは1431年。
コンスタンチノープル陥落によるビザンツ帝国滅亡は1453年。ここからルネッサンスはいよいよ隆盛。
チェーザレが出てくるのは1471年ともうちょっとあと。
・「狼と香辛料」「狼と羊皮紙」の時代は1500年に入るかそれ以前といったところだと思います。
・私が好きな「辺獄のシュヴェスタ」はローマ略奪があった後だから1520年移行か。


神聖ローマ帝国
https://www.youtube.com/watch?v=LZWktTnKy60

・「ビザンツ帝国」の苦境
https://www.youtube.com/watch?v=9NqJubDR1eA


こうした時代背景があって、さらにこの物語が始まる前の「最後のルクセンブルク家の神聖ローマ皇帝ジギスムント」の経緯を知っていると、めちゃくちゃ面白いです。



ちなみにヴィートコフの戦いの実写映像(チェコの映画)があったので、「百錬の覇王」記事で興味を持った人はぜひ見てくれ。