この夜が明けるまであと百万の祈り

とあるマンガ好きの備忘録です。私が元気づけられた出来事や作品について少しでも共有できたら嬉しいです

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「ローカル女子の遠吠え」 夢を失って、守るべき家族もなくて、それでも生きるために働くということ

ローカル女子というよりも「夢破れて都落ちする形で地元にUターンした30歳独身女性」の話。

「夢がなくなって、守るべき家族もなく、それでもなぜ働くのか。何のために、何を思って日常を生きているのか」みたいな、自分の職場や仕事を好きになれない独身の人間あるあるの描写が多く、心をえぐりまくってきます。

正直若い人が読んでも全然面白さがわからないと思いますが、30過ぎて、一度はこういう悩みを持ったことがある人にはなにかしら刺さる部分があると思うのでおすすめ。

自分はずっと、アリとキリギリスのアリだと思っていました。
地元から出ようとしないキリギリスたちを、向上心がないなどと軽蔑しながら
でも都会に疲れ、夢も行き詰まり、地元に戻ると……
キリギリスたちは凍死などせず、幸せな巣を築いていたのです。

……イソップは草派の陰で泣いているでしょうが、それでも私は働くので。

「りん子さんって、なんのために働いているんですか?」か。
・・・前職の時はとにかく一人前になるために働いていたけれど。
中途半端なままやめちゃって。今は目標すら……

アリのように働いたその先に、今は何があるのでしょう。
生きるために働くなら、なんのために生きるのか。
わからないけれど、とりあえず今は。

このどうしようもないむなしさとどう向き合うか。女性版の「ミドルクライシス」に淡々と向き合いながら、現実というか周囲の人間と折り合いをつけて生きていく主人公の姿はなかなか見ごたえあります。

「なぜ人より頑張ってきたはずの自分より、周りの人間のほうが幸せそうなんだろう?」みたいなことを思ったことがある人には刺さる描写あり

そもそも、なぜ主人公が東京に出ようかとしたかというと主人公のりん子の親は会社員ではなく、不安定な生活をしていた(父親はおらず、母親はスナックのママ)ということもあり、中学生のころからすでに自分はまじめに生きなければとか、将来のことを考えて勉強しなければとか、ずっとそういうことを考えて生きてきたんですね。

この子の頭はお花畑なの?平成生まれっていっても私の2~3下なだけよね?
物心ついたころからずーーーっと不況だったでしょ?不安とか、焦りとかないの?

そうやって自分のやりたいことを我慢して、ほかの人よりしっかりした人生を送ることだけを心の支えにして頑張ってきたのに、東京では自分は通用せず、地元に帰ってきたらほかの人のほうが幸せな家庭を築いたり出世したりしている。この事実は否定しようがないわけで。事実を受けいれて、これからの自分をどう生きていくかをちゃんと決めないといけないわけですね。

東京のようにギラギラした空気や競争の圧力はないが、逆に「普通」になれない人には結構しんどい地方の空気

自分自身の現実を受け入れるだけでも大変なのに、地方の人はりん子を放っておいてはくれません。
主人公のりん子は、上昇意識がつよかった代わりに「世間並の幸せ」とか「何歳までに結婚しなきゃ普通じゃない」みたいな感覚は全くないので、Uターンした際に突きつけられるこの「普通」の圧力にさらされます。

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地方では「常に上目指さないとダメ」みたいなプレッシャーはない代わりに結婚しろの圧力は強いよね

主人公と同じく東京から地方にやってきた男キャラもいるのですが、こちらも地方の「そういうところ」には戸惑いを感じるようです。

こういう状況で、すごくもやもやを抱えながらも、腐ることなく職に就き、目の前の仕事に生真面目に取り組み、周りの価値観や評価基準に辟易としながらも、ちょっとずつ周りに認められるようになっていく。そんなりん子さんの頑張りを応援したくなる本作品、とてもお勧めです。


※ちなみに、だんだんと地方ローカルネタが増えてきてそっち方向でも面白くなってきます。

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静岡は一時期住んでたこともあるので懐かしい……

さらにヘビーな作品が読みたい人は「小池田マヤ」作品にチャレンジしてみては

この前「臨死!!江古田ちゃん」の話をしましたが、あれってヘビーではあるけどなんかギャグテイストになってますよね。作者がいろんなものを笑いに変えて受け止める力を持ってる人なんだろうなと思いますが、笑って流せない人にとってはあれきついと思います。
そういう感じでガチでしんどいほうが見たい人はこちらをおすすめ。こちらはさらにバツイチという呪いがかかっており見ていてかなりヘビーです。逆にこちらは今の私が読むと辛すぎて耐えられないので、若いうちに読んでおいたほうがいいと思います。

克己心が高い人であれば、29歳独身から一念発起しておしゃれをはじめ、そこから職場の男とガチ恋愛する「すぎなレボリューション」がおすすめ。こちらは作中における作者の絵柄の上達とあいまって、主人公の女性がどんどんキレイになっていくという感覚をモロに味わえる稀有な作品であり個人的★5評価作品です。


おまけ。この作品には蜂須賀さんという、ブラック企業から命からがら逃げだした人が登場します。この人、無表情で「前の会社だとこんな感じだったよ」って語ることが結構多いのですがとにかく徹底的に人間不信になっており、ちょっと幸せを感じることがあるとすぐにおびえたりする描写が普通に怖いです。
ブラック企業あるある」としても面白い(?)かもしれません。