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002 「ストレッチ」 二人の女性の日常を淡々と描いてるだけなのになんでこんなに素敵な物語になるのだろう

今日から週一くらいで「マシュマロ」やDMで紹介していただいたマンガ作品の感想を書いていきます。

評価★★★★★(他の人におすすめしたい度★★★★★)
まずは一番最初に教えていただいた「ストレッチ」という作品から。


これ、もう紹介していただいてから2ヶ月以上経ってるんですよね。。。おまたせしてすみません。 
一発目からめちゃくちゃ素晴らしい作品を紹介していただいて、こんなんどうやって紹介するんや・・・・・・とだいぶ悩んでしまいました。そしてそうしている間に余計に書きにくくなってしまうという悪循環。こういうのは勢いでやっていかないと、一度間隔があくとますますやりにくくなっていくので良くない。

今後はできるだけエイヤ!って勢いでやっていけるようにしたいと思います。


「話の構造」がものすごくうまいので、淡々と日常を描いているだけなのにそこに物語性が生まれてくる

「ストレッチ」は、簡単にいうと社会人の慧子と大学生の蘭が、些細な縁から「1年間だけ」ルームシェアをして特別な時間を過ごす話です。

2017年1月から「小林さんちのメイドラゴン」って作品がアニメになりましたよね。あっちはファンタジー要素があったり、小林さんは性別は女性だけど男性要素が強かったり、途中からたくさん人が増えごちゃごちゃしたり、とギャグ要素が強かったけれど、あの作品で描かれていた「小林さんとトール」の関係性について、不純物を取り除いて「原液」だけを取り出したらこんな感じになるんじゃないかと思います。

この作品、特に序盤の方はなんにも二人の背景がわからないので、ただルームシェアをしている女性が、ストレッチしつつ日常会話を楽しむだけの作品ということしかわかりません。しかし、話が進むにつれ、いろいろ背景がわかってくることによって同じ描写も違った意味に見えてきます。さらに、回を重ねるごとに、二人に愛着が湧いてくるので、どんどん読んでて楽しくなってくるし、終わりが来るのが寂しいという気持ちにさせられる

淡々と日常のシーンを描いているだけなのに、ぐいぐい二人の関係性に深みが増していき、それに引き込まれていくのは話の構造がすごくうまいからだと思います。この「話の構造」のうまさを、是非読んでみて味わってほしいと思います。私は一度と言わず何度も読み返しました。


先に例に挙げた「小林さんちのメイドラゴン」や、あるいは「はたらかないふたり」という作品は「終わらない日常」を描いてる感じがしますよね。特に、「はたらかないふたり」は、10巻以上続いて、ところどころいるのにあまり変化がありません。*1 一方この「ストレッチ」は、同じように淡々と日常を描いているにもかかわらず、たった4巻だけで、二人の関係性が最初と最後で全然変わっている。 日常の中に強い物語性を感じさせるんですね。

そんなわけで、この「ストレッチ」という作品はマンガとしてめちゃくちゃ上手いと思いますし、こういう作品はとても稀有だと思うので、できればここから書くネタ○レを読む前に御自身で味わってみてほしいです。




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「共依存」というわけじゃなく、二人でただ寄り添って過ごすという、お互いに自立していてメリハリの効いた関係がとても素晴らしくて憧れる

一人じゃ立っていられないような時間を、互いに支え合って過ごしたんです。
ひとことじゃ言えない……つまり、○○○です。

二人共、出会ったタイミングではそれぞれに深刻な事情があって*2、精神に致命的な傷を負ってしまいました。

それぞれ、別の人間との出会いであれば、相手に依存してボロボロになったり、依存しあって一人で立てない状態になっていたかもしれれません。

慧子の方は、家族への反発から独立志向が強い一方で、事情があったとはいえ好きでもない男と寝たり、結婚するはずだった男との関係を見ても、なにかから逃避したい、そして他人に寄りかかりたい、という脆さが見える。日常の何気ないときにこの先の人生を考えて涙が止まらなくなるほどに追い込まれていた。蘭の方も、自分の心の強さの根本の部分がいきなりへし折られたような状態で、誰にも心を開けなくなるか、やはり他人に完全に依存しないと立ち直れないかもしれない、という危機的な状況になっていた。

