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「王様の仕立て屋~下町テーラー」 落語<始末の極意>

お薦め度★★★★★★

15年続いてるご長寿マンガですが私は全巻持ってるくらい好きです。
私が40歳になったらイタリア旅行しよう、仕立服作ろうってのを計画するくらいにはこの作品で描かれてた雰囲気が好きです。

人情や義理、それから伊達を重んじる主人公の姿は是非落語スキーな人に読んでもらいたいです

ちなみにこの作品の作者はとても落語が好きのようです。そのせいか主人公も江戸っ子気質で、かつ落語にも詳しい。毎回の様に作中の人間が落語やイタリアンジョークをやってます。

この落語好き江戸っ子な主人公とヨーロッパのエレガンテな世界、という奇妙な組み合わせが不思議とクセになります。


ストーリー自体は「欧州における非情なまでに強固な身分社会や文化コードという壁」に「一般人が知恵で挑む」みたいなものが多いです。
新進気鋭のビジネスマンや庶民を登場させて身分の壁にぶち当たらせたり、逆に貴族やセレブ、経営者が文化への敬意を欠いて傲慢に振舞うことで失敗する様を描いたりした上で、主人公がやってきて、「粋を見せたり」「いかに目上の人間を工夫してびっくりさせる」ことで、人情を刺激して窮地を乗り切るってな塩梅ですね。


・義理や人情を重んじる主人公を中心とした個性豊かな面々との浪花節めいたお話

・落語のように肩ひじ張らないしっちゃかめっちゃかが楽しい軽快なやりとり

・もちろんスーツに関するうんちくは専門家監修の本格的なもの

魅力的な要素がたくさんあります。


で、なぜ今頃この作品おすすめするかというと。

いままではご長寿シリーズで有ることに加え、話が進むにつれ一話あたりのボリュームが増えており、特に第三部は一巻ごとに一つのテーマをおいかける形式になっておりちょっと新規の人にお勧めしにくかったのです。

第四部の日本編になって、原点回帰のように1話完結型の話が増えてきて読みやすくなってますし、登場人物も完全にリセットされたので、1から楽しめるようになってます。舞台が日本ということで初めての人にもとっつきやすくなってると思うので、是非第四部から読んでみて、面白かったら第一部に戻るような読み方をしてみてもらえればと思います。

(第3部まで)
イタリア・ナポリの泥棒市に住む日本人、織部悠。ナポリ中の“究めし職人”から “ミケランジェロ”と賞賛された伝説の名仕立て屋が、唯一認めた弟子である。その腕が泥棒市で朽ちてゆく事を惜しんだ貴族から、支援を受けた悠は新たな店を開く。

(第4部)
悠が若き日に世話になった日本の老舗テーラー店主が危篤に! 恩義に報いるため、悠は急遽イタリアから帰国。日本の下町・谷中で臨時の店番を始めた悠に舞い込んだ仕事とは……。紳士服の本場イタリア・ナポリで修行を積んだ凄腕仕立て職人・織部悠(おりべ・ゆう)が祖国・日本に凱旋帰国! 唯一無二の本格服飾コミック、満を持して日本編開始! 明日使える紳士服ウンチクも盛りだくさん!



今週の王様の仕立て屋は「始末の極意」から

今週の「王様の仕立て屋」は「始末の極意」をベースにした新進気鋭の社長さんが主役のお話です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A7%8B%E6%9C%AB%E3%81%AE%E6%A5%B5%E6%84%8F

ある大商店の主人は、10人の使用人を雇っていたが、節約のために5人にする。
それでも仕事に余裕があるので、その5人も解雇し、夫婦だけで経営を続ける。
主人は自分ひとりでも仕事が間に合う、というので妻と離縁し、最後には自分自身もいらない、と自殺してしまう。

今回の話にでてくる社長さんもそんな落語をモチーフにしてますし、実際にもいそうな人物です。

「なんでも効率化」「古臭い文化の無駄な慣習は廃する」というのを売りとして、社内でも堅苦しいファッションは一切なし、本人も率先してカジュアルな服装をするようにしてました。

自分の親が企業の硬直的な慣習にすり減って過労死してしまったことへの復讐的な気持ちもあったし、一方で自分の会社に入社した若者にはそういう苦労やつらい思いをさせたくないと意地になっていた部分もあったようです。

最近話題になったこの記事とか、もっといえばイケハヤ的なキャラを想像してください。


みなさんもこういう妄想したことありますよね!?「自分が会社を作ったらこんな悪慣習は排除してやる」みたいなの。私もスーツ姿で満員電車乗るのが本当に嫌なので「自分が会社作ったら絶対に更衣室作ったりシャワー室作ったりクリーニング屋との提携する」とか妄想してます。「ぼくのかんがえたさいきょうのしょくば」めちゃくちゃしょぼいなぁ(笑)



さて。そんな社長さん、まるでZOZOの社長さんみたいにイケイケだったのですが、社が成長するにつれて、この「スーツなんか着ない」「古臭いものは捨てていく」スタイルでは通用しない相手が出てくる、という壁にぶち当たります。そして、壁にぶちあたるやいなや、今まで順風満帆だったはずなのに、いろんなマネジメント上の問題が噴出します。そうなってから慌てて方向転換を考慮するも、今まで彼を持ち上げていた世間はテノヒラクルーして彼を貶めだします。なによりも、彼のスタイルを「イケてる!」として支持して入社してきたはずの悪者が「社長がダサい」として一転して抵抗勢力としてのさばるようになってしまった。これはつらい。

社長は、若者たちが自分の父と同じ苦労をしてほしくないため良かれと思ってやってたわけですが、単に若者が困ったり反発を感じることを肯定してあげたり、彼らが問題に向き合う前から問題を取り除くのは必ずしも良いことではないかもしれない。彼らはそこに問題があったことさえよくわかってなくてそれが当たり前になってしまうので、感謝することなどなく、ただそれが「イケてる」間はついていくし、イケてないと思ったら容赦なく否定してくるんですね。


…‥さて、この社長さん、はたして「始末の極意」と同じ展開になってしまうのか???身内も切り捨てて自分も切り捨ててになってしまうのか?


こうした外からも身内からも否定されそうになったところで、主人公織部が登場します。社長は彼との会話を通じて単に若者の感覚に合わせたり、単にスーツを無駄だから否定するのをやめて、もう一度社員と一緒に問題に向き合います。

あなただったらどんな風にこの問題と向き合いますか? ぜひ実際に読んでみてほしいと思います。


単行本は12月19日発売ですので、またその時に紹介しますね。