でも、この二人は、かなり特殊なつながりからルームシェアをすることになったんですが、必要以上には絶対にベッタリしない。二人は同じ部屋に住んで、相手の存在を確認し、自分は独りじゃないということを確かめるためにお互いを必要としながらも、それぞれ一人ひとり独立して己の生活を送る。その上で二人で一緒に「ストレッチ」を行う時間だけ同じ時間を過ごし、会話を交わすんですね。 で、ルームシェアをしているとはいっても、全部をさらけ出して話すわけではない。読者には教えてもらえるけど、慧子と蘭は、お互いに相手のことで知らないことがあって、それを無理に聞こうともしない。

それによって、「一人では耐えきれない、立ち直れない致命的な時間」をやり過ごす。そして、ルームシェアをしてから1年経った時には、それぞれが「一人でも生きていける」「自分の問題に立ち向かえる」強さを身につけているんです。

「ずっと避けていたことがあってさ。未だに望み薄なんだけど、前提が変わったんだね。今は結果がどうなったっていいって思える。だから。ありがとう」
「いまいち何を言おうとしているのかわかりませんが、どういたしまして。」

ここの会話とかホント素晴らしいと思う。別に全部胸の内さらけ出しあわなくたって、自分の存在が、相手が立ち直る助けになったなら、誇らしいじゃない。解決した後で話を聞かせてもらうでもいいじゃない。こういう関係性が私は本当に大好きです。

私は、この「お互いの自由を尊重し、だからこそ同じ時間を過ごすときは、その関係性を大事にする」というメリハリの効いている関係性がとっても素晴らしいなと思うんです。。この関係性の描写に強いあこがれを抱きます


<閑話休題>
いや、ネットとか見てたら、夫婦だからといってなんでも共有しなきゃだめとか、相手が思い通りにならないとか、相手が自分の心や苦労を察してくれないとか、私に隠し事をしてるから許せないとか、私と同じ考えになってくれないからとかいって文句言ってるようなお話が山程出てくるじゃないですか。

あれ、死ぬほど相手に依存してますよね。相手をめちゃくちゃ束縛しているし、相手を自分と同一化させようとしている。たかが結婚しただけなのに、なんでそこまで相手に求められると思っているのか、私にはそれが全然理解できない。「そうしたい」という気持ちはわかるけど、それはだめだろう、って思いとどまれないのが理解できない。どんだけ強欲なんだよ、と。そしてそれを強欲と思ってないのが恐ろしい。

ああいう勘違いと傲慢さがむき出しになってるネット言説見てると本当に胸糞が悪くなります。ああいう発言を平気でできてしまうバカ人たちを自主的にゾーニングしたい。
<ここまで>


ちょっと私怨も入ってしまいましたが、そんなわけで、この二人の関係性は珠玉のものだと思うし、先程も述べたように、話の構造がうまくてその二人の関係性の良さがじわじわ染みるように伝わってくるようになっています。言葉で説明してもなかなか伝わりにくいと思うので、ほんとに読んでみてほしい


おまけ ストレッチの本としても優秀だよ

あとね、ここまであえて触れてこなかったけど「家でできるストレッチ紹介本」としてもめっちゃ秀逸です。
特に「二人でできるストレッチ」ってネットとかじゃあんまり見かけないですよね。そういう意味でもこの本は実用本でもあるのでおすすめです。巻末に参考文献もあるので、読み飛ばすんじゃなく是非何度も読んで実践してみるといいんじゃないかな。


この作品、是非バトンリレーで色んな人に広がってほしい

この作品を、読んでみたら他の人に紹介したくなる良さがあります。私に紹介してくれた人も、そんな気持ちだったんだろうなと思います。本当にありがとうございました。

というわけで私もささやかながら他の人にバトンタッチしたいと思います。この記事を読んで興味を持たれた方、私への報告は不要なので、是非他の人にこの作品をバトンリレーしていただければと思います。埋もれさすにはもったいない傑作だと思うので!

*1:この作品はそれが持ち味なので全然問題ないです。作品の種類の違いの話をしています

*2:慧子の方は流産。自暴自棄になり結婚予定だった男とも別れて一人になってしまった。蘭の方は自分を大事に育ててくれて、自分も深く愛していた父親が死んでしまった。